PENGUIN RESEARCHが4曲入りCD「近日公開第二章」をリリースした。
約10カ月ぶりのパッケージ作品となる本作には、2017年8月に先行配信された「千載一遇きたりて好機」や音楽ゲームアプリ「バンドやろうぜ!」のキャンペーンソングで、テレビ朝日系「musicるTV」の1月度オープニングテーマにもなった「近日公開第二章」などを収録。「昔なら絶対ありえない判断だった」というプロデューサーとの共同作業や、新たなサウンドアプローチに取り組んだ意欲作だ。
音楽ナタリーでは今回、メンバー5人にインタビューを実施。作詞作曲を手がける堀江晶太(B)が「いい加減『バンドやっててよかった』という前向きな気持ちを無視するのもいかがなものかと思った」と語る本作の制作について話を聞いた。
取材・文 / 須藤輝
今なら映像だけでもライブの熱量が伝わるかも
──「近日公開第二章」は、フィジカルの作品としては1stアルバム「敗者復活戦自由形」以来約10カ月ぶりになるんですよね。
生田鷹司(Vo) 言われてみれば……っていう感じですね。8月に「千載一遇きたりて好機」を配信限定でリリースしてミュージックビデオも撮影したし、ライブもレコーディングもやってたので。
堀江晶太(B) ずっと何かしてたからね。
──2017年は3月から「敗者復活戦自由形」のレコ発ツアーに出て、8月には赤坂BLITZでのワンマンがあり、現在は全国ツアー「PENGUIN RESEARCH LIVE TOUR 2017-2018 PENGUIN QUEST~お台場に導かれし者たち~」の真っ最中(インタビューは12月上旬に実施)。一連のライブの手応えはいかがですか?
神田ジョン(G) やっぱり「敗者復活戦自由形」でより激しい曲、ライブで盛り上がる曲が一気に増えたので、ライブの熱量が格段に高まりましたね。僕らの運動量も増えましたし。
新保恵大(Dr) 例えばアルバムリード曲の「敗者復活戦自由形」は、ライブではスタジオ音源よりもアグレッシブなアレンジで演奏したりしてて、楽曲自体もライブを通して進化してる感覚がありますね。それに伴って、お客さんとの一体感もどんどん増してきてるなって。
生田 「嘘まみれの街で」とか激しい曲の前に「一緒に跳ぼうぜ!」みたいに煽ると、「うおー!」って僕らの想像以上の反応が返ってくるんですよ。みんな暴れたがってるって言うと物騒ですけど(笑)、今はあの1枚がないとライブが成り立たないんじゃないかなって。
柴﨑洋輔(Key) そうやって盛り上がるときは会場全体で盛り上がるし、「冀望」みたいなちょっと耽溺するような曲では、お客さんも一緒にその世界に入り込んでくれたり。ホントにみんなで感情を共有できてるなって、最近は特に感じますね。
──「近日公開第二章」の初回限定盤には、赤坂BLITZで行われたライブの一部を収録したDVDが同梱されます。それはPENGUIN RESEARCHがライブバンドとして育ってきたという自信の表れでしょうか?
堀江 以前は「ライブに来てほしい」とは思っても「ライブ映像を観てほしい」とはあまり思ってなかったんです。でも、BLITZ公演の前にふと「映像だけでもいいから観てほしい」と思って。それは裏を返せば、今なら映像だけでも僕らのライブの熱量が伝わるかなって。まあ、映像を撮ってくれたのがいつもMVを作ってくれてるチームなので、実際以上にカッコよく見えちゃう気もしますけど(笑)。
ラーメンの次に、カレーを出す気はなかった
──では「近日公開第二章」の楽曲についてお聞きします。前出のアルバム「敗者復活戦自由形」は、“PENGUIN RESEARCHらしさ”は無視してコンセプトもルールもなしで作ったとおっしゃっていました(参照:PENGUIN RESEARCH「敗者復活戦自由形」インタビュー)。結果かなりはっちゃけた作品になったわけですが、その次の一手という意味で、4曲目に収録された「千載一遇きたりて好機」からお話を伺うのがいいのかなと。
堀江 そうですね、確かに。「『敗者』の次、どうしよっかな?」ってなったとき、そこから方向性を変えることも考えたんですけど、1回この路線で満足するまで作っちゃおうと思って。だから「千載一遇」は、「敗者」でなんとなくつかんだ感覚をダメ押しするような意図で作りました。
──実際「千載一遇」は、アルバムで見せた手の内を再構築したような曲だと感じました。速くてラウドでテクニカル、でもメロディはキャッチーだし、サビはダンスロック、ブレイクは超ヘビーという。
堀江 うんうん。この曲に関しては特に新しいことをする気はなくて。例えば、同じラーメンでも細麺もあれば太麺もある。だから「この間はラーメンをお出ししたから、次はカレーにしよう」ではなくて、「こういうラーメンも作れるよ」みたいな。
──レコーディングは順調でしたか?
柴﨑 鍵盤は楽器陣の中で最後に録ったんですけど、僕はほかのメンバーのレコーディングにも立ち会ってて。そこで各々が自由に音をぶっ込みまくっていたので「自分はどこで仕掛けようかな?」と考えて、例えば2番Bメロにすごい細かいフレーズを入れてみたり。でも、いざこの曲をライブでやるとなると「なんでこんな難しいの録っちゃったんだろう……」って(笑)。まあ、ライブも数をこなしていくうちに慣れてきたので、今は演奏するのが楽しくてしょうがないです。
──レコーディング時の各人の演奏の自由度は増してますか? 要は、堀江さんのディレクションは厳しいのかユルいのかみたいな話なのですが。
堀江 ユルユルですよ。僕、自分の分が録り終わったら寝てるか、残りの曲の詞を書いてますもん。
一同 ははは(笑)。
神田 もちろん事前に話し合いはしていて。例えば僕の場合だったら、晶太くん的に完コピしてほしいギターのフレーズとか、編曲するうえでいじれない部分だけ確認して「じゃあ、あとはご自由に」みたいな感じが多いですね。「千載一遇」に関して言えば、僕もかなり暴れさせてもらいました。
堀江 あと、今回はレコーディングの数日前にスタジオに入ろうと話をして。
神田 そう、それでだいぶ変わった。
新保 僕らって、それまでプリプロというものをまったくしてこなくて。でも「千載一遇」で初めてそれが実現したんです。ドラムにしても、速い2ビートのときのキックのパターンとか、ダブルにしろ裏拍にしろかなり難しいんですけど、プリプロで1回合わせていたおかげでビートのなじみ感も把握できてましたし。うん、プリプロって、すごい(笑)。
次のページ »
ボーカルを殺す曲
- PENGUIN RESEARCH「近日公開第二章」
- 2018年1月10日発売 / SACRA MUSIC
-
[CD+DVD] 3000円
VVCL-1140~1 -
[CD] 1600円
VVCL-1142
- CD収録曲
-
- 近日公開第二章
- 方位磁針
- ハートビートスナップ
- 千載一遇きたりて好機
- CD+DVD盤付属DVD収録内容
-
- ジョーカーに宜しく
- 嘘まみれの街で
- 八月の流星
- 雷鳴
- Alternative (PGR Ver.)
- 敗者復活戦自由形
- シニバショダンス(Lyric Video)
- PENGUIN RESEARCH TOUR 2017-2018「PENGUIN QUEST~お台場に導かれし者たち~」(※終了分は割愛)
-
- 2018年3月25日(日)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
- PENGUIN RESEARCH(ペンギンリサーチ)
- 生田鷹司(Vo)、堀江晶太(B)、神田ジョン(G)、新保恵大(Dr)、柴﨑洋輔(Key)からなるロックバンド。LiSA、茅原実里、ベイビーレイズJAPANらの楽曲の作編曲を手がける堀江が生田に声をかけ2015年に結成される。2016年1月にシングル「ジョーカーに宜しく」でメジャーデビューを果たし、3月に初のワンマンライブを東京・新代田FEVERにて開催した。3月に1stミニアルバム「WILL」、6月にアニメ「マギ シンドバッドの冒険」のオープニングテーマ「スポットライト」を収録したシングルを、9月にアニメ「ReLIFE」のオープニングテーマ「ボタン」をシングルとして発売するなどコンスタントにリリースを重ねる。2017年3月に1stフルアルバム「敗者復活戦自由形」を発表。8月には配信シングル「千載一遇きたりて好機」をリリース、11月よりライブツアー「PENGUIN QUEST~お台場に導かれし者たち~」を開催する。2018年1月10日に4曲入りCD「近日公開第二章」を発売した。