音楽ナタリー Power Push - PENGUIN RESEARCH
“らしさ”捨て、無心に自由に
PENGUIN RESEARCHのギターは自分にしか務まらない
──ミニアルバム「WILL」にも収録された「SUPERCHARGER」を挟んで、8曲目の「冀望」ですが、こちらも新機軸というか、ポストロックっぽいアプローチをされていますね。
堀江 もともとちょっとアンビエント感のあるものとか、ブレイクビーツ的なものは好きで、バンドをやる前からちょいちょい作ってはいて。こういうのを自分のバンドでやっちゃいけないってこともないので。
──この曲の演奏は、Aメロはギターのカッティングとシンプルなキーボードのリフ、人力ドラムンベースのみで、音の隙間をたっぷり設けていたところに、シューゲイザー的な轟音ギターが被さってくるという、ダイナミクスのメリハリが心地よいです。
堀江 「冀望」は、演奏陣に対するOKラインを一番シビアに見ました。この曲は、少しでも音のニュアンスが変わると世界観が崩れるんですよ。やっぱり自分の中でイメージしてるサウンドがあったので、それに近付けつつ、いかに各人の色を出すかってことに終始してて。
──ここまで振れ幅の広い楽曲を1枚のアルバムにぶち込めるというのは、もちろんソングライターである堀江さんの引き出しがたくさんあるからなのですが、それに付いていけるメンバーもすごいなって思うんですよね。
神田 そうなんですよ。このアルバムを通して聴くとホントそれ思います。手前味噌になっちゃうんですけど、PENGUIN RESEARCHのギターなんか、いろんな意味で僕しかできないなと思ってて。
堀江 たぶん弾けるにしても、そのうち心が折れてどっか行っちゃうと思う。
神田 そうそう。弾くことはできるんだけど、バンドの一員としてやってくのは無理。絶対に、付いていけないと思います。それはたぶん、ドラムもキーボードもボーカルもそう。
初のバラードにありったけの優しさを
──続く2ndシングル表題曲「スポットライト」を挟み、10曲目「ひとこと」はバラードです。バラードって、初めてですよね?
堀江 初めてですね。僕は楽曲提供でもバラードは滅多に書かないんで、珍しいです。
──なんで書いたんですか?
堀江 まあ、思うところあって。ひと言で言えば、卒業みたいなニュアンスです。例えば一緒に音楽をやってた仲間とかも、いつかはお互い別々の道を行くわけで。そういうときっていろいろ話したいんだけど、いざ面と向かうと言葉に詰まっちゃうし、一方で今は思いの丈を全部ぶつけるべきじゃない、つまりいずれ言うべきときがくるかもしれないっていう気持ちもあって。それでも、少なくとも一緒にいて楽しかったし、向こうもそうだったらうれしいし、ひと言お礼ぐらいは言っておこうと。自分も「ありがとう」をちゃんと言えなかった場面がいくつもあるんで、そういう思いを曲にしました。
──PENGUIN RESEARCHとしては初のバラードを、生田さんはどのような気持ちで歌われました?
生田 表現的な部分では、今までにないくらいの優しさを出そうと思ってて。冒頭の「夢はね 叶えるものと」っていう部分から、そこはかなり強く意識して歌いましたし、自分としてはうまく表現できたかなと。あと、僕がこの曲を歌うときに、誰に「ありがとう」を伝えたいだろうって考えると、さっきの「スーパースター」のやつなんですよね。だから、そういう意味でも気持ちを歌詞に乗せられたと思います。
最後にすべてをぶち壊す、いい加減で無責任な曲を
──そして、3rdシングル表題曲「ボタン」の次が最後の曲です。12曲目「愛すべき悩みたちへ」は、リードトラックに負けず劣らずラウドでヘビーなハードコアナンバーですね。
堀江 このアルバムは、11曲目の「ボタン」で締めてもよかったんですけど、なんか、しんみり終わるのもどうかなって。今回は好き勝手やりたいし、すべてをぶち壊す曲を12曲目に入れたかったし、最後にお礼も言いたかったので。
──あのお礼の仕方は、びっくりしました(笑)。
堀江 やっぱり、リスナーの方はお金出して僕らのCDを買ってくれてるし、そうじゃなくて友達に借りたにしても、最後まで聴いてくれたわけですから、「ありがとうございました」ぐらいは言うべき。
──「すべてをぶち壊す」という意図も成功していると思います。コーラスもガラが悪くて、最後にぶった切られた感がすごい。
堀江 「愛すべき悩みたちへ」は、アルバムの中で一番いい加減で無責任な曲ですね。もちろんちゃんと意味はあるんですけど、好き放題やって、言いたい放題言ってサクッと終わってるんで。レコーディングもバンド全員で勢い一発で録った曲。
柴﨑 ここまでオルガンを弾き倒したというか、勢いでグリッサンドをバンバン入れたのは初めてで、超爽快でしたね。
新保 生き生きしてたよね。
神田 それは恵大くんも同じでしょ(笑)。
今は、あれこれ考えすぎてボケちゃってる時期
──このアルバムで、PENGUIN RESEARCHというバンドのイメージが変わると思いますが、それを踏まえて、今後の展望は?
神田 僕たちはファンに対して「俺らはこういうバンドだから」みたいな押し付けはしたくなくて、だからアルバムの受け取り方も自由でいいんですよ。そのうえで、できればライブに足を運んでほしいっていうのがありますね。やっぱりライブを前提にバンドをやってるところがあるので、そこでPENGUIN RESEARCHの音楽というものを、思い思いの形で受け取ってもらえればなと。
──3月末から東名阪のツアーも決定していますしね。
神田 去年1年かけてバンドを作るっていうことをやって、今年はそれを拡張させなきゃいけないんですけど、正直、僕たち自身もライブを体感しないことにはこの先っていうのはわからないと思うんですよ。逆に言えば、ツアーが終わった時点で何かしらの実感はあるはずなので、まずはそこへ向けて全力を尽くすだけですね。
新保 このアルバムの難しい楽曲群を、クオリティを保ったまま、むしろより高いクオリティで表現しないと。
神田 メンバーみんながライブでつい暴れてしまうんでね(笑)。暴れつつ弾けるように、そこはおのおの練習しつつ。
堀江 今って、たぶんバンド的に、1年やってきてコンセプトがどうとか方針がどうとかって考えすぎた結果、ボケてる時期なんですよ。
一同 はははは(笑)。
堀江 あるいは無心の時期。だからひとまず無心で作ったアルバムをこうして出せたので、引き続き無心でライブに臨みたいなと。
- ニューアルバム「敗者復活戦自由形」 / 2017年3月8日発売 / SME Records
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 3500円 / SECL-2122~3
- 通常盤 [CD] / 3100円 / SECL-2124
CD収録曲
- 敗者復活戦自由形
- 嘘まみれの街で
- スーパースター
- Alternative (PGR ver.)
- ジョーカーに宜しく
- シニバショダンス
- SUPERCHARGER
- 冀望
- スポットライト
- ひとこと
- ボタン
- 愛すべき悩みたちへ
初回限定盤DVD収録内容
- SUPERCHARGER -Music Video-
- ジョーカーに宜しく -Music Video-
- 敗北の少年 -Music Video-
- boyhood -Music Video-
- スポットライト -Music Video-
- ボタン -Music Video-
- 敗者復活戦自由形 -Music Video-
- BLAST / Alternative -Music Video-
PENGUIN RESEARCHワンマンツアー「Penguin Go a Road 2017~Penguin Fight Club~」
- 2017年3月31日(金)
- 愛知県 ell.FITS ALL
- 2017年4月1日(土)
- 大阪府 FANJ twice
- 2017年4月9日(日)
- 東京都 新宿BLAZE
PENGUIN RESEARCH(ペンギンリサーチ)
生田鷹司(Vo)、堀江晶太(B)、神田ジョン(G)、新保恵大(Dr)、柴﨑洋輔(Key)からなるロックバンド。LiSA、茅原実里、ベイビーレイズJAPANらの楽曲の作編曲を手がける堀江が生田に声をかけ2015年に結成される。2016年1月にシングル「ジョーカーに宜しく」でメジャーデビューを果たし、3月に初のワンマンライブを東京・新代田FEVERにて開催した。3月に1stミニアルバム「WILL」、6月にアニメ「マギ シンドバッドの冒険」のオープニングテーマ「スポットライト」を収録したシングルを、9月にアニメ「ReLIFE」のオープニングテーマ「ボタン」をシングルとして発売するなどコンスタントにリリースを重ねる。2017年3月に1stフルアルバム「敗者復活戦自由形」を発表。