音楽ナタリー Power Push - PENGUIN RESEARCH
“らしさ”捨て、無心に自由に
「敗者」であることを自覚してからが勝負
──「敗者復活戦自由形」のボーカルも、めっちゃ難しいですよね?
生田 めっちゃ難しいっす。PENGUIN RESEARCH史上、初めて「ブレスがやべえ……」ってなったんですよ。特に2番のAメロとか「どんなにがんばっても息が続かなくね?」っていうぐらい。
──あのパートは鬼気迫るものがありますね。
生田 あと、このとき喉の調子があまりよくなくて、アルバム全体を通して苦戦してたんですよ。で、レコーディングの時間も押しに押して、いよいよ切羽詰まったときに、サビの「敗退者よ謳え お前の試合だ」「そんなんで終わんなよ 思うとこ 色々あるんだろ 爪痕残してみろ」って歌詞が自分の現状とすごいリンクして、そこでスイッチが入ったというか、以降いいテイクがバンバン録れました。
堀江 そういうスイッチを見つけるのが、異常に遅いんですよ、彼は。
一同 はははは(笑)。
堀江 8時間ぐらいずっと録ってて、ラストの1時間で録り終えたから。序盤からいいテイクを出してくれよって話で(笑)。
生田 ホントごめんなさい!
──「敗者復活戦自由形」という曲名もまたユニークというか、堀江さんらしい言葉選びだと思いました。
堀江 曲も詞もできたときになんとなく、「ふんふーん」って鼻歌まじりにタイトルを付けたら意外とハマって。
神田 そんなテキトーに付けたの?(笑)
堀江 そしたら字面もよかったんで「もうこれアルバムタイトルにしちゃってもよくね?」みたいな。コンセプトもルールもない1枚なので、「自由形」でいいじゃんって。
──「敗者」目線というのも、ある意味で挑戦的ですよね。
堀江 うんうん。でも、誰しも1回は負けてるんですよ。生きてれば、絶対に。他人なり自分なりに。そうじゃないと思ってる人は、たぶん負けたことに気付いてないだけで。僕は、負けを自覚して「じゃあ俺はどうする?」っていうのが人生だと思ってて。だから敗者であることは全然恥ずべきことではないし、当たり前のことにスポットを当てただけで、たぶん人並みに生きてる人だったらみんな思うところはあるであろう歌詞にしたつもりです。
1、2曲目でライブのノリを印象付けたかった
──2曲目の「嘘まみれの街で」は、1曲目と同様にイントロのヘビーなギターリフにまず耳を奪われますが、全体としては四つ打ちのダンスロックに仕上がっていますね。過去の曲を引き合いに出すなら「雷鳴」(ミニアルバム「WILL」に収録)や「旅人の唄」(3rdシングル「ボタン」カップリング曲)の発展形のような。
堀江 そうですね。「嘘まみれの街で」は、イメージとしては「歌物のロック」なんですよ。最初は、イントロからCメロまでリフをベースに攻めようかとも思ったんですけど、それはやめて、サビメロはポップス的なノリで作りましたね。
──ラストのサビはハンドクラップも入ってシンガロング向きというか、ライブ映えしそうですね。また過去の曲を引き合いに出すなら青春パンク「boyhood」(2ndシングル「スポットライト」カップリング曲)的なノリもあり。フロアでキッズが飛び跳ねてる絵が浮かんできます。
新保 うんうん。まさにそうですね。
堀江 1、2曲目は特に、僕らがライブを重ねて培ったものが色濃く表れてるので、それを印象付けたいと思ってアルバムの頭に持ってきましたね。
自分だけの“名も無き”スターに捧げる歌
──続く3曲目の「スーパースター」は、先ほどもお話に出たように、ポップ路線の曲です。
堀江 この曲を書いてたときは、まだコンセプトを多少意識してたというか。「PENGUIN RESEARCHらしさとは?」と聞かれたら、それこそ「スポットライト」や「ボタン」のような、メロディアスでちょっと儚げな曲っていうのが1つの軸かなって。ちなみに僕はこれが一番気に入ってるんですよ。
神田 そうなんだ?
堀江 うん。詞もものすごい自分のことを書いてて。これは僕がバンドをやりたいと思った理由の1つなんですけど、小学校のときにギターをやってる友達がいて、そいつが僕にロックを教えてくれたんですよ。学校帰りに彼の家でロックバンドのDVDを観せてもらって「なんだこれ!」ってなったうえに、彼自身もギターをアンプにつないで弾いてくれて。テレビ画面に映るバンドもカッコよかったんですけど、それよりも目の前にいるそいつが当時の僕には本物のロックスターに見えたんですよね。そういう、子供の頃に出会った自分だけのスターってほかにもたくさんいて、彼らに憧れたり追い付き追い越そうとした結果、今の自分があると思って書いた曲です。スターと言っても、「名も無き」なんですけど。
──等身大の、身近なヒーローっていうイメージですよね。
生田 僕もこの曲をもらって、自分の中のスーパースターは誰だろうと思ったら、やっぱり地元の幼なじみなんですよね。小中高とほぼずっと一緒のクラスだった、いつも遊びの中心にいるようなやつだったんですけど、そいつがいたから僕も音楽始めたんですよ。彼はドラマーだったんで「じゃあお前はギター弾けよ」ってなって、一緒にスタジオ入って冗談めかして「プロになろうぜ」みたいな話とかしたり。だからレコーディングのときはそいつのことを思い浮かべながら歌ってましたね。
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- ニューアルバム「敗者復活戦自由形」 / 2017年3月8日発売 / SME Records
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 3500円 / SECL-2122~3
- 通常盤 [CD] / 3100円 / SECL-2124
CD収録曲
- 敗者復活戦自由形
- 嘘まみれの街で
- スーパースター
- Alternative (PGR ver.)
- ジョーカーに宜しく
- シニバショダンス
- SUPERCHARGER
- 冀望
- スポットライト
- ひとこと
- ボタン
- 愛すべき悩みたちへ
初回限定盤DVD収録内容
- SUPERCHARGER -Music Video-
- ジョーカーに宜しく -Music Video-
- 敗北の少年 -Music Video-
- boyhood -Music Video-
- スポットライト -Music Video-
- ボタン -Music Video-
- 敗者復活戦自由形 -Music Video-
- BLAST / Alternative -Music Video-
PENGUIN RESEARCHワンマンツアー「Penguin Go a Road 2017~Penguin Fight Club~」
- 2017年3月31日(金)
- 愛知県 ell.FITS ALL
- 2017年4月1日(土)
- 大阪府 FANJ twice
- 2017年4月9日(日)
- 東京都 新宿BLAZE
PENGUIN RESEARCH(ペンギンリサーチ)
生田鷹司(Vo)、堀江晶太(B)、神田ジョン(G)、新保恵大(Dr)、柴﨑洋輔(Key)からなるロックバンド。LiSA、茅原実里、ベイビーレイズJAPANらの楽曲の作編曲を手がける堀江が生田に声をかけ2015年に結成される。2016年1月にシングル「ジョーカーに宜しく」でメジャーデビューを果たし、3月に初のワンマンライブを東京・新代田FEVERにて開催した。3月に1stミニアルバム「WILL」、6月にアニメ「マギ シンドバッドの冒険」のオープニングテーマ「スポットライト」を収録したシングルを、9月にアニメ「ReLIFE」のオープニングテーマ「ボタン」をシングルとして発売するなどコンスタントにリリースを重ねる。2017年3月に1stフルアルバム「敗者復活戦自由形」を発表。