音楽ナタリー Power Push - エンドウアンリ(PELICAN FANCLUB)×井上竜馬(SHE'S)対談
今、この瞬間を歌う理由
6月8日にPELICAN FANCLUBがミニアルバム「OK BALLADE」を、SHE'Sがメジャーデビューシングル「Morning Glow」をリリースした。
音楽ナタリーではPELICAN FANCLUBのエンドウアンリ(Vo, G)とSHE'Sの井上竜馬(Key, Vo)による対談を企画。1992年生まれという共通点を持ちながら、関東と関西という活動拠点の違いのある彼らに、ライブで大事にしていることやお互いの新作について聞いた。
取材・文 / 清本千尋 撮影 / 後藤壮太郎
アニメは曲だけ聴いてチャンネルを変える
──スピードスター・ミュージックという同じ事務所に所属されているお二人ですが、競演経験などはありますか?
エンドウアンリ(PELICAN FANCLUB) サーキットイベントで一緒だったことはありますけど、ちゃんと競演して、話をしたのは最近ですね。
井上竜馬(SHE'S) そうそう。4月23日に大阪であったHalo at 四畳半の企画。
──競演してみていかがでした?
エンドウ 僕とカミヤマ(リョウタツ)、SHE'Sのメンバー、Halo at 四畳半のメンバーが全員1992年生まれの同い年で、あの日は相当シンパシーを感じました。
井上 わかるわー。1992年生まれがやってるバンドって、俺らよりちょい上の世代と音楽的な部分で隔たりがある気がするよな。少し上の世代ではエレクトロやダンスミュージックを取り入れたノリのいいロックバンドが多いのに対して、俺らの世代は歌モノのバンドが多い。しかもみんなダンスミュージックが嫌いなわけではないんだけど、わざわざ歌モノを選んでやってるっていうバンドばかり。なんかそこで分かり合えるものがすごくあるよな。
エンドウ たぶん、同世代だから音楽を聴くきっかけになったバンドが似てるっていうのもあるよね。例えば小中学生の頃にアニメで聴いた曲が同じだったり。
──エンドウさんは前回のインタビューで、友達に連れられて観に行った映画「ONE PIECE THE MOVIE デッドエンドの冒険」のオープニング曲だったBUMP OF CHICKENの「sailing day」が最初に好きになった音楽だとおっしゃっていましたね(参照:PELICAN FANCLUB「PELICAN FANCLUB」特集)。
エンドウ 映画の内容よりも曲のほうに興味が湧いたんですよね。確か、小5くらいの頃で。
井上 ああ、それ小5の頃かあ……って、こうやって共有できるのもええよな。俺もBUMPは聴いてたけど、一番ハマったのはELLEGARDENやったな。CDも全部買い集めたし、バンドスコアも全部買って。
エンドウ ELLEGARDENね。僕らが中高生の頃って、BUMP OF CHICKEN、ELLEGARDEN、ASIAN KUNG-FU GENERATIONが3本柱じゃなかった?
井上 わかるわー! で、俺はELLEGARDENと平行してストレイテナーをよく聴いていたかな。あとさ、小学生の頃、ORANGE RANGEが流行ったよな。
エンドウ テレビアニメの「NARUTO」の主題歌を担当するバンドってやっぱり流行るよね。ポルノグラフィティとかもアニメの主題歌で知ったし。アニメの内容には興味ないけど、曲だけ聴いてチャンネル変えるっていうのやらない?
井上 あー、やるやる! 俺のお母さんがめちゃめちゃアニメオタクで、新しいアニメが始まるタイミングで全部録画して1話を観て、気に入ったやつを追い続けていくって感じなんだよ。で、俺はそれのオープニングとエンディングだけ観る(笑)。
エンドウ お母さんすごいなあ(笑)。でもやっぱりそうやって音楽を知る人は多いと思うし、大人になって話したときに世代感が出るというか、共通の話題になるよね。
井上 なるねえ。あ、そういえばこないだライブを観ててさ、エンちゃんって、Sonic Youthが好きそうだなってすごい思ったんやけど。なんかライブ中のエンちゃんから感じる色気、ボーカルの雰囲気はSonic Youthから来てるんやろうなって。
エンドウ Sonic Youth好きだよ。でも色気があるのは竜馬でしょ。ピアノっていうすごく中性的なイメージのある楽器を、汗をだらっだらかきながら、目をキラキラ輝かせて弾いてる感じ。色気しかなくてキュンキュンしたよ。
井上 ほんま? そんなことないで(笑)。
エンドウ あと竜馬の色気って、子音を強調した歌い方にも感じるんだよ。ほかにもそういう人はいるけど、竜馬の場合はルーツが見えるというか、極めて外国的に感じる。竜馬の歌い方は独特な感じで引っかかるんだよね。
井上 そう言ってもらえるとうれしいなあ。
非現実の中で表現する現実
──PELICAN FANCLUBもSHE'Sもすごく熱量のあるライブをする印象があります。2人はどんなことを考えてライブをしてますか?
エンドウ 僕の場合、ライブに行くことはテーマパークに行くようなものだと捉えているんです。だから僕がライブをするときもそういうテーマパーク感をいかに表現できるかっていうのを考えていますね。普段家で聴いてる音楽が目の前で鳴らされていて、その演奏しているアーティストと同じ空間で体感するのはやっぱりCDで聴くのとは全然違うと思うので。
──演奏をしているときは、お客さんのことを意識しますか?
エンドウ 意識しなくもないんですけど、フロアとステージは別モノな感じがするんですよ。だけどちゃんと空間を共有している感覚があって、見えないものでつながっているというのが理想というか。とにかくライブを観ている人に非日常を与えたいんです。音楽という日常にあるものが非日常になる瞬間を味わってもらいたい。説明するのがすごく難しいんですけど。これってライブに来てもらわないとわからない感覚なんだよなあ。
井上 エンちゃんが言ったテーマパーク感っていうのは俺もよくわかるな。足を踏み入れた瞬間に肌で感じる感覚というか、その「あっ!」となる感覚。その時々の息遣いやちょっとした間だったり、録音されたものじゃないリアルタイム感が大事だよな。俺もエンちゃんと同じでエンタテインメントでありたいというか、与えるものでありたい気持ちが強い。“魅せる”ということを非常に意識していて、ショーとしてどれだけ楽しませられるかが重要だと思ってる。ピッチを一音も外さずに歌えるかとかではなくて、どれだけ生の歌を届けられるか、ライブの中でどれだけそういう瞬間を生み出せるかということしか考えてないよ。
エンドウ わかるわ。でも、ライブで表現したいことはテーマパーク感……すなわち非現実感なんだけど、目の前で起こってることは現実だっていうことも伝えたい。ライブって、その空間にいるだけですでに何かが起きてるんだよ。自分が知ってる曲に新たな一面を感じたり、知らない音楽に触れること。それ自体が事件で、その現場に立ち会うことが大事というか、ライブの核になるものなんじゃないかなと思ってる。
井上 そうやなあ。俺らとPELICAN FANCLUBには“現実”っていう言葉が共通項としてある気がするよな。俺らのライブでテーマパーク感を味わってもらいたいっていう気持ちもあるんやけど、SHE'SもPELICANも実際歌ってるのはすごく現実味がある内容。そのコントラストがほんまに面白いと思う。
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- PELICAN FANCLUB ミニアルバム「OK BALLADE」 2016年6月8日発売 / 2160円 / UKDZ-0169 / DAIZAWA RECORDS/UK.PROJECT
- 「OK BALLADE」
- Amazon.co.jp
収録曲
- 記憶について
- アンナとバーネット
- for elite
- Ophelia
- M.U.T.E
- 説明
- youth
- 今歌うこの声が
- SHE'S メジャーデビューシングル「Morning Glow」 2016年6月8日発売 / 初回限定盤 [CD+DVD] / 1836円 / TYCT-39038 / Virgin Music
- 「Morning Glow」
- Amazon.co.jp
CD収録曲
- Morning Glow
- 日曜日の観覧車
- Time To Dive
DVD収録内容
Live Footage "She'll be fine -chapter. 0- at Shibuya Club Quattro, 3.14.2016"
- Un-science
- Change
- Evergreen
- ワンシーン
- 遠くまで
PELICAN FANCLUB 2016 CULT'UR OF PELICAN FANCLUB
- 2016年6月23日(木)愛知県 live & Lounge Vio
- 2016年6月24日(金)大阪府 CONPASS
- 2016年6月29日(水)東京都 clubasia
- 出演者 PELICAN FANCLUB / The Mirraz
SHE'S「SHE'S Major Debut Single『Morning Glow』RELEASE TOUR ~The Everglow -chapter.1-~」
- 2016年7月20日(水)東京都 渋谷CLUB QUATTRO
- 出演者 SHE'S / cinema staff
- 2016年7月26日(火)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
- 出演者 SHE'S / 雨のパレード
- 2016年7月28日(木)大阪府 梅田CLUB QUATTRO
- 出演者 SHE'S / GLIM SPANKY
PELICAN FANCLUB(ペリカンファンクラブ)
エンドウアンリ(Vo, G)、カミヤマリョウタツ(B)、クルマダヤスフミ(G)、シミズヒロフミ(Dr)からなる4人組ロックバンド。2014年10月にタワーレコード限定で100円シングル「Capsule Hotel」をリリースし、耳の早い音楽ファンからの注目を集める。2015年1月に1stミニアルバム「ANALOG」を発表。8月にUK.PROJECT内のレーベルDAIZAWA RECORDSよりアルバム「PELICAN FANCLUB」をリリースした。全国ツアーのファイナル公演として東京・WWWにてワンマンライブを行う。2016年6月にミニアルバム「OK BALLADE」を発表し、The Mirrazを迎えたツーマンツアー「PELICAN FANCLUB TOUR 2016 “CULT'URE OF PELICAN FANCLUB”」を開催する。
SHE'S(シーズ)
井上竜馬(Vo, Key, G)、服部栞汰(G)、広瀬臣吾(B)、木村雅人(Dr)からなる4人組ピアノロックバンド。2011年に結成して地元大阪を中心に活動を続け、2012年に行われた「閃光ライオット2012」ではファイナリストに選出された。2014年7月に初の全国流通盤となるミニアルバム「WHO IS SHE?」を発表し、2016年5月には2ndミニアルバム「WHERE IS SHE?」をリリース。2016年2月に3枚目のミニアルバム「She'll be fine」を発売し、3月に全国5都市のワンマンツアー「She'll be fine -chapter.0-」を開催した。6月にリリースするシングル「Morning Glow」で、Virgin Musicからメジャーデビューを果たす。