音楽ナタリー Power Push - PASSPO☆×ペンネとアラビアータ機長
クルーと機長の絆が生んだ「Cinema Trip」
貧図スクワットとペンネとアラビアータは同一人物
──ちなみにPASSPO☆に楽曲プロデューサーとして携わるにあたって阿久津健太郎と本名を名乗らなかった理由はどうしてですか?
機長 個人的なことなんですけど、以前アーティスト活動していたこともあって、その名前ですぐに別の活動を始めるのってどうなんだろうって。それに以前お世話になった事務所に対しても申し訳ない気持ちが少しあったので最初は違う名前でいこうと思って、けっこうがんばって考えた名前が貧図スクワット。
安斉 なんで(笑)。
機長 1度すべてをなくして、ゼロから一歩ずつがんばろうっていうのがヒンズースクワットぽかったから。貧しくなっても少しずつ鍛えていこうって、そんな深い意味を込めてこの名義で曲を作ってました(笑)。最初はこうやって表に出ることなんて考えてなかったし、阿久津健太郎という名前を出さないってことで引き受けたので。それで彼女たちがメジャーデビューしたときに改名してペンネとアラビアータになったんですけど、それも社長から「好きなものは何?」と聞かれたので「ペンネアラビアータですかね」と答えたら決まってしまったという(笑)。だから深い意味はないです。当時はまだ顔を出してなかったから貧図スクワットとペンネとアラビアータが同一人物だってことは知られてなかったですね。
──また変な名前の人が出てきたなと思ってました(笑)。ファンの前に姿を現したのはけっこうあとになってからですよね。
機長 2012年にPASSPO☆が「君は僕を好きになる」というシングルを発売したんですけど、その当時PASSPO☆の新メンバーを決めるという試みがありまして。のちのpaletの子たちが候補生としてがんばってて、中野サンプラザホールで新メンバー発表を行うことになったんです。でも該当者なしだったんですよね。そこで、そのことを誰かがステージに出て伝えないといけなくなったんですけど、竹中先生が「機長、行きます?」と突然言ってきて(笑)。すごい重荷だったんですけど、それがペンネとアラビアータとして人様の前に出た最初でした。そして初めて謎の人物が姿を現して「Let It Go!!」をギターで演奏したという。ステージの袖では候補生たちが泣いてて、その姿を横目に見ながら演奏するのは心が痛かったな……。
──そこからPASSPO☆のバックバンド・The Ground Crewのメンバーとして彼女たちのライブに出演する機会も増えました。
根岸 今やMVにも出演してますもんね。
増井みお アルバムのリード曲「PlayGround」の冒頭に出演してるんですけど、みんな気付いたかな?
岩村 機長ゾンビね(笑)。
玉井 めっちゃ俳優やん。こんな演技ができるなんて。
機長 あいぽんを襲う役だったので、あいぽんファンに嫌われる覚悟でがんばりました(笑)。
今のほうが歌詞の世界観に厚みがある
──クルーに聞きますが、機長が作る楽曲の魅力ってどんなところですか?
玉井 うまく言えないですけどタイプなんですよね。「この曲いいな」と思うものはたいがい機長が作ったもので。
安斉 シングルの楽曲で「ギミギミaction」を決めるときに、いくつか候補の曲があったんですけど、私たちは機長が作った曲とは知らずにこの曲を気に入って。「もうこの曲じゃなきゃ嫌だ!」って言って、採用されてから機長が作ったって知ったんです。でも、これまでもそういうことはけっこうありました。
機長 僕は楽曲を決めるときにその場にいないんですよ。ほかの方が作った曲もたくさんある中で、僕の曲が採用されるかどうかもわからないですし。でもメンバーがこうやって選んでくれることが多くて、素直にうれしいですね。
──今はメンバーが自分たちが歌う楽曲をすべて決めてるんですか?
岩村 7人になってからは最終的にメンバーが楽曲を決めることにしたんですよ。
森 「バチェロレッテは終わらない」のときも、聴いた瞬間に「これ!」って感じだったよね。あとから機長が作ったって知って、やっぱりって思った。
増井 機長は歌詞もありきたりな言葉じゃなくて、例えば「好き」っていう気持ちもいろんな言葉を使って表現してくれるんです。
根岸 男性が書いてるのになんでこんなに乙女の気持ちがわかるんだろうって、ぶっちゃけちょっと“そっちの人”なんじゃないかって疑ってたことがありますよ(笑)。
玉井 そうそう。シングルのたびに乙女心をすごく理解した歌詞を書くので、私のママは「絶対ゲイだと思う!」って言ってます(笑)。
岩村 しかもそのときの私たちの年齢に合わせた世界観で等身大の歌詞を書いてくれるんですよ。
機長 最初はやっぱり知り合ったばかりで学生のイメージもあったから、そういう感じでしか歌詞は書けなかったんですけど、時が経つにつれてそれぞれのこともわかってきて。だから今のほうが歌詞の世界観に厚みもあるんだと思います。
森 ミーティングで私たちが話してた内容が、気付くと歌詞になってるなんてこともありました。そうやってさりげなく私たちを見てくれて歌詞に落とし込んでくれるから感動しちゃって。
玉井 歌詞で私たちを導いてくれてるみたいな。
藤本 だから歌うときに感情が入りやすいんですよね。
──「『I』」とか「Tracks」みたいに、そのときのグループの状況とか思いを汲み取って歌詞にしているから、毎回フライト(ライブ)で目頭が熱くなります。
機長 やっぱりいい曲を書く方っていっぱいいますしね。そんな中で僕のようにアーティストに近いポジションで楽曲制作をさせていただけるなら、彼女たちのことをもっと理解して曲に反映させるのが使命なんじゃないかと。
増井 本当に機長を誰にも取られたくないんですよ!
森 うん、見つけないでって思う(笑)。
玉井 私たち、嫉妬しちゃうんですよ。機長もそうだし、PASSPO☆っぽい楽曲を歌ってるグループがいるとやっぱり気になっちゃう。
根岸 年が経つにつれて独占欲が強くなってきました(笑)。
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- PASSPO☆ ニューアルバム「Cinema Trip」 / 2017年2月15日発売 / 日本クラウン
- ファーストクラス盤 Type-A / [CD+DVD] 3500円 / CRCP-40494
- エコノミークラス盤 Type-B / [CD] 3000円 / CRCP-40495
CD収録曲
- Popcorn bought?
- Music Navigation
- 7's Up(Cinema Trip Ver.)
- PlayGround
- Mr.Wednesday
- ラブリフレイン
- NASA! ~なんであいつ好きなんだ、嗚呼~
- 不屈のレジスタンス
- WEEKDAY QUEENS
- マイノリティー・ヒーロー
- ギミギミaction
- フィルム
- バチェロレッテは終わらない
ファーストクラス盤 Type-A DVD 収録内容
- PlayGround -Music Video-
PASSPO☆(パスポ)
根岸愛、藤本有紀美、岩村捺未、増井みお、森詩織、安斉奈緒美、玉井杏奈の7人からなるガールズロックグループ。「空」と「旅」をコンセプトに2009年より活動を開始し、2011年に「少女飛行」でメジャーデビューを果たす。2013年1月1日よりグループ名をぱすぽ☆からPASSPO☆に改名。ロック色の強い楽曲とパワフルなパフォーマンスでガールズロックユニットとしての立ち位置を獲得し、2014年3月には12th「Perfect Sky」で結成当初からの目標であるBAND PASSPO☆に挑戦する。2015年5月にアルバム「Beef or Chicken?」をリリース。また同年6月には彼女たちがプロデュースを手がける新ユニット・ぷちぱすぽ☆の誕生を発表した。2016年には「Mr.Wednesday」「バチェロレッテは終わらない」「ギミギミaction / ラブリフレイン」の3枚のシングルをリリース。2017年2月15日にはニューアルバム「Cinema Trip」を発表し、同アルバムを引っさげて「歌って踊って奏でるツアー」と銘打った全国ツアーを実施する。このツアーはバンド形式と通常のライブ形式の2部構成で行われる。