音楽ナタリー Power Push - パスピエ「娑婆ラバ」特集 成田ハネダ&大胡田なつき×小出祐介(Base Ball Bear)

パスピエというバンドの実体

俺からしたらナリハネのように音楽を学んでる人がうらやましい

──改めて、ナリハネくんは小出くんのどんなところをもっともリスペクトしてるんですか?

成田ハネダ(Key)

成田 ざっくり言うと、スタンス的なところだと思うんです。もちろん、曲やライブがいいというのは大前提で。表に出てる以外のコイちゃんを知っている身としては、いろんなことを考えてるんだなって思うんですよね。コイちゃんは、シーンのことや時代性についても目が行き届いてるじゃないですか。健全な姿勢で音楽と向き合ってるんだなって思う。ミュージシャンってキャリアを重ねれば重ねるほど紆余曲折があると思うんですけど、ここまで芯がブレないのはホントにすごいなと思います。

──小出くんはそういう言葉を受けてどうでしょう?

小出 ありがたいし、ナリハネもすごく真面目な性格だから、タイプとしてはわりと俺と近いと思うんですよね。だけど、俺自身はここまで先輩を慕ったことがないから「おっ、おお」って不思議な気持ちにもなります(笑)。俺とタイプが近いという意味では、ナリハネが先輩のミュージシャンに対して素直にリスペクトを表明していることが意外でもあるんですよ。

大胡田 ああ、それはわかるかもしれない。

成田 もちろん、すべての先輩をリスペクトしてるわけではないですけど、やっぱりコイちゃんは特別な存在ですね。

──ナリハネくんがそもそもクラシック畑で音楽をアカデミックに学んできて、バンドに興味を抱いたタイミングが比較的遅かったというのも大きいんじゃないですか?

小出 でも、俺からしたらナリハネのように由緒正しく音楽を学んでる人がうらやましいですけどね。バンドマンって基本的にそういうことにコンプレックスを感じてる人も多いから。音楽の携わり方として、ナリハネのように音楽を1つの学問として学んで、そこでしっかりピアノも習得したような人とバンドってなかなか交わらないので、ナリハネは珍しいですよね。何かの間違えでバンドに憧れてしまったがゆえに、一般的なバンドマンとは違う葛藤もあるとは思うんですけど。それを踏まえてもうらやましいなと思いますよ。ナリハネからしたら、俺みたいにずっと感覚を研ぎ澄ませてバンドをやってきたことがうらやましいのかもしれないけど。

成田 ホントにその通りですね。自分の感覚をここまで言葉にして、ちゃんと世に伝えることができる人ってなかなかいないと思うんですよ。それは、コイちゃんが主観と客観の視点を50対50で持ってるからこそだと思います。

小出 主観と客観プラス、第3の視点ってことじゃないですかね。第3の視点をいくつ持ってるか、カメラのアングルを何個持ってるか、みたいな。そういう意味では、今回のアルバムの歌詞を読んでいて、俺と大胡田さんは作詞家としての思想は近いものがあるんじゃないかと思いましたね。

大胡田 ホントですか? うれしいです。

小出と大胡田の作詞家としての思想

──大胡田さんも同じバンドにいて、ナリハネくんがベボベにリスペクトを抱いてることは知っていた?

大胡田 そうですね。先日の対バンが決まったときもBase Ball Bearに対する思いを話してくれて。GARAGEでよくライブしてるときもいろいろ話してくれましたね。「ベボベのこのライブ映像を観てみなよ」って勧めてくれたり。あとは「小出さんの歌詞がすごくいいから読んだほうがいいよ」って。だから、私自身はBase Ball Bearの楽曲をあまり聴いてこなかったんですけど、歌詞だけはよく読んでいて。

──どういうことを感じましたか?

大胡田 書いた人が誰かすぐにわかる歌詞だなと思いました。現実的な言葉を使わなくても、それがファンタジーにならずにリアルな映像を思い浮かべやすいものになってる。そこがすごくいいなと思ってます。

──小出くんが大胡田さんの歌詞に触れて、自分と思想的に近いと思った部分というのは?

小出 「裏の裏」と「トキノワ」を聴いて特に思ったんですけど、この2曲って構造が同じなんですよね。

大胡田 そうですね。両方とも同じアニメ(NHK Eテレ「境界のRINNE」)のテーマソングなんですけど。

小出 この2曲の歌詞はAから始まって、ゴールがBにあるのではなくて、Aダッシュにゴールがあるんですよね。それって円管構造的な話で。意識的なのか無意識なのかわからないですけど、その構造がめっちゃ好感を持てるというのがまずあって(笑)。曲を聴いて世の中との関係性を考えたんだけど、俺も「世の中はこういうものだ」と思ってるというか、本質は「裏の裏の裏」にあるみたいな感覚。世の中との関係性って、要は自分の主観対すべての他者との主観ということだと思うんです。世界中には主観が無数にある。自分と関係が近い人の主観もあれば、遠い異国で暮らしてる人の主観もある。世界というのはいろんな主観の固まりで形成されていて、それを想像するとめっちゃ気持ち悪くなるんですよね(笑)。大胡田さんもそういうことを考えたりするのかなって(笑)。

大胡田 今の話に通じるかわからないですけど、私も電車に乗っていたり、ビルの上階の窓から地上にいる人たちを見たときに「この人たち1人ひとりが別々の意識を持って、何かの目的を持って歩いているってヤバいな」と思うことがあるんですよね。それを線や表にしたらすごいことになるんだろうなって。

小出 そうそう、そういうことですよね。

パスピエ ニューアルバム「娑婆ラバ」2015年9月9日発売 unBORDE
「娑婆ラバ」
初回限定盤[CD+DVD] 3780円 / WPZL-31097~8
通常盤[CD]2700円 / WPCL-12236
CD収録曲
  1. 手加減の無い未来
  2. 裏の裏
  3. アンサー
  4. 蜘蛛の糸
  5. 術中ハック
  6. 贅沢ないいわけ
  7. ハレとケ
  8. つくり囃子
  9. ギブとテイク
  10. トキノワ
  11. 素顔
初回限定盤DVD収録内容
パスピエ TOUR 2014 “幕の外ISM” at Zepp DiverCity(TOKYO)
  1. - opening -
  2. MATATABISTEP
  3. トーキョーシティ・アンダーグラウンド
  4. 七色の少年
  5. - session -
  6. チャイナタウン
  7. はいからさん
  8. 贅沢ないいわけ
  9. S.S
  10. シネマ
パスピエ ライブ情報
パスピエ TOUR 2015 “娑婆めぐり”
  • 2015年11月4日(水)宮城県 Rensa
  • 2015年11月6日(金)新潟県 新潟LOTS
  • 2015年11月11日(水)香川県 高松オリーブホール
  • 2015年11月13日(金)広島県 広島CLUB QUATTRO
  • 2015年11月14日(土)福岡県 DRUM LOGOS
  • 2015年11月16日(月)鹿児島県 CAPARVO HALL
  • 2015年11月21日(土)大阪府 Zepp Namba
  • 2015年11月22日(日)愛知県 Zepp Nagoya
  • 2015年11月26日(木)北海道 札幌PENNY LANE24
パスピエ 日本武道館単独公演 “GOKURAKU”
  • 2015年12月22日(火)東京都 日本武道館
パスピエ
パスピエ

2009年に成田ハネダ(Key)を中心に結成。メンバーは大胡田なつき(Vo)、成田、三澤勝洸(G)、露崎義邦(B)、やおたくや(Dr)の5名。都内を中心にライブを行い、2010年3月に自主制作盤「ブンシンノジュツ」をライブ会場限定で発表。2011年に1stミニアルバム「わたし開花したわ」、2012年に2ndミニアルバム「ONOMIMONO」をリリースし、卓越した音楽理論とテクニック、ポップセンスで音楽ファンの話題をさらう。2013年3月に初のシングル「フィーバー」、6月にメジャー1stフルアルバム「演出家出演」、2014年6月に「幕の内ISM」と続々と作品を発表し、数々の大型ロックフェスに出演。2015年は4月にシングル「トキノワ」、7月にシングル「裏の裏」、9月にアルバム「娑婆ラバ」をリリース。秋には全国ツアーを行い、12月に初の日本武道館単独公演を予定している。

小出祐介(コイデユウスケ)
Base Ball Bear

ロックバンド・Base Ball Bearのボーカル&ギター。2001年、同じ高校に通っていた関根史織(B, Cho)、湯浅将平(G)、堀之内大介(Dr, Cho)と学園祭に出演するためにバンドを結成。2006年4月にミニアルバム「GIRL FRIEND」でメジャーデビューを果たし、2010年1月には初の日本武道館単独公演を実施。近年は他アーティストとのコラボレーションも盛んになり、2012年に7月に発表したミニアルバム「初恋」でヒャダインや岡村靖幸と、2013年6月リリースのミニアルバム「THE CUT」では、RHYMESTERや花澤香菜と、それぞれ共演している。2015年は「シリーズ“三十一”」と題して8月から3カ月連続で“エクストリーム・シングル”を発表した後、バンド結成記念日である11月11日にニューアルバム「C2」をリリースする。