ナタリー PowerPush - パスピエ
これぞ「幕の内ISM」、コミック&お笑い異世界のあの人と邂逅
成田ハネダ×うしろシティ対談
成田ハネダの対談相手は、彼の提案により人気お笑いコンビのうしろシティに。パスピエとうしろシティといえば、フジテレビ系の深夜バラエティ番組「バチバチエレキテる」のオープニングテーマとして「電波ジャック」が使用されたという縁があり、対談はその話題から和やかにスタートした。
取材・文 / 宇野維正 撮影 / 笹森健一
「バチバチエレキテる」出演者×テーマソング担当
成田ハネダ 僕はもともとエンタテインメントとしてコントが大好きで、コントのネタ番組をテレビでよく観るんですね。そんな中でも、うしろシティさんのネタは「こういう切り口でくるか!」ってものが多くて、以前からすごく好きで。それで、「バチバチエレキテる」にパスピエの曲をテーマソングとして使っていただくことになったって話を聞いたときに、「えっ?」と思って。「うしろシティも出てるし!」って(笑)。
金子学 えっ? 番組で使われる前から僕らのこと知ってたんですか? そのタイミングで教えてくださいよ!
阿諏訪泰義 そうそう、隠さずにねえ(笑)。
成田 僕、誰かと対談するのってこれが初めてなんですよ。なので、「初めてはぜひうしろシティさんで!」と(笑)。
──うしろシティのお2人は、自分たちの番組のオンエアを観て、初めてパスピエの音楽を知ったんですか?
阿諏訪 あ、僕は知ってました。
金子 なんだよお前、偉そうに! 僕は、初めてでした(笑)。僕らにとってあの番組は初めてのバラエティのレギュラー番組で、最初のオンエアをすっごい楽しみにしてて、それがあの曲で始まって。タイトルもむっちゃいいじゃないですか、「電波ジャック」って。若手として、これからテレビの世界でがんばっていこうって感じが、すごくぴったりきたっていうか。曲自体にもむっちゃ勢いあるし。
──テレビ番組のテーマ曲って、言ってみれば大人の事情で決まったりすることがほとんどじゃないですか。そう考えると、ミュージシャンの側にとっても、出演者にとっても、とても幸せな組み合わせだったということですね。
阿諏訪 僕ら以外の演者も、みんな大好きだって言ってましたよ。
金子 ホントに。いい曲でよかった!
成田 こちらこそ、ありがたい話です。
芸人のゴールはテレビ? ライブ?
成田 今日はいろいろ聞きたいことがあるんですよ。まず、現在のうしろシティの2人にとって、コントのネタというのは活動の中でどういう位置付けなのかなって。例えば音楽の世界では、90年代はすごくCDが売れる時代だったけど、今はライブに重きを置く活動をしているバンドが多いとか、そういう流れがあるわけですけど。お笑いの世界にも、そういう時代の変化というのがあるんじゃないかなって。最近、ネタ番組が以前に比べて少なくなっていてすごく寂しいんですよね。
金子 芸人って、やっぱりテレビにたくさん出ることがひとつのゴールだと思うんです。でも、以前に人から「それって、芸人だけかもしれないよ」ってことを言われて。ミュージシャンの人は、昔からテレビはプロモーションの1つで、実際に対価を得るのはCDやライブって感じですよね? でも「ゆくゆくは芸人もそうしていかなきゃいけない時代になるんじゃないか」って、そういうことを言われて。そうかもしれないなあって。
阿諏訪 今ね、意外に芸人が出る劇場は増えてるんですよ。だからネタを作るのが好きな自分たちとしては、そういう流れになっていったらいいなあとは思います。もちろん、もっともっとテレビも出たいですけどね(笑)。ただ、ゴールがテレビだけっていうのより、もっと広がっていったらいいですよね。
成田 うしろシティさんを見てて思うのは、テレビと、ライブと、あとラジオもそうですけど、そこに優劣とかは何もないんだろうなってことなんですよね。
金子 それ、僕らのことをよくとりすぎてますよ(笑)。
阿諏訪 そうっすね(笑)。
金子 本当は、テレビに出たいならテレビなりのやり方があるんでしょうけど、僕ら、そのチャンネルの切り替えがあまりできてないっていうか。今までライブでがんばってきて、でもテレビがゴールだとしたら、ライブでやってきたことってなんなんだろうって考えちゃう。でも、本当はライブでやってきたことのゴールっていうのは、テレビとはまた別の場所にあって。ラジオはラジオで別にあるだろうし。そういうスイッチの切り替えが本当は必要なんですけど、今、そこがまだゆるゆるなんで(笑)。
こういう考えの人とバンドをやったら面白いかなって
成田 もともとお2人は、それぞれ別のコンビを組んでいたんですよね?
金子 そうです、お互い別で5年くらいやってて。
成田 そのときもそれぞれコントをやってたんですか?
阿諏訪 そうです。しかも別々の事務所だったんですよ。よくミュージシャンって、対バンで一緒になったほかのバンドの演奏を観て、「あのドラムいいな」ってなったりするじゃないですか。そういう感じで。
金子 「なったりするじゃないですか」って。お前、ミュージシャンじゃないだろ(笑)。
──成田さんも、パスピエの前にバンドをやってましたよね?
成田 そう。パスピエが2つ目のバンドですね。前のバンドが解散して、ちょうどその頃、大胡田も全然バンド活動をしてない時期で、それで誘ってみたんですよね。それこそ、僕からガンガン、1回メシ食いに行こうよみたいな感じで誘って。僕の中では最初から一緒にバンドをやるのが目的だったんだけど、最初は探りつつって感じで、それから「ちょっとスタジオ入ってみる?」みたいなところに持っていって。
金子 それはもう、「この声だ!」って思ってたってこと?
成田 いや、声がっていうより、1回話したとき、考え方がすごく変わってるなって思ってて。僕らバンドのメンバーは、バンドを組むとき、音楽で何ができるかってことを考えて始めるんだけど、大胡田の場合って自分を表現するための手段が歌だったっていう。そこからして違うんですよね。
阿諏訪 うんうん。
金子 「うんうん」じゃないだろ! お前、わかんないだろ!
阿諏訪 なるほどなるほど。
成田 (笑)。こういう考えの人とバンドをやったら面白いかなって思って。今のバンドのメンバーとは、過去につるんでたりとか、そういうことはまったくなかったんですよ。パスピエは結成してから5年ですけど、その5年がそのまま知り合ってからの年数っていう。
- 2ndフルアルバム「幕の内ISM」 / 2014年6月18日発売 / unBORDE
- 2ndフルアルバム「幕の内ISM」
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 3000円 / WPZL-30860~1
- 通常盤 [CD] / 2484円 / WPCL-11854
幕の内盤(DISC 1)
- YES/NO
- トーキョーシティ・アンダーグラウンド
- 七色の少年
- あの青と青と青
- ノルマンディー
- 世紀末ガール
- とおりゃんせ
- MATATABISTEP
- アジアン
- 誰?
- わすれもの
- 瞑想
幕の外盤(DISC 2)※初回限定盤のみ
パスピエ TOUR 2013 “印象・日の出外伝” at AKASAKA BLITZ (2013.12.21)
- OPENING ~ S.S
- デモクラシークレット
- トロイメライ
- 名前のない鳥
- とおりゃんせ
- フィーバー
パスピエ
2009年に成田ハネダを中心に結成。メンバーは大胡田なつき(Vo)、成田ハネダ(Key)、三澤勝洸(G)、露崎義邦(B)、やおたくや(Dr)の5名。都内を中心にライブを行い、2010年3月に自主制作盤「ブンシンノジュツ」をライブ会場限定で発表。2011年に1stミニアルバム「わたし開花したわ」、2012年に2ndミニアルバム「ONOMIMONO」をリリースし、卓越した音楽理論とテクニック、ポップセンスで音楽ファンの話題をさらう。2013年3月に初のシングル「フィーバー」、6月にメジャー1stフルアルバム「演出家出演」を発表し、その後数々の大型ロックフェスに出演。また東阪で行われたパスピエ主催によるイベント「印象A」「印象B」や初のワンマンツアーも全公演ソールドアウト。2014年は3月に両A面シングル「MATATABISTEP / あの青と青と青」、6月に2ndフルアルバム「幕の内ISM」をリリースした。
うしろシティ
写真左 / 金子学(1981年3月25日、新潟県生まれ)、写真右 / 阿諏訪泰義(1983年1月8日、神奈川県生まれ)。2009年にコンビ結成。松竹芸能所属。2012年に「平成24年度NHK新人演芸大賞」演芸部門にて大賞を受賞。「キングオブコント2012」「キングオブコント2013」では2年連続で決勝進出を果たす。現在、毎週土曜深夜にTBSラジオにてレギュラー番組「デブッタンテ」を放送中。
2014年6月26日更新