ナタリー PowerPush - パスピエ
これぞ「幕の内ISM」、コミック&お笑い異世界のあの人と邂逅
大胡田なつき×魚喃キリコ対談
水を飼っているような気持ちになるんです
──大胡田さんから、この機会に魚喃さんにこれだけは聞いておきたいという質問はありますか?
大胡田 キリコさんは、お魚は好きですか?
魚喃 お魚………うん、好きですね。どうして?(笑)
大胡田 お名前に魚が入ってるのと、お話の中にベタ(熱帯魚)が出てくるじゃないですか。だから、飼ってらしたのかなって。
魚喃 今、「お魚は好きですか?」って聞かれて、両極端な答えが頭に浮かんだのね。「大好き」っていうのと、「超苦手」っていうのと。大好きなのは、名前に魚って字が入ってるからっていうのと、自分でもベタを飼ってたときがあって、超かわいかった。でも苦手なのは、魚喃キリコという名前からくるプレッシャーが重く感じることがあったりとか、ベタが死んだときのすごいつらさを思い出したりとか。
大胡田 実は私、キリコさんのお話に出てくるキャラクターを見て、私も魚を飼いたいっていうファン心というかミーハー心から魚を飼い始めたんです。
魚喃 今は何を飼ってるんですか?
大胡田 今は、エビとメダカと金魚と古代魚を飼ってます。
魚喃 古代魚って、でっかいやつ?
大胡田 今、12センチくらいかなあ。とりあえず20センチくらいで止まるはず。あんまり大きい魚だと、本格的に生き餌とかをあげなきゃいけなくなるじゃないですか。
魚喃 そして、生き餌を生かすためにまた餌がいるようになるとかね。それはちょっとしんどいよね(笑)。
大胡田 そうですね、だから自分が用意できる餌で飼える範囲の大きさのものを飼ってます。
魚喃 私はベタが一度死んでから、けっこう何度か飼ったんですけど、さすがに毎回死なれてしんどくなって辞めました。今は犬が2匹、猫が1匹おります。哺乳類。あったかい系。でも、お魚ってキレイでいいよね。
大胡田 そうですね。すっかりハマってしまって。もともと水が好きなので、水質管理とかをしていると、水を飼っているような気持ちになるんです。
魚喃 いいことをおっしゃいますね。今の言葉、パクらないように気をつけないと(笑)。
小さい頃の自分を外に出したい
魚喃 ところで、なつきさんは本名?
大胡田 そうです、全部。
魚喃 どうして本名のまま?
大胡田 私、けっこう自分の名前が好きなんです。母親も名前がひらがなで、それで付けてもらった名前で。さっきも言ったように、小さい頃の自分を外に出したいっていう思いもあって、この理由はちょっと後付けみたいな感じになっちゃいますけど、本名でやっててよかったなって思ってます。
魚喃 じゃあ、今は小さい頃の自分を外に出してあげて、遊んでいる真っただ中?
大胡田 そうですね。
魚喃 ノビノビと遊ばせてあげられるといいね(笑)。
大胡田 うれしい。もう、さっきから顔が緩みっぱなしです(笑)。
昨日の夜は“なつきさん歩き”をして遊んでました
魚喃 あとね、私、なつきさんの描く絵がすごく好きです。私が持ってないラフさを持ってて。私なら、人前に出すんだったら、この線はちゃんとしてないと気が済まないみたいなのを、ふわっと出しちゃうようなところがあって。ラフなところで止めるところが好き。(参照:パスピエ「ONOMIMONO」大胡田なつきイラストギャラリー)
大胡田 なんてこったー!!
魚喃 あと、笑っちゃうようなものもありますよね。紐とかストローとかのお題を与えると、こんなことやっちゃうんだって。すごく面白い。とてもユーモアのある方なんだって驚いた。その人がこんなにかわいくて、歌もうまくて、本当になんでも持ってるなあって。
大胡田 (言葉を失う)
魚喃 パスピエのPVも観たんですけど、なつきさんの動きとなつきさんの描く絵って、ちょっと似てますよね。
大胡田 そうなんです。もとからそんなに絵を勉強してきたとかじゃないので、自分の身体でできることしか描けないんですよね。なので、どうしても近くなってしまうというか。
魚喃 面白くて、昨日の夜とか、なつきさん歩きをして遊んでました。
大胡田 それ、なんですか?(笑)
魚喃 ちょっと腰を前かがみにして、背筋をそらせて、猫背の逆。それで忍者みたいな忍び足で歩く。
大胡田 (笑)。とにかく私は、絵に関しては一番キリコさんの絵に憧れてきたんです。それが自分ではうまくできないから、こんな感じになってるんですけど。キリコさんの絵の、人物の角度とか、横顔とか、髪の動きとかが本当に大好きで。
魚喃 ありがとうございます(笑)。
大胡田 キリコさんって、大人ですけどかわいらしいっていうのかな。「女性」っていう感じがします。私にはまだ全然たどり着けない。
魚喃 ええっ!? 「女性」!?
大胡田 よく言う「ザ・女性」って意味じゃなくて、「女」っていう感じでこれまで生きてたんだなって。
魚喃 びっくりしました。そんなこと言われたことがないので(笑)。
大胡田 すごく、生き生きしてるというか、ナマモノっぽい(笑)。
魚喃 魚ですから(笑)。
大胡田 こうしてお話していてちょっと気付いてらっしゃるかもしれないですけれど、私おしゃべりがあまり上手じゃないんです。初対面の方だと特に気を遣ってしまうというか。でも、キリコさんは想像していたよりも全然お話がしやすくて、本当に素敵な方だなって。
魚喃 私も、始まる前は何を話していいかわからなかったんだけど、しゃべり始めたら次々に話したいことが出てきて、すごく話しやすかったです。今日の午後は、家に帰ってパスピエのCDをまた爆音で聴く。そんな午後にしようと思います(笑)。
- 2ndフルアルバム「幕の内ISM」 / 2014年6月18日発売 / unBORDE
- 2ndフルアルバム「幕の内ISM」
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 3000円 / WPZL-30860~1
- 通常盤 [CD] / 2484円 / WPCL-11854
幕の内盤(DISC 1)
- YES/NO
- トーキョーシティ・アンダーグラウンド
- 七色の少年
- あの青と青と青
- ノルマンディー
- 世紀末ガール
- とおりゃんせ
- MATATABISTEP
- アジアン
- 誰?
- わすれもの
- 瞑想
幕の外盤(DISC 2)※初回限定盤のみ
パスピエ TOUR 2013 “印象・日の出外伝” at AKASAKA BLITZ (2013.12.21)
- OPENING ~ S.S
- デモクラシークレット
- トロイメライ
- 名前のない鳥
- とおりゃんせ
- フィーバー
パスピエ
2009年に成田ハネダを中心に結成。メンバーは大胡田なつき(Vo)、成田ハネダ(Key)、三澤勝洸(G)、露崎義邦(B)、やおたくや(Dr)の5名。都内を中心にライブを行い、2010年3月に自主制作盤「ブンシンノジュツ」をライブ会場限定で発表。2011年に1stミニアルバム「わたし開花したわ」、2012年に2ndミニアルバム「ONOMIMONO」をリリースし、卓越した音楽理論とテクニック、ポップセンスで音楽ファンの話題をさらう。2013年3月に初のシングル「フィーバー」、6月にメジャー1stフルアルバム「演出家出演」を発表し、その後数々の大型ロックフェスに出演。また東阪で行われたパスピエ主催によるイベント「印象A」「印象B」や初のワンマンツアーも全公演ソールドアウト。2014年は3月に両A面シングル「MATATABISTEP / あの青と青と青」、6月に2ndフルアルバム「幕の内ISM」をリリースした。
魚喃キリコ(ナナナンキリコ)
1972年新潟県生まれ。1993年、月刊漫画ガロ(青林堂)に「hole」が掲載されデビュー。必要最小限のネームで作品を構成するクールな作風で人気を博す。代表作に「blue」「Strawberry shortcakes」があり、両作は実写映画化に至るヒットを記録している。1998年、Hanako(マガジンハウス)にて連載されていた「ハルチン」の単行本が刊行され、2008年には同作の未刊行分をまとめた「ハルチン2」が祥伝社より刊行された。またフランス語圏での人気も高く、2008年には現地の美術賞を受賞。翌年のアングレーム国際漫画祭では「魚喃キリコ展」も開催された。マンガ家としての活動以外に、NHKラジオ第1放送で2008年まで放送された番組「土曜の夜はケータイ短歌」にて、ふかわりょうとMCを務めていた経験を持つ。
2014年6月26日更新