コバルトブルーを持っている私……気分が良いんですよね

──そして大胡田さんが手がけているアートワークについても聞かせてください。「わたし開花したわ」と同様、「ONOMIMONO」のビジュアルも大胡田さんの手書きなんですよね？

大胡田　そうですね。いろいろ描きました（笑）。

成田　今回は相当な量ですよね。各CDショップの特典だったり、PVだったり。

──「トロイメライ」のPVも手作りなんですか？

大胡田　パラパラマンガ方式ですけどね。前回の「電波ジャック」は本当に手書きの絵だったんですけど、今回はPhotoshopで描いてます。全部ひとりでやってるわけじゃなくて、絵をつないでアニメーションにする作業はほかの人にやっていただいたんですけど。

──絵を描くのは元々好きだった？

大胡田　はい。母親と父親も絵を描くのが好きだったんですよ。母親に水彩画を習ったりもしていて。あと、色にも興味があるんですよね。色鉛筆や絵の具を集めるのも好きだし……。ほら、名前とかキレイじゃないですか。

──色の名前ってたくさんありますよね。

大胡田　ええ。「コバルトブルー」って書いてあるのを見て、「なんてキレイな名前なんだろう」「海の色が小さいチューブの中に入ってるんだなあ」って思ったり。そして、その色を持っている私……気分が良いんですよね（笑）。

大胡田の自由さがパスピエらしさにつながっている

──パスピエのアートワークは、最初から大胡田さんの担当だったんですか？

成田　担当ってわけでもないんですけどね。ライブのフライヤーを作るときに「絵が描けるっていうから、じゃあお願い」っていう。

大胡田　軽いノリだよね。

成田　うん。彼女はいろいろ面白い絵を描くんですよね。女の人が花を持ってる男の人を食べている絵とか……。

大胡田　男の人が「お花をあげるから、許してください」って言ってるところですね。ワイロ的な（笑）。

成田　初めに見たときは「これはちょっと気持ち悪いからやめてほしい」って言ったんですけど（笑）。でも、大胡田の発想ってすごく面白いんですよね。彼女の脳の中で起きた出来事だったりするんだけど、そこにほかのメンバーも引き寄せられてる感じがあるというか。例えば今回の「ONOMIMONO」もそうですよね。最初は意味がわからないんだけど、何か気になるというか、ずっと頭の中に残るような感覚があって。例えば「PASSPIED」ってアルファベットで書いたイラストは左右対称になっていて、デザイン的にも面白いし。

大胡田　CDのジャケットもそうなんですけど、それだけで完結しちゃうんじゃなくて、いろんな想像ができる部分を残しておきたいんですよね。余白っていうのかな。

成田　歌詞やアートワークを含めて、パスピエの世界観って、大胡田が握ってる部分が大きいと思うんですよ。彼女が自由にやっていることが、パスピエらしさにつながっているというか。僕らからは「こういうバンドにしたいから、こういう絵を描いてほしい」みたいなことも言わないですからね。まあ、相変わらずノリでやってるところもあるんですけどね。ホームページに大胡田のマンガを載せるのも、「やってみれば？」っていう感じだったし。

大胡田　そうですね。絵はずっと描いていきたいんですよ。パスピエを通して自分の絵を見てもらえるのは、実はすごくうれしいことなので。

新しい発信の仕方を探っている

──最後に今後の展開についても教えてもらえますか？

成田　とにかく曲を聴いてほしいので、どんどん作品を作りたいですね。今回のアルバムには選りすぐりの8曲が入ってるんですけど、ほかにもたくさん曲があるし、自分としては同じ傾向の曲は書いていないつもりなので。あと、新しい角度から評価されるバンドになりたいっていうのもありますね。

──新しい角度というのは？

成田　うーん、それが何かっていうのは具体的には見えてないんですけど。ただ、音楽の伝え方というのが限られてきてるような気がするんですよね。なので、新しい発信の仕方を探っているところはありますね。「これだ」っていうのはまだ見つかってないんですけどね。