PassCodeがニューシングル「Freely / FLAVOR OF BLUE」をリリースした。
今年8月3日、シャウターとして絶対的な存在感を示してきた今田夢菜が突如“勇退”を発表。PassCodeの音楽表現には欠かせないはずのピースが欠けることになり、グループの今後を不安視するムードが高まる中、同月22日に新メンバー有馬えみりの加入が発表された。本作は、新たな4人体制で放たれる最初の音源作品となる。
2016年のメジャーデビュー以降、一度のメンバーチェンジもなく着実に歩みを進めてきたPassCodeにとって、グループ史上最大の激動期とも言える2021年。当のメンバーたちは、この状況をどう捉えているのだろうか。音楽ナタリーでは南菜生、高嶋楓、大上陽奈子に、新加入の有馬も加えたメンバー全員へインタビューを実施。メンバーチェンジの経緯やその心境、新体制初のシングルについて、さらに来年2月に控えている東京・日本武道館公演に向けた話をたっぷりと語ってもらった。
取材・文 / ナカニシキュウ
今田夢菜の功績はずっと残っていく
──まず、やはりどうしても今田夢菜さんの“勇退”についてのお話から伺わなければならないんですが、簡単に経緯を整理していただいてもいいですか?
南菜生 メジャーデビュー翌年の「ZENITH」ツアー(「PassCode ZENITH TOUR 2017」)くらいから、今田の体調が優れないことが多くて。それでも本人の「ステージに立ちたい」という気持ちがすごく強かったので、どうにか「この4人体制で続けられないか」と模索しながらずっと活動してきたんですけど、今年の夏頃に今田のほうから「気持ちの面でも、これ以上続けることは厳しいかもしれない」という話をもらったんです。あれだけステージに執着してきた今田が自ら「降りる」と言うのであれば、その決断を尊重しようということで勇退という形を取ることになりました。
──8月3日にその発表があって、PassCodeは一旦3人体制になります。
南 3人になっても続けるべきなのかどうか、すごく悩んだんです。今までずっと「この4人でPassCodeだ」と言い続けてこだわってきたし、ファンの方にも「言ってたことと違うじゃないか」と思われるんじゃないかなと考えて。でも、たくさん話し合いを重ねる中で「まだまだPassCodeとしてやり残したことがたくさんあるな」と気付いて、続けるという決断をしました。
──そうは言っても、「今までの4人ではなくなる」という現実はそう簡単に受け入れられるものでもなかったのでは?
南 メンバーとしては、続けると決めてからは前だけを向いていた感じですね。どうすればPassCodeを続けていけるのか、それだけを考えていました。そのときすでにツアー中でもあったし、さらに約1カ月後にZeppツアーが控えていたこともあって、気持ちを切り替えて……という言い方はよくないと思うんですけど。
──切り替える切り替えないの前に、やらざるを得なかったと。
南 決めたのは自分たちやから。チケットをすでに買っていて、ツアーで前の4人体制を観るつもりだった方もいたので、その皆さんに希望を持ってもらえるようなライブをやらなきゃいけなかったですし。今田のシャウトという武器を使えない分、そこをどうやって補填できるのか、どうすればより魅力的なパフォーマンスができるのかを話し合って固めていった感じですね。
──なるほど。
南 今田は勇退という形になってしまったんですけど、今まで一緒に積み上げてきたものがなくなるわけじゃないし、PassCodeを作り上げていく過程において今田の功績はずっと残っていくものだと思っています。一緒にステージに立てなくても、何かを一緒に背負っている感覚でライブをしていくことになるんだろうなと感じていますね。
もとからPassCodeだったかのよう
──そして8月22日、後任シャウターとして有馬えみりさんが加入されます。展開としてはかなり早かった印象があるんですが、これはどういう経緯で?
南 そうですね……って、私ばっかりしゃべってるけど大丈夫?
一同 (笑)。
南 ええか(笑)。PassCodeの音楽にとって、やっぱりシャウトは必要なものだと感じたんです。今まで夢菜がやってきたことを引き継ぐ意味も込めて、この音楽を守っていくためにはやはりシャウトをする人間を入れなければいけない。それで、SNSなどを通じてそれに適任な女の子を探していく中で「この子がいいんじゃないか」と思ったのが有馬えみりでした。えみりは以前、うちの事務所の社長とサウンドプロデューサーの平地(孝次)さんと仕事をしたことがあったので、わりと話がスムーズに進んで。
──有馬さんのところには、急に「やって」という話が来た感じ?
有馬えみり そうです。突然電話をもらって、「なんの話やろ」と思ってたら「まだ発表はしてないんやけど、PassCodeから今田夢菜ちゃんが抜けることになった」という話をされて。「なんでそれを私に言ってくるんやろ?」と思ったんですけど(笑)、よくよく聞いてみると「後任にどうですか?」という話で、すごくびっくりしました。
──加入することはすぐに決断できたんですか?
有馬 もともと私は作家志望で、「作曲家として生きていくぞ」というスタンスやったんですよ。なので最初はほぼ断るつもりで「返事は1週間待ってもらっていいですか」と答えたんです。でも電話を切って落ち着いて考えてみたら、「PassCodeの音楽で叫べることに比べたら、自分の人生設計なんて大したことないな」と思えてきて。私はずっとヘヴィメタルから派生した音楽ジャンルが好きで生きてきたので、そういう人間からするとPassCodeのような音楽性のグループって憧れの存在なんですよ。なので、翌日すぐに「やっぱり加入でお願いします」と連絡を入れました。前の日に「1週間待って」と言ってあったんで、びっくりされましたけど(笑)。急がなきゃいけないかなと思って。
大上陽奈子 実際、最初に「1週間待ってほしいと言われた」って聞いたときは、そりゃあ人生において大きな決断だし「その返答も当然だよな」と思ったんですよ。そしたら次の日に「やると決めてくれたみたい」という連絡が来たので、「そんなにすぐ決断してくれたんだ?」と驚きました。そのことで彼女自身の強い意志みたいなものを感じたので、会うのがすごく楽しみになりましたね。信頼感が生まれたというか。
──急いで返事しておいて正解でしたね。
有馬 そうですね(笑)。
大上 所属している作家事務所にも話を通さないといけなかったり、いろいろ難しいこともある中で決断してくれました。えみりは私と同い年で、次の誕生日で23歳なんですけど、この年齢でその決断力があるのがすごいなって。
──PassCodeとして活動しながら、作家仕事も続けていく形になるんですか?
有馬 はい。最初に電話をもらった時点で「作詞作曲の仕事も、やりたいならしていいし」と言われていて。ゆくゆくはPassCodeの楽曲の歌詞も書きたいです。
──それにしても、よくこれだけ適した人材が見つかりましたよね。「シャウトができる同年代の女性」だけでもまあまあ厳しい条件だと思うんですけど、有馬さんはそれ以外の要素も含めてPassCodeにぴったり合致している印象があります。
高嶋楓 えみりちゃんも関西出身で、波長も3人と似てるからすごく接しやすいですし。そういうところで選んだわけじゃないのに、もとからPassCodeだったかのように溶け込んでいますね(笑)。「えみりちゃんでよかったな」と節々で思います。
南 探しているときは本当に「シャウトができて、女性で」以外の条件はあまり考えていなかったかもしれないです。兼任みたいな形でもいいと思ってたんで、すでにグループで活動している子も照準に入れていましたし。総数の少ないところから選ぶにあたってそこにこだわりはなかったんですけど、えみりはたまたまフリーで。性格とかも知らなかったし、「やってみて合わなかったら、それはそれで仕方ないよね」くらいの気持ちでした。まあ、だから賭けですよね(笑)。顔すらちゃんと知らなかったんで。
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関西弁がひどくなりました