PassCode|日本武道館公演に向かって 南菜生が思い語る

不満はまったくないです

──メジャーデビューから4年をかけて今回の「STRIVE」にたどり着いたと考えたとき、南さんの満足度としてはどれくらいですか?

南菜生

うーん、そうですね……あまりそういうふうに考えたことはなかったんですけど、4年間の集大成として出すアルバムとしては、これがベストなんじゃないかなと思います。

──逆にいうと、不満はありますか?

ないです。

──即答ですね(笑)。まったくないですか?

まったくないです。昔のほうが、何に対してもイライラしてました(笑)。メジャーデビュー前後くらいは特に、当時は19歳くらいだったので大人に対しても「なんだよ」みたいな思いがずっとあって。理不尽な人もたくさん見てきたし、大人になりたくないと思っていました。でもメジャーデビューして関わる人が増えたら、幸運なことにPassCodeのことをすごく思ってくださる人たちにたくさん出会えたんです。今は24歳になったんですけど、歳を取らないと話せない言葉がたくさんあるなって。ただ“歳を取る”だけじゃなくて、ちゃんと“歳を重ね”たいと思えるようになった。大人になることを受け入れられるようになりました。

──その心境の変化は、パフォーマンスにも影響している?

むしろパフォーマンスにこそですね。普段は別にいいんです(笑)。ステージに立ったときに自分を大きく見せすぎることなく、ちゃんと思った通りに嘘のない言葉を発することができる人間になりたいなと思っています。

──今回のアルバムで、4年やってきた今だからこそ歌えると感じる曲を挙げるとしたら?

えー、どれだろ。うーん、どの曲も好きなんですけど……。

──「全部」というお答えでも全然いいですよ。

でも「全部」だと面白くないですよね(笑)。とはいえ、歌詞にせよメロディにせよ、本当に今まで積み上げてきたものがないとできないアルバムなんですよ。何か1つでも欠けていたら完成しなかったと思うので……やっぱり全部ですかね(笑)。

──結局そうなりますよね。どの曲も「ZENITH」の頃に歌えたかというと……。

ここまで表現できなかったと思います。既発のシングル曲とかカップリング曲はメロディアスなものが多かったんですけど、アルバム曲を録っているときは、すごく激しい曲ばかりを歌っている感覚で(笑)。「これが完成したらいったいどうなるんだろう?」ってちょっと不安な面もありつつ、できあがったものを曲順で聴いてみたらすごく腑に落ちたというか。このタイミングでこの曲たち、この曲順だからこそ伝わるものがあるんじゃないかな。通して聴くことにすごく意味のあるアルバムだと思います。

──個人的な感想としては、誤解を恐れずにざっくり言うと「聴きやすいアルバムだな」という印象で。PassCodeの音楽って基本的には大衆向けに作られてはいないですけど、その軸をぶらさずに大衆にも届きうるポテンシャルを獲得した感じがしました。

ラウドロックというものがそもそも日本でリスナー人口の少ない音楽だから、「この路線で売れるのは至難の業だよ」みたいに言われ続けてきました。だからこそなのか、同じジャンルでずっと戦ってきた先輩バンドさんたちには初期からすごくお世話になっていて。ライブもたくさんご一緒させていただいたり、自分たちが何もできない頃から背中を見せてもらってきたんです。

──日本のラウドロックシーンがあまり大きくないからこそ生まれる連帯感みたいなものがあるんですね。

そう思います。その中で、PassCodeにはラウドロックでありながらバンドではないという弱点があるんですけど、それは同時に最大の武器でもあると思っていて。バンドじゃないというだけで一段低く見られるようなこともありますけど、ダンスやステージング、ボーカルが4人いることなど、バンドにはできないアピールの仕方が私たちにはいくつもある。PassCodeが知られることによって、結果的にこういう音楽を聴く人の総数を増やすことができたらすごくうれしいですし、少しは恩返しになるんじゃないかなって。始めた当初にはまったく思いもしなかった考えではあるんですけど、ここ1、2年でそういうことをぼんやり考えるようになりました。

武道館ってなんか想像できなくて

──そのお話を聞くと、日本武道館ライブの開催発表がより意義深く感じられますね。いわゆる大衆向けの音楽をやっている人が立つ武道館と、PassCodeが立つ武道館とではまったく意味合いが異なるというか。

はい、そうですね。

──PassCodeにとって、武道館とはどういう場所なんですか?

今までインタビューなどで目標とする会場を聞かれても、具体的な場所は挙げてこなかったんです。「どこでやりたいというより、1つひとつのライブを大切にやっていくうちにきっと大きな場所にたどり着くと思う」という答え方をしてきたんですけど、チーム内では去年あたりから「そろそろ武道館で」という話が出始めて。自分たちにとっては座席のあるライブ自体がすごく未知数ですし、どんなふうになるのかという不安のほうが大きかったりしたんですけど、実現すればそこでやっと1つ何かを返せるというか。小さなグループとして始まった私たちが、たくさんの人に支えられてだんだん大きくなって、武道館にたどり着いた。その姿をみんなに見てもらいたいんです。自分たちが立つというよりも、その人たちと一緒に武道館へ行くことに意味があるなと。

──それは、武道館でないとダメなんですか?

そうですね。どちらかというと、横浜アリーナや幕張メッセでライブをしている自分たちのほうが想像できるんですよ。キャパシティの問題ではなく、「武道館に立つPassCode」ってなんか想像できなくて。PassCodeを支えてきてくださった皆さんも、同じように「PassCodeが武道館って想像つかないな」と思っている方が多いと思うんです。だからこそ、そこでやるPassCodeを見てもらいたい。自分たちがそこでやりたい気持ち以上に、関わってくれた人たちに見てもらいたい場所が武道館なんです。

──武道館は特別なんですね。

そうです。きっと自分たちが思っているよりもすごい場所なんだろうなと感じています。

──古い世代のロックファンにとっては、それこそThe BeatlesやLed Zeppelinが立った場所として完全に聖地でしかないんですけど、南さんくらいの世代の人たちにとっては正直そこまで特別な場所でもないんじゃないかと思っていたんですよ。

思い入れは人によって違うとは思うんですけど、少なくとも私には「特別だな」っていう意識はずっとありますね。「日本武道館でやる」ということが、多くの人に認められた証になると思っていて。簡単にできる場所じゃないですし、好きなバンドが武道館をやるということになったら、それは必ず観に行こうと思いますし。

南菜生

──それは例えば、東京ドームやさいたまスーパーアリーナよりもある意味では価値があるという感覚ですか?

ですね。まだどの舞台にも立っていないのでわからない部分はあるんですけど、今はキャパシティとか関係なく、「武道館という場所でライブをやっているPassCode」というものを、関わってくれたすべての人に観てもらいたい気持ちが強いです。

──高校球児にとっての甲子園みたいな感じ?

うんうん、そうですね。そういう思いが強いかもしれないです。

──ライブの規模を大きくしていくことは、PassCodeにとって迷わず目指せる目標ですか?

どれだけ大きいところでやれるようになったとしても、ライブハウスでのライブはやり続けたいなと思っているんです。そこからスタートしたグループなので、ずっと大きいところだけでライブをするグループになっていこうとは思っていなくて。「もう小さいところには出ません」みたいな思いがまったくないからか、大きいところを目指すことに抵抗がまったくないですね。

──軸足がブレていないから、どんなに遠くを目指しても地に足が着いたままでいられると。

「It's you」(2018年12月発売のライブCD「PassCode 2016-2018 LIVE UNLIMITED」 / 2019年4月メジャー2ndアルバム「CLARITY」収録)という曲があるんですけど、最初は本当にただのアルバムの中の1曲だったんです。それが最近はPassCodeライブのアンセムじゃないですけど、重要な曲になっていて。「自分たちがこの場所でライブをしたらどうなるんだろう?」を考えるときに必ず思い浮かべる曲が「It's you」なんですけど、この曲をみんなが歌ってくれている光景が浮かんでくる限り、PassCodeは大丈夫だと思っています。

──なるほど。それはやはり、最初のお話にあったように一歩一歩着実に歩みを進めてきたからこそ見えるものなんでしょうね。

そうであってほしいと思います。

「この人がいれば、なんか大丈夫」みたいな

──最後にちょっと変な質問をしますけど、今後のPassCodeがより発展していくために、南さんからメンバーに要望を出していただきたいと思います。まず、高嶋さんに何を望みますか?

1人ずつですか?(笑)そうですね……楓はすごく努力家なんですけど、恥ずかしがり屋なんですね。それなくなればきっとパフォーマンス的にももう一段階伸びると思っていて。自分に自信さえ持てたら、もっとステージ映えのする人間になっていけると思います。だから、私は楓のことは褒めるようにしていて(笑)。自分のダメなところにばかり目が行きがちな子なので、「ここ、よくなってるね」とか「今日の髪型似合ってるよ」とか、プラスになる言葉をたくさんかけてあげようと決めて接しています。

──今田さんについては?

今、ライブ中に一番もどかしい思いをしているのは夢菜だと思います。復帰して以降はずっと不安なことが多いみたいで、「不安だー」とか「あんまり覚えてない」みたいな言葉を漏らすことが多いんです。焦らなくていいので、いつか心の底から楽しいと思えるようなライブができるように、一緒に準備をしていけたらいいかな。それこそ武道館では、お客さんの顔をしっかり見て「こんなにたくさんの人が自分のことを大切に思ってくれてるんだ」っていうことを感じてもらいたいですね。

──大上さんに対してはいかがでしょう。

うーん……特にないかな。

──(笑)。

陽奈子はすごく研究熱心で、自分がどうしたら素敵に見えるかをよく知っているんです。ライブをするたびにどんどんよくなっていってますし、本当にあとは経験だけだと思うから、たくさんの場所でライブをさせてあげたい。もともと歌を歌うことが好きな子なので、一時期は「ライブよりもレコーディングのほうが好きなのかな?」と感じることもあったんですけど、最近はライブ中もすごく楽しそうにしていて。この調子でライブが好きなままいてくれたら、きっと自分でよくなっていく。陽奈子は大丈夫かなと思いますね。

──では、南菜生という人に要望を出すとしたら?

南菜生って人には(笑)、なんだろう……もっと安心感を与えられる人間になってほしいですかね。「この人がいたら、なんとなく大丈夫な気がする」みたいな。別に根拠がなくてもいいんですよ。「この人がステージにいる限りPassCodeは大丈夫」と思えて、各々が安心してベストのパフォーマンスをできるような存在に早くなってほしいです。

──精神的支柱みたいな?

マンガやアニメでいうと、別に強くはないんだけど「この人がいれば、なんか大丈夫」みたいな感じがするキャラクターっていますよね。必ずしも何かがめちゃくちゃうまいとかスキルが高い必要はなくて、その人がそこにいること自体に意味があるというか。もちろん、私自身はちゃんとうまくならなければいけない立場ではあるんですけど。

──ある種のカリスマということですよね。なろうと思ってなれる人物像ではないようにも思えますが……。

そうですね。とりあえず私はメンバーのことをちゃんと見ていようと思っています。体調とかもそうですし、気持ちの面の変化にもちゃんと気付いてあげられる人でありたいなって。

ツアー情報

PassCode「"STRIVE" for BUDOKAN Tour 2021」
  • 2021年2月13日(土)愛知県 DIAMOND HALL
  • 2021年2月21日(日)大阪府 なんばHatch
  • 2021年2月23日(火・祝)東京都 チームスマイル・豊洲PIT
  • 2021年2月27日(土)滋賀県 滋賀U★STONE
  • 2021年2月28日(日)静岡県 LiveHouse 浜松 窓枠
  • 2021年3月18日(木)大阪府 なんばHatch
  • 2021年4月17日(土)広島県 広島CLUB QUATTRO
  • 2021年4月30日(金)北海道 Zepp Sapporo
  • 2021年5月2日(日)宮城県 チームスマイル・仙台PIT
  • 2021年5月13日(木)愛知県 DIAMOND HALL
  • 2021年5月15日(土)福岡県 スカラエスパシオ
  • 2021年5月16日(日)熊本県 熊本B.9 V1
  • 2021年6月20日(日)神奈川県 Yokohama Bay Hall
  • 2021年7月22日(木・祝)岡山県 CRAZYMAMA KINGDOM
  • 2021年7月24日(土)香川県 高松festhalle
  • 2021年7月25日(日)兵庫県 Harbor Studio
  • 2021年8月14日(土)石川県 金沢EIGHT HALL
  • 2021年8月15日(日)新潟県 studio NEXS
PassCode 日本武道館公演
  • 2022年2月12日(土) 東京都 日本武道館