音楽ナタリー Power Push - PassCode
「VIRTUAL」でリスタートする4人のPassCode
柱のない家みたいな感じ
──2人が辞めたいって思ってたのは南さんも気付いていた?
南 うーん、実は当時はまだそんなに仲がよくなかったんですよ。何を考えてるのかよくわからなかったですし。でも辞めたいんやろなっていうのはなんとなく伝わってきてて。
高嶋 そんなに深い話とかもしなかったし。
今田 けっこう壁がありました。旧メンバーと新メンバーの間に。
南 うわべの付き合いって感じすらなかったよ(笑)。
──「辞めたいって思ってるの?」とか聞ける感じでもなく?
南 そんなん、怖くて聞けない(笑)。私より2人のほうが年上のお姉さんだし。今みたいになんでも聞けるっていう感じではなかったです。
今田 遠慮してたよな?
南 どうしたらいいかわからんようになってしまって。辞めてしまって解散になったらもう仕方ないってくらいな気持ちではいました。
──新体制になってここからが新しいスタートでしたけど、グループとしては不安定な時期が続いていたんですね。
南 そうですね。明確にメンバーの間に絆っぽいものが生まれるまでだいぶ時間がかかりました。とにかく、メンバーにいろいろ聞いたらもう終わる。PassCodeが終わってしまうと思って、何もできなかったです。黒原とも全然連絡を取ってなかったし、特に仲がよかったわけでもないから、その頃のPassCodeは1対1対2みたいな図式やったと思う。
今田 柱のない家みたいな感じだった。もうグッラグラで。
自分たちがやってたことは間違ってなかった
──そんな状態がしばらく続く中でも、楽曲はハイペースで次々と生まれてましたよね。
今田 それもすごく苦痛だったんですよ。振りも全部作らなきゃいけなかったし。
南 1stアルバム「ALL is VANITY」の楽曲はほとんどメンバーだけで振りを考えてたんですよ。だから振りも作らないといけないし、それを覚えなきゃいけないし、メンバーは何を考えてるかわからんしで、かなりイライラしてました。でもそれを口にもできないし、みんな次第に態度が悪くなって空気もピリピリしてて。
高嶋 帰りたかった。
──新しい曲ができることは普通のグループだったらうれしいと思うんですけど、あまり喜べない状況だったんですね。
今田 期間が短くて頭もついていかなかったですね。
──いつになったらグループに平穏が訪れるのか心配になってきました(笑)。
今田 しばらくピリピリは続きますよ。その年のワンマンくらいまでは。
南 うん。ワンマンライブを終えてからだいぶみんなの気持ちが変わりました。
今田 ワンマンはこんなにハッカー(PassCodeファンの総称)が来てくれるとは思わなくて、ステージに上がった瞬間にびっくりしました。
南 幕が開いた瞬間に感動しました。
高嶋 こんなに応援してくれている人がいたんやねって。
今田 それまでライブが楽しいっていう感覚がなくて。シャウトするのが嫌だったんですよ。だけどライブでは「楽しい」って言わないといけないじゃないですか。嘘ついてる感じも嫌でした。
──ずっとモヤモヤしてたんですね。
今田 「ライブってこんな感じだっけ?」って思っちゃったくらいです。でもワンマンで会場がパンパンになった光景を見て「これが楽しいってことなんや!」って初めて感じることができました。自分たちがやってたことは間違ってなかったんだって。
高嶋 私もそのときにPassCodeを続けたいって思いました。
絶対に受け入れられてないのはわかってた
──2015年に入ってからアイドル界隈だけじゃなくてバンドファンからも徐々に認知され始めてきましたね。自分たちとしてもファンが増えている実感というのを感じてました?
南 その頃から物販会でも「アイドル好きじゃないけど来ました」という人が多くなってきました。アイドルファンじゃなくても好きになってくれる人がこんなにいるんだって驚いて。
──そしてPassCodeは、この年の8月に行われた「TOKYO IDOL FESTIVAL 2015」に初出場。そのステージで新メンバーとして大上さんがお披露目されました。
大上陽奈子 ようやく登場しました(笑)。
──大上さんはどういった経緯でPassCodeに?
大上 私は2015年の3月に黒原さんと一緒の舞台に出演していて、そこで当時PassCodeにいた運営の方にお誘いいただいたのがきっかけです。
南 その人はもう辞めちゃったんですけど、当時私たちに相談もなく勝手に新メンバーを入れるって決めてきたんですよ(笑)。
大上 私、もともとグループのアイドルにすごい憧れていて、小さいときからアイドルになりたかったんです。
南 中学生のときにモーニング娘。のオーディションを受けたこともあったみたいです。
大上 モー娘。さんのオーディションは落ちてしまったんですけど、中学生のときはソロでアイドル活動をしてて。月に2回くらいライブイベントに出演してました。でもその活動をしながらもずっとグループでのアイドルに憧れてて。だからお話をもらったときはすぐにでも入りたかったんですけど、PassCodeのミュージックビデオとか観てみたら「思ってたんと違う!」ってなって(笑)。
──少なくともモー娘。ではないですよね。
大上 そうなんです。アイドルってもっとキラキラしてかわいいっていうのが……。
高嶋 かわいいやろ、PassCode。
一同 あはははは(笑)。
大上 でも、PassCodeはほかのアイドルがやらないような楽曲を歌ってたし、逆に面白いかなって思うようになって入りたいって思いました。それで2ndワンマンを観させてもらってから話を進めることになって。皆さんと合流したのが7月の下旬くらいで、「TIF」の1週間か2週間くらい前のことです。
──え、お披露目まで全然時間がなかったんですね。
南 そう。だから「TIF」でやる曲だけをとりあえず合わせた、みたいな。
今田 そもそもひなちゃんが入る直前に「新メンバーが加入します」って言われたんですよ。なんか勝手に決まってるぞって感じで。しかも私たちとしても初めての「TIF」だし、ずっと出たかった舞台なのに、そこで新メンバーのお披露目とか想定してないことが起きて、ありえへんって思ってた。
──ということは、大上さんが加入したことは当時のメンバーにとってはあまり歓迎ムードでもなく……。
高嶋 そのときはゆうきゃん(黒原)を含む4人でがんばっていこうっていう雰囲気があって、この4人で上を目指そうと思っていたんですよ。なのに、いきなり1人増えたらいい雰囲気も崩れちゃうかなって。
大上 歓迎されてないんだなっていう雰囲気は皆さんと初めて挨拶するときにすごい伝わってきましたよ(笑)。
一同 あはははは(笑)。
今田 怖かったやんな。悪いことしたな。
高嶋 笑顔で迎えてあげたかったけど顔が動かんかった(笑)。
大上 そこから一緒に練習する日まで不安で仕方なかったです。絶対に受け入れられてないっていうのはわかってたから。
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収録曲
- MOON PHASE
- AXIS
- Never Sleep Again
- ドリームメーカー
- NINJA BOMBER
- from here
- SIGNAL
- Now I Know
- Selfish Girl
- Nextage
- Don't leave me alone
- You made my day
- PassCode VIRTUAL TOUR 2016
- 2016年7月2日(土)
宮城県 darwin - 2016年7月3日(日)
大阪府 FANJ twice - 2016年7月6日(水)
愛知県 ell.FITS ALL - 2016年7月8日(金)
福岡県 INSA - 2016年8月8日(月)
東京都 Zepp DiverCity TOKYO
PassCode(パスコード)
南菜生、高嶋楓、今田夢菜、大上陽奈子の4人からなるアイドルグループ。2013年の結成当初はアイドルらしい楽曲を歌うグループだったが、2014年2月に高嶋、今田が加入したのを機に楽曲プロデューサーの平地孝次が手がけるラウドロックやEDMなどを複合した楽曲にコンセプトを変える。曲中では今田のシャウトが特徴的で、アイドルファンのみならずロックバンドファンなど幅広い層からの支持を集める。2014年6月に1stアルバム「ALL is VANITY」を発表。同年10月には大阪と東京で1stワンマンライブを開催する。2015年8月に大上陽奈子が加入し「TOKYO IDOL FESTIVAL 2015」に初出場。同年10月から2016年1月にかけて初の全国ツアーを実施。2016年5月25日に2ndアルバム「VIRTUAL」を発表し、アルバムを引っ提げた全国ツアーを7月2日よりスタートさせる。ツアーファイナルは8月8日に東京・Zepp DiverCity TOKYOにて全編バンドセットで行われる。