ナタリー PowerPush - PAGE
苦悩と迷いが生んだ新曲「エクスペクト」
自分の感覚だけは絶対にブレさせない
──自分の音楽の核はなんだと思う?
感覚、ですかね。自分の感覚がいいと思えばブレない自信があるので。人から「こうしたほうがいい」って言われたら、「わかりました」って言うけど、絶対にその通りにはしないので。自分の感覚だけは絶対にブレさせないです。ちょっとずる賢いのかもしれない。
──だから、自分の音楽的な感覚やラップのスキルに自信がないというのもポーズなわけでしょう? 表面的な予防線を張ってるだけで。
いや、うん……自信はやっぱりあるんでしょうね。でも、それを堂々と言うとめんどくさいことになるかもしれないし。それがヤで。
──っていうことなんだよね。話を戻すと、「エクスペクト」のサウンドがデジタルロック調になったのはなぜですか?
歌モノにしようと思ったときに、なんとなくパワーポップっぽい曲にしてみるかと思ったんです。で、スタジオに入ったら目の前にシンセサイザーがあったから弾いてみた、みたいな。シンセを弾きながら、ギターのメロディやリフとかを考えて。別にデジタルロックにしようとは思ってなかったし、シンセで作ったフレーズもあとで差し替えようと思っていたんですけど、ほとんどそのまんま採用することになって。「マジですか」って(笑)。
──なるほどね。やっぱりね、これからどんな曲を作るにせよ、あなたはラップしたほうがいいと思う。
マジですか。
──間違いなく。
うん……確かに自分でも「エクスペクト」を作ってラップのパートがあってよかったと思ったのも事実なんですよね。
僕は嘘は絶対に書かない
──歌詞はどんなことを意識しましたか?
「足りないものはいつもここにあって 傷つけ合っていく僕らはまた許し合っても 裏切り合って大人になっていくのかな」っていうサビの3行の歌詞があるじゃないですか。ここの部分はずっとあって、いつかこの3行をメインテーマにした曲を書こうと思っていたんです。
──サビの3行のラインはPAGEくんがずっと言いたいことでもあったと。
そうですね。言いたいことでしたね。
──子供と大人の間で揺れている姿が映し出されているんだけど、最後は「行き着く果てまで 色の無い枯れた未来に水をあげよう」というラインで終わるじゃないですか。これって、憂鬱のはけ口だけでは出てこない言葉だと思うんですよ。
でも、ここも僕の中では皮肉を歌っているんですよね。「エクスペクト」=期待するっていう意味ですけど、ここで言う期待は皮肉的な意味を込めていて。自分はそうは思わないけど、周りの人たちが希望に満ちたことを言うから「じゃあ期待しときます」って言う、みたいな。皮肉的に希望を書いているからこそ「未来に水をあげよう」って言葉が出てきたと思うし。今の僕からしたら、「色の無い枯れた未来」だから。でも、さっき言ったように、無意識に光みたいなものを求めているのかなとも思うし。そのあたりは感覚だから、分析はできないんですけど。ただ、曲をどう捉えるかは聴く人の自由でいいと思います。
──通常盤の3曲目に「からっぽの空の下で」というリリカルなラップをフィーチャーした曲があるんですけど、これこそがPAGEくんのリアルソングだと思ったんですね。
うん。僕、普段はホントに感覚的に曲を作っているんですよ。「エクスペクト」もそうで。サビの3行の言葉は言いたいことがあったからぶち込みましたけど、ほかは頭が真っ白な状態で書いているんです。でも、この曲に関しては、最初の1行から最後の1行まで100%言いたいことなんですね。
──うん、吐き出してるよね。
はい。ちょうど1年前に作った曲で。去年の1月2日に書きました。「初デモ」というタイトルでディレクターさんに渡したんですけど。
──その頃って精神的にかなり落ちていた時期でしょう?
うん、落ちてましたね。「夏の終わり曇天 9月4日あの日 自分の全てが崩れ落ちた」って「閃光ライオット」でグランプリを獲った日なんですけど。
──だよね。
あのときはいろんなことが順調だったけど、11月くらいになってどん底まで気分が落ちて。あそこでグランプリを獲らなかったら、音楽とももっと楽しく付き合えてたのかなとか。そういうことを考えてたら、どんどん言葉が出てきて。上京しても虚しいし、面白いこともない。人間って大人になっても嘘つくし、人を傷付けるし、悪いことをやっても隠したりしながら平気で笑ったり、「幸せだな」とか言っちゃうんだなと思って。怖いし、落ちるなって。
──でも、そういう思いをここまでリリカルかつストレートに吐き出すことで、音楽として強い求心力を放てるんだから。やっぱりあなたは本質的にラッパーなんだと思いますよ。
ありがとうございます。だから僕は、嘘は絶対に書かないです。世の中みんなご都合主義で、嘘ばっかりだから。僕も欠点だらけの人間だけど、嘘は書かないです。
──その決意をこれからもラップにぶつけてくださいよ。
わかりました。嘘はつかず、調子に乗らずになんとかがんばります。
- ニューシングル「エクスペクト」 / 2013年2月13日発売 TOY'S FACTORY
- 期間生産限定盤 [CD] 1223円 / KSCL-2187
- 「エクスペクト」通常盤 [CD] 1223円 / KSCL-2186
期間生産限定盤収録曲
- エクスペクト
- ラストソング
- エクスペクト(TV SIZE)
- エクスペクト(Instrumental)
通常盤収録曲
- エクスペクト
- ラストソング
- からっぽな空の下で
PAGE(ぺいじ)
1995年生まれ、愛媛県松山市出身のラッパー。小学6年生のときに観たケツメイシのライブDVDに感銘を受け、音楽に目覚める。2008年からリリックを書き始め、2011年1月にマイクとインターフェイスを購入し宅録を開始。直後からニコニコ動画に「ニコラップ」と呼ばれるジャンルのラップを投稿し始める。同時期に10代限定のロックフェスティバル「閃光ライオット2011」に応募し、予選を勝ち上がる。同年9月に東京・日比谷野外大音楽堂で開催された決勝戦で見事グランプリを獲得(当時の名義はPAIGE)。「閃光ライオット」での一連のステージを現在のディレクターに見初められ、2012年7月にKi/oon Musicよりメジャーデビューシングル「You topia」をリリースした。2013年2月、2ndシングル「エクスペクト」を発表する。