ナタリー PowerPush - OZROSAURUS
オジロ×DJ WATARAI ワンプロデューサーで作った小細工なしの最新作
“ハマの大怪獣”ことOZROSAURUSが、コンセプトアルバム「Dish and Dabber」をリリースした。本作は全8曲をDJ WATARAIがプロデュースした、オジロにとって初めてのワンプロデューサー作。DJ WATARAIによる多彩なトラックをMACCHOが力強く、ときに繊細に乗りこなす、“045 STYLE”が存分に楽しめる内容に仕上がっている。
今回ナタリーでは、MACCHOとDJ SN-Z、そしてDJ WATARAIの3人へインタビューを実施。OZROSAURUSがDJ WATARAIをプロデューサーに起用した理由、制作について、そしてリリックから垣間見える現在のMACCHOの心境までを聞いた。
取材・文 / 伊藤大輔 撮影 / 小原啓樹
中学生のMACCHOを見て、「すごい人がいるな」って
──まずはOZROSAURUSとDJ WATARAIの出会いから教えてください。
DJ WATARAI 僕が高校生の頃に代々木のChocolate Cityでやっていた「Check Your MIC」ってMCバトルに中学生だったMACCHOが出ていたのを見て、「すごい人がいるな」と思ったのが最初ですね。その頃は僕が一方的に知っていただけで、ちゃんと知り合ったのはもっと後になってから。
MACCHO 俺はワタさん(DJ WATARAI)が横浜のクラブでDJをやってるときに初めて話したことを覚えてますよ。
DJ WATARAI たぶんclub Lizardでやったときで、元オジロのDJのTOMOくんも一緒にいたときじゃないかな。
DJ SN-Z 俺はずっと海外にいたから、ワタさんと直接知り合ったのはけっこう最近ですね。もちろん昔から名前は知っていましたけど。で、俺の本名って“ワンタイラ”って言うんですけど、“ワタライ”と語呂が似てたから、勝手にファミリアだなーって思ってました(笑)。
MACCHO 一方的なファミリアだ(笑)。
──では、初めて仕事をしたのは?
MACCHO 2011年に「BEATS & RHYME」っていう曲で初めて一緒に制作したときだから、けっこう最近です。でも、15年前くらいに俺がFUTURE SHOCKに在籍していた頃から、ワタさんのビートでラップをしたい気持ちはあって。まあ、いろいろあってようやく一緒にできましたね。「やっと認めてもらえたな」って思いました。
DJ WATARAI いやいや、MACCHOって若いときからずっとシーンの第一線にいたこともあって、上の世代も下の世代もみんなMACCHOのことが大好きなんですよ。MACCHOがFUTURE SHOCKにいた頃ってDJ HASEBEくんとかDJ KENSEIくんがMACCHOと一緒にやっていて、それが正直うらやましくて。「俺も一緒にやりたいのに」って思っていたくらい(笑)。
──そういう気持ちが今作につながっていったわけですね。
MACCHO うん。MACCHO, NORIKIYO, 般若&DABO名義での「BEATS & RHYME」を作り終わったあとに、ワタさんに「ビートが欲しい」って俺から声をかけて。1~2曲くらいはもらえるかなって思ってたら、確か14曲くらい送ってくれた(笑)。それがちょうど去年の夏くらい。
DJ WATARAI もともとストックしていたトラックに僕が思うオジロのテイストを加えていったんです。オジロは“横浜のウェッサイなグループ”ってイメージがあるけど、MACCHOはFUTURE SHOCKにいて東京でも活躍していたからアーバンな雰囲気もある。海外のラッパーで例えるならジェイ・ZやT.I.みたいにどんなトラックでも乗りこなせるタイプだと思うんです。だからサウンドも西や東、サウスみたいなカラーにとらわれずに、今の自分がよいと感じるテイストに仕上げました。
MACCHO 初めてビートをもらって聴いたとき、“これはヤバい”と思いましたね。
DJ SN-Z やっぱ間違いないって感じでした。
──作品を通して1人のプロデューサーのみとタッグを組むというのは、これまでのオジロの作品にはなかったですよね?
MACCHO そういうふうに作りたいって前から思っていたんだけど、いろんな人からトラックをもらうんで、どうしても「あれもこれも」ってなっちゃって。今回は「ワタさんとやりたい」って思いが強かったから実現した。とはいっても、ワタさんが全部プロデュースしたというのとはちょっと違って、曲順や構成を事前に相談したりせずに、もらったトラックの中から俺が曲を聴いてリリックが浮かんだものだけを選ばせてもらいました。
ラップは神聖に録っていく
──その後はどうやって作業を進めたのですか?
DJ WATARAI デモにラップを入れたものをファイルで送り返してもらって、それをブラッシュアップするというやり方でした。最初にできたのが「ZERO」だったんですけど、戻ってきたトラックのラップを聴いて喰らっちゃって……「ちゃんとやらないとマズい!」って(笑)。
MACCHO 「ZERO」はビートの感じもスゴくて、自分が納得できるラップを乗せるのが難しく感じたけど、「なんとか乗りこなしてやる」って挑戦したくなったんですよね。
DJ WATARAI 普段の僕のやり方だと、ラップが乗ったらそこに音を足して全体的な幅を出していく……つまり、トラック主体で完成させることが多いんですが、MACCHOの場合は譜割りからフロウ、それに流れもスゴいから、「どうやってラップを聴かせるか」を常に考えて制作しました。例えばフロウのリズムや感情の起伏に合わせて展開を付けたり、個人的にラップをしっかり聴きたいなと思ったトラックはテンポを下げたりもしたし。
DJ SN-Z ワタさんからトラックが戻ってくるとすごくよくなっているから、やりとりが楽しくてしょうがなかったです。ワタさんとMACCHOが組んだらスゴいものができる確信があったから、俺は「どれだけサウンドを広げられるか」を意識してラップのテイク選びやスクラッチを入れる作業をしていきました。
MACCHO DJ SN-Zとはずっと一緒にライブをしているから、フロウの上がり下がりひとつとってもちゃんとわかってくれていて。だからもし合格点だと思ってもOZROSAURUSとしては「もっといいのができる」って2人とも思っているから、一緒に作業をしていて心強いんですよ。
──ラップはどういうふうに録っていったんですか?
MACCHO 神聖に録ってますね(笑)。
──(笑)。具体的に言うと?
MACCHO ほぼ100%パンチインなしで、1曲丸ごと録る感じです。なぜかって言うと、俺たちはコンスタントにアルバムを出しているわけじゃないし、1stアルバムの「ROLLIN'045」から2ndアルバム「JUICE」の間みたく3年くらい空くこともある。だからオジロはライブ活動によって生かされているグループだと思っているから、アルバムでやったことをライブでもしっかりと表現できるように、録音とは言っても小細工はなしにやりたいんですよ。
──そう言われると、今作と前作は約1年2カ月ぶりというわりと短いインターバルで作られていますね。
MACCHO 今は“書きたい”モードだったのかもしれないですね。これまで培ってきた経験を今後10年のキャリアでどう生かしていくか、真剣に考えたいという気持ちがきっかけになっているんですけど。
収録曲
- ZERO
- モンスター
- FREE
- SKIT
- LOCK STAR
- MABOROSI
- MUSIC IS OUR TREASURE(DJ WATARAI REMIX)
- MATRIX(DJ WATARAI REMIX)
「蝕」 supported by Amebreak
2013年7月6日(土)
東京都 shibuya THE GAME
<出演者>
OZROSAURUS / ECD / 蝕MCz
“Dish and Dabber” RELEASE LIVE
2013年9月28日(土)
神奈川県 横浜BayHall
<出演者>
OZROSAURUS / DJ WATARAI / and more
※アルバム封入先行予約有り
OZROSAURUS(おじろざうるす)
神奈川県横浜市出身のMACCHO(Rap)と同じく横浜出身のDJ TOMO(DJ)により1996年に結成されたヒップホップユニット。1997年にミニアルバム「ライム・ダーツ」を発表しメジャーデビューすると、MACCHOのオリジナリティあふれるフロウが瞬く間に全国に知れわたる。さまざまな作品への客演などを経て2001年に発売した1stアルバム「ROLLIN'045」はロングヒットを記録。2ndアルバム発売後の2004年にはDJ TOMOが脱退し、実質MACCHOのソロプロジェクトとして活動を続ける。その後ROMERO SPで活動をともにしたDJ SN-Z(DJ)が正式加入。2007年には活動の場をインディーズへと移し4thアルバム「Hysterical」を発表した。2011年にEMIミュージック・ジャパンと契約すると、2012年に5thアルバムでメジャー復帰作「OZBUM ~A:UN~」を発表し注目を集めた。2013年6月には初のワンプロデューサー作として、DJ WATARAIとタッグを組んだワンプロデューサーのコンセプトアルバム「Dish and Dabber」をリリース。