尾崎裕哉インタビュー|衝撃のデビュー発表から7年、次なる舞台は原点である弦楽アンサンブルコンサート (2/2)

僕はもうお任せスタイル

──今回7年ぶりにこういったコンサートを開催しようと思ったのも、その手応えがあったからこそですよね。

尾崎 「やりませんか?」というオファーをいただいたのがそもそものきっかけではありますが、僕の中でもう一度しっかりと弦楽スタイルのコンサートをやりたいという気持ちがずっとありました。この7年間、バンドやトリオ、弾き語りでライブをやってきた中で、もうちょっとスケール感のある編成でやりたいと思うようになったんです。それは自分が飽き性だからでもあるんですけど(笑)、もっといろんな人と関わって音楽をやりたいし、いろんなスタイルを試したい気持ちがあったんですよね。

──さまざまな活動を通して得た今のスキルを弦楽にぶつけてみたい気持ちもあったんじゃないですか?

尾崎 この7年で、ミュージシャンとしてはだいぶ成長したかなと思うので、その頃と比べてもうちょっとベテランじみたというか(笑)、以前よりもレベルアップしたコンサートができるといいかなと思っています。考えてみれば、7年前はオリジナル曲が数曲しかない状態でのコンサートでしたからね。今はオリジナル曲もたくさん増えたので、コンサートの構成もより練ることができています。

──アレンジに関してはどんなイメージで進めているんですか?

尾崎 今日まさに取り組んでいたところなんですけど……。

宮本 基本はオリジナルの雰囲気を大切にしつつ、管弦楽、アコースティック編成のよさを引き出すような彩りを加えられたらな、と考えています。

尾崎 基本的に、僕はもうお任せスタイルではありますけどね(笑)。宮本さんは僕より弦楽のことを理解されている方々なので、そこはとやかく言うべきではないなと思っています。信頼してお任せしちゃって大丈夫だなと。

──尾崎さんがこだわりを注ぐのはセットリストかもしれないですね。弦楽のアレンジが似合う曲を選ぶのもいいでしょうし、あえて想像外の化学反応を求めてみても面白いかもしれません。

尾崎 最初は弦楽のイメージが先行していたので、けっこうバラードを多めにしたセットリストを組み立てていたんですよ。でも、宮本さんとのお話を通じて、ピアノでもいろんなスタイルに仕上げることができることを知って。しかも今回参加いただくベースの方はジャズからポップスまで幅広く演奏できるとのことなので、だったらバラード以外にも、もっとノリやすい音楽を盛り込んでいいんじゃないかなと思うようになりました。まさに今、改めて選曲をしているところです。

宮本 すでに当初のセットリストからだいぶ変化がありますよね。

尾崎 変わりましたよね。最初に考えていたものよりも明るくなりました(笑)。

宮本 かしこまった感じではなく、楽しい雰囲気のプログラムになると思います。

──スタッフの方に伺ったところによると、レゲエっぽいアレンジで披露される曲もあるとか。

尾崎 まだテスト段階ではあるんですけど、いろいろなイメージをすり合わせる中でそういったアイデアも出ましたね。さらに言うと、フルメンバーで演奏する曲はもちろん、ピアノとベースと僕のトリオでやる曲や、僕だけが登場するコーナーもできそうな予感です(笑)。

宮本 あえてそういうパートも作ってみようかなと(笑)。尾崎さんお一人のブロックは日替わりセクションにしようかな、とか。

尾崎 はい。だからツアーの中で同じ内容の公演はないので、ぜひ全公演追っかけてください(笑)。

いつも通り、普通にステージに立って歌う

──弦楽アンサンブルのコンサートであり、しかも会場がクラシック専用ホールなので、観る側もちょっとカチッとした心持ちで参加することになるのかなと思っていました。肩の力を入れず、自由に楽しめる内容になりそうですね。

尾崎 そうですね。ちょっとカジュアルな雰囲気で楽しめる部分もありますから。

宮本 弦楽のアンサンブルで感動していただきつつも、意外とノリノリになってもらえるところもあるし。本当においしいところがギュッと詰まった楽しいコンサートになりますよ。

「尾崎裕哉 Strings Ensemble Premium Concert 2023」ビジュアル

「尾崎裕哉 Strings Ensemble Premium Concert 2023」ビジュアル

──今回は単発のコンサートではなく、3都市4公演のツアーになっているのもぜいたくですよね。

尾崎 日本橋三井ホールや芦屋ルナホールは、これまでに立たせていただく機会はあったんですけど、愛知の名古屋市昭和文化小劇場と東京の浜離宮朝日ホールは初めての会場なので、大きな喜びがありますね。演奏していただく方々とともに楽しく各地を回って行ければと思っています。

宮本 楽しくやりましょう(笑)。

尾崎 はい(笑)。先ほど緊張しないというお話をしましたけど、僕はどんな形態のライブ、コンサートであっても、常に通常運行でやるスタイルなんですよ。気持ちを大きく変えることなく、いつも通りの感覚で、普通にステージに立って歌うっていう。いつでもどこでも歌えるというのがシンガーの理想じゃないですか。もちろん、そのための準備はもちろんしっかりやりますが。

宮本 へー、その考え方が素敵。そう言えば音合わせをしているときもすごく自然体で、素のまんまな感じでしたもんね(笑)。

尾崎 エリック・クラプトンがさらっとステージに登場して、さらっとギターを弾いて帰る、みたいな。そういう気持ちで僕はやりたいかな。カッコいいし、ロックじゃないですか。

──ツアースタート直前の4月5日には、新作EP「I LOVE YOU」がリリースされます。そこには尾崎裕哉としての新曲に加え、お父様である尾崎豊さんの「I LOVE YOU」「OH MY LITTLE GIRL」のカバーも収録されます。それらが今回のツアーで披露されることに期待している方も多いのではないかなと。

尾崎 最新EPの収録曲ももちろん披露します。父親の曲に関してはこれまで弾き語りで歌ってきたのですが、今回、今までにないアレンジで聴いてもらえることになるのは自分としてもすごく楽しみです。「I LOVE YOU」という曲に関しては、自分のオリジナル曲よりも長く歌ってきているのですが(笑)、今回のEPのリリースに際して初めてレコーディングを行ったことで、曲への気持ちの込め方がまた少し変わりました。なので、コンサートでは新生「I LOVE YOU」を聴いてもらえるんじゃないかなと思います。

──では最後に、コンサートを楽しみにしているファンの方へひと言いただけますか。

尾崎 7年ぶりに挑む本格的な弦楽スタイルでのコンサートなので、やはり成長した尾崎裕哉の姿をお見せしたいですね。きっと7年前のコンサートを観てくださった方もいると思うので、そういった方には「あ、あいつ成長したな」と思ってもらえたらうれしいです(笑)。宮本さんを含む、たくさんの方にお手伝いしていただくので、きっと素晴らしい、楽しいコンサートになると思います。ぜひ楽しんでください!

プロフィール

尾崎裕哉(オザキヒロヤ)

1989年東京都生まれ。2歳のときに父でありシンガーソングライターの尾崎豊と死別。その後母とともにアメリカに移住し、15歳までボストンで過ごす。帰国後にバンド活動を開始し、大学生活と並行しながらライブや楽曲制作などを続ける。2010年から2013年に「CONCERNED GENERATION」、2013年から2015年に「Between the Lines」と、InterFMのレギュラー番組でナビゲーターを担当。大学卒業後、2016年7月にTBSテレビ系「音楽の日」で初のテレビ生出演を果たし、大きな注目を浴びる。同年9月には東京・よみうり大手町ホールで初のホールコンサートを開催し、初の配信シングル「始まりの街」をリリース。2017年3月に初のCD作品「LET FREEDOM RING」、2020年10月には初のフルアルバム「Golden Hour」を発表した。弾き語りワンマンツアー「ONE MAN STAND」や、バンド編成でのツアー「INTO THE NIGHT」、フルオーケストラと共演するビルボードコンサートなど、さまざまなスタイルで精力的なライブ活動を行い、2023年4月には弦楽アンサンブルコンサートツアー「尾崎裕哉 Strings Ensemble Premium Concert 2023」がスタートする。