ナタリー PowerPush - OverTheDogs
すべての“循環”を歌う メジャー1stアルバム「トケメグル」
生きてて経験することのうち9割以上は悲しいことだと思ってる
──アルバムの最後に収められているのは「本当の未来は」という曲ですよね。この曲を最後に置いたことには、どんな意味を込めたんでしょう。
恒吉 映画みたいに、ちゃんとアルバムを完結させたかったんです。暗いものを暗いまま表現して、そのまま終わるようなものはあまり好きじゃなくて。やっぱり、最後は希望があってほしい。未来は見えないけど、それは想像したら何が起こるかわからないってことなんですよね。鉄の塊である飛行機が飛んでるって時点で、僕の中ではなんでも可能になるって思っていて。そういうふうに想像したら、いつか悲しいことがスイッチひとつで解決してしまう世界ができるんじゃないかと思って。そういう希望を、最後にはちゃんと歌いたいと思ったんですよね。
──なるほど。
恒吉 基本的に、生きてて経験することのうち9割以上は悲しいことだと思ってるんです。でも、未来は悲しいことよりも楽しいことが増えていったらいいなって。そう思って書きました。
──そう思ってるからこそ、悲しみだけにスポットをあてて終わるのは嫌だった、と。
恒吉 そうなんです。悲しいものを悲しいまま歌ったら、悲しいじゃないですか。でも悲劇を楽しいことに置き換えると喜劇になる。ポジティブなことだけ歌うと、ただのニセモノになってしまうけれど、悲しいことをわかってる上で「楽しいぜ」って言えば、喜劇になるから。
──そういうことをやろうと思ったときに、歌詞だけでなく、自分の歌声が武器になってるという感覚はあります?
恒吉 それはどうなんですかね。最近だいぶ慣れてきましたたけど、自分の声にコンプレックスはあります。武器になってればいいんですけど。
樋口 コンプレックスがあるからこそ、聴く人により寄り添えるかと思います。
星 自信満々にこんな歌詞を歌われたら、逆に嫌かもね(笑)。でも、実際、その不安定さがよかったりするんで。
すべてのものが循環していけばいいなって思う
──OverTheDogsの曲って、メロディはすごくシンプルで、童謡のような曲もありますよね。
恒吉 それはまさにそうですね。それはもしかしたらある意味売れ線じゃないのかもしれないと思うんですけれど、でも、子供が聴いても歳をとった人が聴いても「いいな」と思えるメロディが、俺は普遍的だと思うんですよ。例えば山口百恵さんとか、ブルーハーツとか、そういう曲が普遍的だと思う。「20代の女性に」とか「男の子に」とか、ターゲットを狙えばソリッドでカッコいいものができたりするのかもしれないですけど、そういう曲を書こうとはあんまり思ってない。童謡っぽいというのは的を射ていると思います。そういう感覚でメロディや歌詞を書いているので。難しい言葉を使わないで歌詞を書きたいというのもそこで。歌詞も童謡でいいと思うんです。
──なるほど。
恒吉 絵本ってすごいなって思うんですよね。あれだけシンプルで言葉も少なくて、でもしっかり感動する絵本がある。丸一日考えてしまうくらいのものもある。なんか、自分の曲もそういうものでありたいんですよね。小難しいことを並べるんじゃなくて、単純な言葉なんだけど、なぜか感動する。「俺だったらこのときどうするだろう?」って考えさせたりする。うん、絵本のようでありたいという感じはあります。そういう強さにずっと憧れているところはありますね。
──ちなみに、アルバムの「トケメグル」というタイトルは、どういうところからつけたんでしょう?
恒吉 これは造語なんですけれど。例えば氷が溶けたとに、それは消滅するんじゃなくて、水になって僕らの体の中を巡っていくように、自分の中で抱えている問題も、溶けたときに、新しい発想が生まれてまた巡っていく。そういう意味で「溶け巡る」です。命もそういうふうに循環していけば寂しくないなって。「命」なんていうと宗教っぽいかもしれないけど、すべてのものが循環していけばいいなって思うんです。
──そう思ったことが、アルバムのストーリーを象徴するひとつの言葉になっている。
恒吉 そうですね。内容が、思いっきりシンプルでわかりやすくなってるから、タイトルぐらいはちょっと遊んであげようという感じです。
──そして、アルバムリリース日の前日には「Golden Circle Vol.16 ジュンスカ×ユニコーン」で日本武道館のステージに立ちますね。
恒吉 デカいですよね。どうしましょう?(笑) でも武道館でやるライブに出られるのはなかなかないことなんで、単純に楽しみですね。
──「ROCKS TOKYO 2011」や「SUMMER SONIC 2011」にも出演し、ライブも順調にステップアップしている感じですけれども。
恒吉 うまくいきすぎて怖いです。大掛かりなドッキリなんじゃないか?って(笑)。でも、武道館もオープニングアクトですけど、ユニコーンもジュンスカも子供ばんどもやっつけようかなって。……やっつけるって言ったら違うか(笑)。
──(笑)。
恒吉 「そういえばあのバンドは誰だったんだろう?」って思い出すようなライブがしたいなと思ってます。演奏もどんどん磨いていきたいし、今よりももっと自然に楽しみたい。余計なことを考えちゃう瞬間がゼロになったときって、エクスタシーの塊だと思う。そこまでいったらいいなと思います。
メジャーデビューアルバム「トケメグル」レコ発ワンワンライブ「解き溶けめぐる」
- 2011年11月11日(金)
東京都 渋谷CLUB QUATTRO
OPEN 18:00 / START 19:00
料金:前売2800円 / 当日3300円(共にドリンク代別)
チケット販売中
「トケメグル」レコ発ライブツアー「解き溶けめぐる」
- 2011年12月10日(土)
大阪府 LIVE SQUARE 2nd LINE
OPEN 17:30 / START 18:00
料金:前売2500円 / 当日3000円(共にドリンク代別)
チケット一般発売日:2011年10月29日(土) - 2011年12月11日(日)
愛知県 名古屋APOLLO THEATER
OPEN 17:30 / START 18:00
料金:前売2500円 / 当日3000円(共にドリンク代別)
チケット一般発売日:2011年10月29日(土)
OverTheDogs(おーばーざどっぐす)
恒吉豊(Vo, G)、樋口三四郎(G, Cho)、星英二郎(Key, Cho)、佐藤ダイキ(B)、田中直貴(Dr)によるロックバンド。2002年に東京・福生で結成され、2008年に現在の編成となる。インディーズでシングル「おとぎ話」、アルバム「A STAR LIGHT IN MY LIFE」をリリースしたのち、ドリーミュージックに移籍。2011年10月にリリースのメジャー1stアルバム「トケメグル」は、プロデューサーとして参加した亀田誠治、佐久間正英、いしわたり淳治の手により、バンドの持つポップネスにさらなる磨きがかかった作品となった。