音楽ナタリー Power Push - うたパス Presents「オトガタリ」

Vol.1 大谷ノブ彦(ダイノジ)

ジョージ・ウィリアムズ

鳴ってるのか鳴ってないのかわからない音楽

2014年に「クレイジージャーニー」で訪れたイギリスの海上廃墟の写真。 漫画家の諸星大二郎とともに訪れたパプアニューギニアでの写真。

ジョージ 僕、写真と音楽ってすごく近いなって感じる瞬間があって。例えば昔の写真を1枚見るだけで、その頃の記憶が蘇ってくるじゃないですか。それは音楽にも言えることで、当時聴いてた音楽を1曲聴くだけでいろんなことを思い出すことがありますよね。

佐藤 僕の場合、場所と音楽が結びついてるっていうのはけっこうありますね。「あ、ポルトガルに行ったときになぜかずっとRadiohead聴いてたな」とか。

ジョージ へー! Radioheadはポルトガルなんだ。

佐藤 たまたま何も聴くものがなくて、「Kid A」がiPhoneに入ってたのでずっと聴いていたんです。ポルトガルでは岩と家がくっついてる村とか、ファティマっていうキリスト教の聖地を取材したんですけど、今思うとどこか暗い気持ちだったのかなって。

ジョージ そうなんですね。音楽って、精神を落ち着かせてくれる曲もあれば、今まで知らなかった未知の世界に連れて行ってくれる曲もあると思うんですけど、佐藤さんは海外でどんなときに音楽を聴いてるんですか?

佐藤 僕は落ち着くために音楽を聴くことのほうが多いですね。基本的に海外に行くときは、フィッシュマンズとか、淡々とずっと聴いてられるものを選んでいます。やっぱり飛行機に乗ったりとにかく移動が多いので、あんまり激しいロックとかを聴くと疲れちゃうんですよ(笑)。アンビエントっぽい、鳴ってるのか鳴ってないのかよくわからないぐらいの音楽がちょうどいいんですよね。

ジョージ 現地で聴いて好きになった音楽っていうのはあるんですか?

左からジョージ・ウィリアムズ、佐藤健寿。

佐藤 ああ、変な曲が印象に残ることがありますね。10年前ぐらいにメキシコに行ったときに、バスの中とか、ホテルとか、どこ行っても同じ曲がずっとかかったんです。最初は「流行ってるんだろうな」って、特に興味もなかったんですけど、だんだんそれが頭に染み付いちゃって。最後帰るときには、CD屋で店員さんにうろ覚えのメロディを口ずさんで手に入れましたもん(笑)。

ジョージ いーねー(笑)。今はShazamみたいなアプリがあるけど、当時は口ずさむしかないですもんね。音楽って聴くほど、探るほど、新しい出会いがあるじゃないですか。佐藤さんが撮っている「奇界遺産」もそうかなって思うんですよ。ずーっとこういう世界はあったのに、ただそこに行ってなかったっていうだけで。そういう部分では音楽と似てる。新しい音楽に偶然出会ったときの感動と同じようなものが、佐藤さんの写真にはありますよね。

佐藤 そうだったらすごくうれしいですね。僕のイベントに来てくれた人が「『奇界遺産』を見て○○に行った」とか、「最近くだらないことで悩んでたけど、ロケットとかの写真見てたらどうでもよくなりました」とか言ってくれることもあって、すごくありがたいことだなあと思ってます。

写真集を音楽のアルバムに例えて作ってたとは……すごいなあ。「奇界遺産」には音楽に通ずる感動があるね!

佐藤健寿が選んだ!世界中に連れ出したい音楽

  1. フィッシュマンズ「なんてったの(HAKASE mix)」
  2. クラムボン「サマーヌード」
  3. クラムボン「波よせて @20110930 福岡 博多百年蔵 2日目」
  4. Slave「Are you ready for Love」
  5. Ametsub「Solitude」
  6. Led Zeppelin「Kashmir」
  7. The Internet「Dontcha」
  8. エイフェックス・ツイン「Alberto Balsalm」
  9. Little Dragon「Pretty Girls」
  10. Massive Attack「Protection」
  11. rei harakami「lust」
  12. スティーヴ・ライヒ「Six Marimbas」
  13. A Tribe Called Quest「Can I Kick It?(J. Cole Remix)」
  14. rei harakami「joy」
  15. スティーヴ・ライヒ「New York Counterpoint: Fast」
  1. Penguin Cafe Orchestra「Numbers 1-4」
  2. Qティップ「Life is Better(feat. Norah Jones)」
  3. My Bloody Valentine「When You Sleep」
  4. Radiohead「Everything In Its Right Place」
  5. 岡村靖幸「彼氏になって優しくなって」
  6. クラムボン「Folklore」
  7. D’Angelo and The Vanguard「The Charade」
  8. DJシャドウ & Little Dragon「Scale It Back」
  9. Ametsub「Blotted Out」
  10. Spangle call Lilli line「mai」
  11. Da Lata「Pra Manha」
  12. ブライアン・イーノ「The Lost Day」
  13. The Internet「Get Away」
  14. 女王蜂「売春」
  15. ジェフ・バックリィ「Grace」

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佐藤健寿 選曲

取材で世界中を旅する佐藤がよく聴く楽曲を集めたチャンネル。

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佐藤健寿

武蔵野美術大学を卒業後、渡米。その後、写真家として活動する。世界80カ所以上を取材して撮影した写真集「奇界遺産」「奇界遺産2」が話題となり、TBSで放送中の“伝聞型紀行バラエティ”「クレイジージャーニー」でもたびたび取り上げられる。2015年1月には世界のさまざまな廃墟の写真を収録した「世界の廃墟」、9月には人工衛星で撮影された地球の姿を収めた「SATELLITE」と、自身が監修を手がけた写真集を発売。12月25日には過去10年の旅を集成したフォトエッセイ「奇界紀行」を刊行する。2016年1月2日にはNHKラジオ第1にて特番「ラジオアドベンチャー奇界遺産」を放送予定。

「奇界紀行」
佐藤健寿「奇界紀行」

2015年12月25日発売
1944円 / KADOKAWA

Amazon.co.jp

ジョージ・ウィリアムズ
ジョージ・ウィリアムズ

1970年生まれ。日本とイギリスのハーフ。ラジオDJ、VJ、タレント、ナレーターとして幅広い分野で活躍。InterFM「Ready Steady George!!」やTOKYO FM「COUNTDOWN JAPAN」など多くのレギュラー番組を抱える。


2016年1月28日更新