音楽ナタリー Power Push - ORIGINAL LOVE
はみ出し続けた25年間
ORIGINAL LOVEが25周年アニバーサリーを記念したシングル「ゴールデンタイム」を6月1日にリリースした。表題曲は、熱くソウルフルでありながら軽やかで勢いがあり、まるでORIGINAL LOVEの歴史と田島貴男の生き方を1つに集約したようなナンバーだ。田島はこの曲で、過去を見据えつつもしっかりと前を向き「これからが俺の新しいゴールデンタイムだ」と伝えている。そしてその開けっぴろげなエネルギーは、聴く者の耳にぐいぐいと食らい付いてくる。
今回のインタビューではこの充実のニューシングルに収録された4曲についてはもちろん、この4月にcero、ペトロールズという世代を越えたバンドを迎えて開催されたORIGINAL LOVE主催のフェス「Love Jam」についてや、25周年を迎えての心境、若い世代のアーティストへの思いなどを大いに語ってもらった。
取材・文 / 松永良平 撮影 / 相澤心也
ネオアコを日本で初めてやった
──先日のORIGINAL LOVE主催としては初めてのイベント「Love Jam」(2016年4月15日に東京・Zepp DiverCity TOKYOで開催)、僕も観に行きました。
ありがとうございます。実は、自分が一緒にやりたいバンドとだけの対バンイベントっていうのは、今までずっとORIGINAL LOVEではやったことがなかったんですよ。そういうことを自分で企画してやりたい、と思ったので、ceroとペトロールズに出てもらうようにお願いしました。
──世代の異なるバンドとの縦軸でのつながりを提示する感じになっていたのが興味深かったです。
そうですね。わりと近い世代の人たちと一緒にやる機会は多いんで、むしろ普段なら僕と共演しないような人たちとのライブをブッキングしちゃおうと。ceroとペトロールズに関しては、世代は違うけど音楽を聴いて自分と共通する感覚があると思ったし、そういうバンドとやりたかったんです。3バンドともそれぞれの個性があるけど、まったく色違いなわけではなく似た部分のある音楽を志向していて、かつ世代ごとに違う感性をもってアプローチしてる。そういうコントラストも出てましたよね。ただ単にエンタテインメントなだけではなく、音楽的なショーケースを提示できてたんじゃないかなって。自分の予想以上に音楽的高揚感のあるイベントになりましたね。僕は司会もやったし、楽しかった(笑)。
──cero、ペトロールズと田島さんが1曲ずつ共演したのもうれしいサプライズでした。
直前に決まったんですよ。当初はあんまり考えてなかったんですけど、1週間くらい前に「やっぱりやろうよ!」って。それぞれに僕が連絡して強引に歌わせてもらったんです。
──ceroでは「Summer Soul」、ペトロールズでは「ホロウェイ」に参加されてました。最後はORIGINAL LOVEの「The Rover」にペトロールズの長岡(亮介 / Vo, G)さんがギターで参加して。
そういうこともあんまりやってこなかったので、面白かったですね。
──ceroにしてもペトロールズにしても、あらゆるジャンルや流行にあまりフィットしないで自分たちの信じる音楽をやってきたバンドだと感じるんです。今はそれぞれ人気がありますけど、同時にどこかはみ出してる感もあるというか。ORIGINAL LOVEも1990年代に「渋谷系」として括られていましたけど、そこは通ずるものがあると思っていて。
そうなんです! みんな、どこにも含まれてないんですよね。ペトロールズは3人だけで、音がスッカスカなんだけどすごく複雑なことやってる変なアンサンブル。あれが面白い。ceroは去年、アルバム「Obscure Ride」を聴いて、すごくよかったんですよ。ceroの髙城(晶平)くんと話したら、「最初はスフィアン・スティーヴンスとかアリエル・ピンクとか、2000年前後のアメリカのオルタナティブなシンガーソングライターに影響されて音楽を作っていたんだけど、ディアンジェロとかのブラックミュージックに接近していってこういう音楽になった」って言ってましたね。「確かにそうだな」って音をしてるし、すごく面白いなと思いました。
──洗練性と変態性の同居みたいな意味でのつながりもあったと思います。「Love Jam」の最後にORIGINAL LOVEが出てきたときに、この2組の源流として田島さんがいたということが、あの流れで提示されていたようにも感じました。
そう見ていただけたら、うれしいですよね。そういう思いが伝わったイベントじゃないのかな。
──なおかつ、こういうイベントが成立するのは、田島さんがORIGINAL LOVEとしてずっと活動を続けてきてるからでもあって。
よく続けてますよね(笑)。ポップスであることと自分の音楽性を保つということの両方を葛藤しつつもやり続けてこれたなという気がします。
──今でいうJ-POPとインディーポップの間にあるような感覚を探るというか。
そうですね。ORIGINAL LOVEを始めた当時はまだ「J-POP」という言葉すらなかったけど。バンドスタイルでそういう音楽をやってました。ネオアコみたいな音楽を日本で最初にやったのも僕だったって言われてますけど(笑)。
メジャーデビュー以前の自分の感覚に戻ってる
──今回のシングル「ゴールデンタイム」はORIGINAL LOVE25周年の記念リリースとなるんですが、25年とカウントするということは、田島さんとしてはORIGINAL LOVEのスタートは1991年という意識になるんですね。
そうですね。メジャーデビューが91年なんです。結成したのはその5年くらい前ですけど。でも、今回の「ゴールデンタイム」は、そのメジャーデビュー以前の自分の感覚に戻ってるようなところはあります。Aztec Cameraの「High Land Hard Rain」(1983年発売)をもう1回聴いてみたりして、「こういうサウンドは、メジャーデビューして以降はあんまりやってないな」と思ったんです。改めて聴くと、当時よりも音楽的な知識も増えているので、「Aztec Cameraにはジャズっぽいフレーズもあるし、ロディ・フレイムってジャズのコードの流れを知ってる人なんだ」ということがわかる面白さがありましたね。そういう体験があって、自分が影響を受けた80s’の音楽にもう1回インスピレーションをもらって、今の自分なりにやってみるという、そういうコンセプトでした。
──なるほど。「今からまた俺のゴールデンタイムが始まる」的な意識なのかなと思ったりもしたんですが、思春期にあった音楽的なゴールデンタイムというか、その時期に影響を受けた音楽をもう1回取り出してみるというアプローチでもあったんですね。
そうですね。そこからまたやるぞと。20周年のときもアニバーサリーイベントはやったんですよ。でもそのときは、特にシングルも作らなかったし、自分でもあんまり20周年だっていう自覚はないなって感じでした。それだけ必死だったんですよね。「まだ過去にすがる曲作りをしちゃいけないんだ」と自分の生真面目さが自分に対して言わせていたのかもしれない。もちろん今も必死なんですけど、今はまだ周りが見える必死なんです(笑)。もうちょっと余裕があるし、「それはそれでいいじゃないか」と思える。過去に作ったようなやり方でも、新しい作り方でもOK。だから、今回は25周年をわりと意識して、「昔の自分が作っていたような曲を作ってみよう」ということからスタートしたんです。
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- ニューシングル「ゴールデンタイム」 2016年6月1日発売 / [CD+DVD] / 2160円 / XQKP-1008 / WONDERFUL WORLD RECORDS
- 「ゴールデンタイム」
- Amazon.co.jp
CD収録曲
- ゴールデンタイム
- こどものなみだ
- 朝日のあたる道 in a tuxedo
- ゴールデンタイム(三浦康嗣(□□□)Remix)
DVD収録内容
- ゴールデンタイム(MV)
- ひとりソウルショウのテーマ~フィエスタ(Live 2015年11月29日 渋谷 TSUTAYA O-EAST 田島貴男「ひとりソウル・ツアー 2015」より)
- Hey Space Baby!(Live 2015年11月29日 渋谷 TSUTAYA O-EAST 田島貴男「ひとりソウル・ツアー 2015」より)
ORIGINAL LOVE 25周年 アニバーサリーツアー
- 2016年6月18日(土)宮城県 Rensa
- 2016年6月19日(日)神奈川県 横浜関内ホール
- 2016年6月25日(土)大阪府 梅田CLUB QUATTRO
- 2016年6月26日(日)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
- 2016年7月2日(土)新潟県 新潟LOTS
- 2016年7月3日(日)岩手県 岩手県公会堂
- 2016年7月9日(土)東京都 昭和女子大学人見記念講堂
- 2016年7月17日(日)福岡県 福岡市民会館
ORIGINAL LOVE(オリジナルラブ)
1985年結成のバンド・THE RED CURTAINを経て、1987年よりORIGINAL LOVEとしての活動を開始。1991年7月にアルバム「LOVE! LOVE! & LOVE!」でメジャーデビューを果たす。同年11月発売の2ndシングル「月の裏で会いましょう」がフジテレビ系ドラマ「BANANACHIPS LOVE」の主題歌に採用され全国的に注目を集めた。その後も「接吻 kiss」「朝日のあたる道」などのシングルでヒットを記録し、1994年6月発売の4thアルバム「風の歌を聴け」はオリコン週間アルバムランキング1位を獲得。以降もコンスタントに作品を発表し、柔軟な音楽性を発揮している。近年はバンドスタイルでのライブのみならず、田島貴男1人での「ひとりソウルツアー」や「弾き語りライブ」も恒例化している。2016年6月には、メジャーデビュー25周年記念シングル「ゴールデンタイム」をリリースした。