一番おいしい部分を30秒
──「タタミちゃん」はショートアニメなので、オンエアで流れるエンディングテーマは30秒尺なんですよね。通常アニメのエンディングは90秒であることが多いので、この尺の短さは曲作りに何か影響がありましたか?
小島 30秒であることも僕にとっては追い風で、尺が短いことでより自由に曲作りができたんです。なぜかと言うと、90秒のアニソンにする場合はAメロ、Bメロ、サビすべてを入れて時間内に収めるケースがほとんどですが、30秒だと物理的にそれは不可能なので、「タタミちゃん」の主題歌は曲作りをしたうえで、一番おいしい部分を30秒だけ使うことができたんです。30秒という制限は、僕にとってはうれしい制限でした。
押切 アニメで流れる30秒尺とシングルに収録されるフル尺では全然曲の印象が違うんですよ。もうイントロから全然違うじゃないですか。
小島 サウンド面で言うと、実はアニメバージョンではミックスまで全部自分でやったんです。「タタミちゃん」に関してはかなりORESAMAに任せてもらった曲でもあるので、自分で1から10まで手がけたほうが気持ちが入ると思ったんです。押切先生が期待してくれた100%のORESAMAを届けたかったんですよね。
ぽん こんなに伸び伸びと音源を作らせていただけることって、なかなかないかもしれないです(笑)。すごく楽しい制作でした。
押切 うれしいですね。ORESAMAさんに書いてもらえるわけですから、僕としてはもう楽曲に関しては何も心配していなくて。むしろ2人に楽しんでもらえるかどうかが僕にとって気がかりだったくらいなので。今日お話しさせていただいて、どうやら楽しんで曲を作っていただけたことが確認できてよかったです。
音楽ではなくて音に集中
──「タタミちゃん」の劇中に流れる音楽も小島さんが作曲しているんですよね?
小島 はい。初めてアニメの劇伴音楽というのを作らせていただきました。
押切 もしかしたら無茶振りをしてしまったかもしれないのに、作ってもらった劇伴がすごくいいんですよ。
小島 実は押切先生が作ったパイロット版のアニメには、先生が作った自作のBGMが使われていたんです。音楽で言うとデモ音源みたいな形ですね。
押切 僕、自分で音楽を作るのも好きで、パイロット版では映像からBGMまで全部自分で作ったんです。それがちょっとEDMっぽい感じのBGMだったんですよね。おどろおどろしい雰囲気なんだけど、音楽がなんかおしゃれ、というのが僕の理想にあったので。正式に劇伴を作るならば、それも一緒にORESAMAさんにお願いしちゃえ!と思って。
小島 これまで培ってきた自分の引き出しにはないオーダーだったのでまずは気分から制作に入ろうと思い、劇伴を作る前に妖怪の画像を集めるところから始めました。それでパソコンの画面いっぱいに妖怪の画像を出しながら、自分が感じる“妖怪っぽい音”を1つずつ試していきました。
押切 本当はね、アニメの「ゲゲゲの鬼太郎」で流れるような曲もいいなと思っていたんですよ。でも変に注文をしちゃうとよくないかな、と思って言わなかったんですけど、劇伴が上がってきたら「ゲゲゲの鬼太郎」っぽい曲が上がってきて。もうビックリして。
小島 直接的に「ゲゲゲの鬼太郎」の曲を参考にしたわけではないんですけど、人がおどろおどろしさを感じる音に共通したものがあるかもしれないですね。今回はギロとか特殊な楽器も使って、いろんなアプローチに挑戦してみました。
ぽん 私、カラオケの回でタタミちゃんが歌う「金縛りの歌」が大好きなんですよ。あの曲は押切先生が作った曲なんですよね?
押切 うん。自作の曲なんだけど、タタミちゃん役の井澤(詩織)さんに無理矢理歌わせちゃった。自分の曲を声優さんに歌ってもらえる機会なんてほとんどないから、すごいことしちゃったな(笑)。
──アニメのジングルも小島さんが制作したんですよね?
小島 はい。ジングルに関しては押切先生が作ったパイロット版の音を参考にしながら作ったんですけど、そもそもそのジングルが一発で耳に残るいい音だったんですよ。制作を預かったからにはこれに勝るものを作らなければならないのでけっこう苦心しました。妖怪っぽい音と、ORESAMAらしい音色をどう混ぜ合わせられるかをすごく意識して。音楽ではなくて音に集中して作ること自体が珍しいので、貴重な経験をさせていただきました。
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