音楽ナタリー Power Push - ORESAMA

取り戻した自信

「やっぱり歌が好きだ」と再確認

──先ほど「1日に3、4曲投稿していた」と言っていましたが、1曲投稿するのに3、4時間かかるのにも関わらず、それだけの楽曲を投稿するというのは、アップする曲数を自分への課題にしていたんですか?

ぽん 最初からではないんですけどアプリのトップページにある「新着作品一覧」に上がれば上がるほど聴いていただける機会が増えるんですよ。つまり知らない人にも聴いてもらいやすくなる。だから、バンバン曲を上げていこうと。

──それにしても半年で400曲って並大抵ではできないことですよね。

ぽん(Vo)

ぽん 最初のほうは泣きながら歌ってました(笑)。重ね録りもできるんですけど、録音を重ねていくとオケが小さく聞こえちゃったりするので、私はできる限り一発録りで録っていて。とにかく何度も録り直していました。

小島 全部録り直すんだ? それはすごい。

ぽん だから本当に時間がかかるんです。大変でした。

──始めたときから、続けていくというビジョンはあったんですか?

ぽん いや、どれくらい続けるとか、何曲上げるとかあんまり考えてなくて。気付いたら400曲超えた、みたいな感じでした。

──これだけ続けられたのはどうしてなんでしょう?

ぽん 「nana」には投稿した作品にほかのユーザーがコメントを付けられるんですけど、「本当にうまいね」とか「声がかわいいね」とか、そういうコメントを付けてもらえて本当にうれしかった。「そうか、こうやって褒められるのがうれしくて、私は歌を好きになったんだな」って思い出して。「やっぱり歌が好きだな」って思い出させてもらったというか、再認識しました。

──プロとしてメジャーフィールドで活動しているうちに、歌が好きだという気持ちを失っていた?

ぽん 失ってはいなかったんですが、契約を切られたり、思うように活動ができなかったりしたので、どんどん自信がなくなっていってしまって。「私の歌じゃダメなのかな」とか「もしかしたらボーカルを代えたらORESAMAはもっといけるのかな」とか考えちゃってたんですけど。でも「nana」への投稿を経て、「私は自分が歌いたいから今ここにいるんだ」って再認識しました。

「この思いを形にしたい」から生まれた新曲

──それまで正体を明かさずに「nana」での投稿を続けていたぽんさんが、今年6月に「nana」で正体を明かしました。あのときはどういう気持ちだったんですか?

ORESAMA

ぽん 「nana」のユーザーさんにも“ORESAMAのぽん”として曲を聴いてほしくて、ブログを書いたんですけど、どう思われるのかなと心配もありました。これまで「思うように活動ができない」とかそういう暗い思いを出したことはなかったので。あと「nana」のユーザーさんからも「なんだ、プロかよ」って思われるかもしれないと思って、前日は全然眠れなかったんです。でもいざ投稿してみたら本当に温かいコメントばっかりだったんです。「そうだったんだね、でも応援するよ」「これからも聴きます」って。それがすごくうれしくって、何か形に残したくなって作った曲が「『ねぇ、神様?』」なんです。

──あの発表のあとに「『ねぇ、神様?』」ができたんですね。

ぽん そうなんです。自分の歌を聴いてほしくてもがいてた自分の気持ちや、温かく受け入れてくれた「nana」ユーザーさんやファンの方への感謝の気持ちを形にしたいと思って、小島くんに相談したのが始まりです。

小島 相談というか、歌詞を持ってきて「これで曲を作ってくれませんか?」って。歌詞を読んだらすぐに曲調やメロディが浮かんできてあっという間に曲ができました。今までもらってきたぽんちゃんの歌詞の中で一番赤裸々で。偉そうな言い方ですけど「あ、ひと皮むけたな」と(笑)。

ぽん 偉そう偉そう!(笑)

小島 でも本当に何かがコロッと変わったので「すごいな」と思いましたよ。

──小島さんもおっしゃっていましたが、私も読ませていただいてこれまでのORESAMAに比べてずいぶんストレートな歌詞だなと思いました。ここまで赤裸々に自分の思いを出すのって勇気がいると思うのですが。

ぽん 確かにすごく勇気がいることでしたが、それでもこの赤裸々で素直な思いを書くことが、私の使命だと思って勇気を振り絞りました。この気持ちを形にしたいと思って始まった曲だったので。

小島 赤裸々なんだけど、きちんと歌詞として成立していて「この人はやっぱり歌詞を書く人なんだな」って再認識しました。

──「nana」は歌うツールなのに、そこで歌詞にも変化が現れるというのは不思議ですね。

ぽん 「nana」での半年の修行を通じて、心も強くなった気がします。

──先ほど小島さんは「歌詞を読んですぐに曲調やメロディが浮かんだ」とおっしゃっていましたが、具体的にどのようなイメージが浮かんだんでしょうか?

小島 ちょっと前から「切ない歌詞を切ない曲調にしてもORESAMAっぽくないよね」って話をしていたので、今回はもう明るい曲調に乗せるしかないだろうと。ORESAMAが得意とするディスコっぽい曲調がベストだと最初から決めていきました。

──小島さんからこの曲が届いたときはどう思いました?

ぽん 「天才だ!」と思いました。ホントに!

──どういうところに天才さを感じました?

ぽん 私は小島くんの作るORESAMAのサビがいつも好きなんですけど、「『ねぇ、神様?』」のサビもすごいキャッチーで。「これはたくさんの人に届くな」と思いました。

ORESAMA(オレサマ)
ORESAMA

ぽん(Vo)と小島英也(programming, G)による男女2人組ユニット。2013年に「The 6th Music Revolution Japan Final」で優秀賞を獲得し、2014年12月にテレビアニメ「オオカミ少女と黒王子」のエンディングテーマ「オオカミハート」でデビューを果たした。2015年12月に1stアルバム「oresama」を発表。同時にぽんが音楽SNSアプリ「nana」にて正体を隠して投稿を始める。6月には正体を明かし、以降は「nana」での人気ユーザーとして活躍。2016年9月、「nana」への思いを込めた新曲「『ねぇ、神様?』」を発表した。