音楽ナタリー Power Push - ORESAMA
90年代生まれの2人が目指すレトロフューチャーとは
ぽんは憧れられるような存在であってほしい
──ぽんさんは小島さんの隣にいて、トラックメーカーとして覚醒していく姿を目の当たりにしたと思うんですけど。
ぽん そうですね。曲がどんどん進化していって。やっと彼の曲が日の目を見るときが来たんだなと思いました。私はやっぱり1回聴いただけで覚えられるようなキャッチーなメロディが大好きだし、そこにキャッチーな歌詞も乗ってることがORESAMAにとってマストだと思っているので、そういう歌詞を付けていきたいです。
──ライブの理想像については?
小島 楽曲のビジョンは明確になってるんですけど、ライブに関してはまだまだ試行錯誤してます。最終的にはぽんちゃんが黒人のプレイヤーをバックに従えて歌うという理想像があるんですけど(笑)。それはまだ現実的ではないので。
ぽん そうだね(笑)。
小島 まずは、やっぱり30分から1時間のステージでぽんちゃんがお客さんに憧れられるような存在であってほしくて。僕の曲を歌わされてるのではなくて、歌ってやってあげてるんだぞくらいのオーラを出してほしいという願いがありますね。
ぽん がんばります! 最初はアコギ1本でライブすることから始まって、それからダンサーを入れてみたこともあったりして。今はベースのサポートの方が入っていて、この前のライブ(12月3日に東京・WWWにて開催された「GIRLS DON’T CRY vol.2」)ではDJの子を入れたり、ホントにまだまだ試行錯誤していて。最初は私が踊ったりもしていたんですけど、そうなると今度は歌に集中できないという問題が発生して。でも、この前のライブでは歌に集中できたんですね。これまでで最長の40分のライブだったんですけど、今までで一番楽しかったです。でも、まだまだ課題はありますね。
小島 音源もライブもいかに現代的なポップミュージックとして提示できるかだと思うので、まだまだやれることはありますね。
“あの頃”のチープさと現代のリッチ感
──UTOMARU氏を起用したアートワークも、2人が抱いている1980年代から90年代の日本のポップカルチャーへの憧憬を、いかに懐古主義的なものではなく、現代的に落としこむかがキーワードになっていると思うんですけど。
ぽん これ、私のバイブルなんです(と、言ってバッグから「うる星やつら」のコミックを出す)。もちろん、リアルタイムではないんですけど、おじいちゃんの家に全巻あって、子供の頃に読んでいたんです。大人になって自分でも全巻そろえて。当時のハチャメチャな感じというか、テレビアニメでも裸が出ちゃったり、そういう感覚が今にはないなと思って憧れるんですよね。
──今の10代、20代が当時のカルチャーに食指が動くのは、独特のアナログ感というのもあると思うけど、がんじがらめの規制がなかった時代だからだと思うんですよね。
小島 それもあると思いますね。チープで刺激的というか。それが純粋にカッコいいと思う。ただ、サウンド面ではあの時代のチープさを追い求めちゃうと、現代のリスナーには受け入れられないと思うので。現代のポップミュージックにするからには、現代に通じるリッチ感も不可欠だと思うんです。ローファイな音にしすぎないとか、低音をしっかり出すということもそう。あくまで今の若者が聴きたいと思うポップミュージックを追求したいんですよね。
──ORESAMAのアーティスト像は一見、バーチャル感が強いと見られる向きもあると思うんですけど、その実、とても情熱的なポップミュージックでありラブソングとしての聴き応えがある。
小島 それはうれしいです。このアルバムもジャケットのイラストからしたらバーチャルな感じが強いけど、中に入ってる曲はすごく人間的だと思います。「迷子のババロア」や 「密告テレパシー」、「カラクリ」なんかはORESAMAにとってはダークめな曲で、それと同時に僕らの本質が出てる曲だとも思います。やっぱり人間だから、音楽を作ってると自然とダークな曲も生まれるんですよね。
ぽん わたしの歌詞は恋愛マンガみたいなポップな歌詞が多いんですけど、小島がローテンポな曲を作ってくると、自然と私の歌詞も自分の内面が出るんですよね。そういう曲をこのアルバムに入れられた意味はすごく大きいと思います。だからこそ、名刺代わりのアルバムだと言えるし。今後はポップな曲にももっと切ない歌詞を乗せていきたいとも思っています。
──最後に今後の展望を聞かせてもらえますか。
小島 圧倒的な代表曲を作りたいですね。現段階では「オオカミハート」が代表曲だと人に言ってもらえるんですけど、もっともっと世間を巻き込めるような曲を作りたいです。そして、いつか日本の音楽シーンの頂点に行きたいです。時代のアイコンになれるような。
ぽん 私もそうですね。たとえばドリカム(DREAMS COME TRUE)さんの曲は、いろんな世代のリスナーがその曲を聴いていたときのことを思い出して、懐かしくなったり切なくなったりする魅力があると思うんです。ORESAMAの曲も私たちの世代のそういう存在になるようにがんばります。
収録曲
- KARAKURI
- オオカミハート
- Morning Call
- Listen to my heart
- ドラマチック
- 迷子のババロア
- 密告テレパシー
- 恋のあじ
- あたまからモンスター
- 乙女シック
- カラクリ
ORESAMA(オレサマ)
ぽん♀(Vo)と小島英也♂(programming, G)による男女2人組ユニット。2013年に「The 6th Music Revolution Japan Final」で優秀賞を獲得し、2014年12月にテレビアニメ「オオカミ少女と黒王子」のエンディングテーマ「オオカミハート」でデビューを果たした。2015年12月に1stアルバム「oresama」を発表。エレクトロファンクをベースにしたサウンドやUTOMARUを起用したアートワークで人気を集めている。