「トカゲのおっさん」＝「TEN」!?

──YOHさんも作曲されますが、曲作りにおいてNAOTOさんとの違いを感じることはありますか？

YOH　感じますけど、自分にはないものを持ってるから、それは勉強になります。テレビの例えになるけど、みんな「ごっつええ感じ」が好きなんで、ツボはわかるというか。

──メンバーの共通項は「ごっつええ感じ」ですか（笑）。

YOH　わりと世代的に多いですね。

YAMATO　同年代だと、「ごっつ」ネタに飲み会ができるくらいですよ（笑）。

NAOTO　マニアックなコントも多かったしね。「トカゲのおっさん」とか名作ですよ。あれはね、なかなか深いんですよ。観る年代によって捉え方も変わるんです。

YAMATO　今の子供たちにも見せるべきですよ！

HIROKI　今日は「お笑いナタリー」の取材？（笑）

全員　ははははは（笑）。

YOH　まあ、俺らの曲は、音楽だけじゃなくお笑いとか、日々の出来事とかいろんなものに影響を受けて作られますからね。

YAMATO　十何年もこのメンバーと一緒にいるから、音楽だけじゃなく、プライベートな部分もわかった上での関係ですからね。各々のキャラクターがちゃんと立ってるし、それが曲にも表れているのかなって。曲の振り幅の大きさにもつながってるし。

──メンバーそれぞれの個性をより尊重できるようになってきた？

YAMATO　そうですね。もとからそういう関係でもあるし、自分にないものにうまく乗っかろうって考えますからね。

──音楽の話に戻しますが、「弾丸ブギウギ♂♀」はRYOさんが書いた曲ですね。ここではにぎやかでストレートな部分が出ています。

RYO　ある程度曲が出そろった中で、ほかのメンバーが作ってないものを作ろうと思ったんですよ。俺はメンバーの中でシュールさを一番持ってない人だし、わかりやすいものが好きだから。

NAOTO　RYOは「ごっつええ感じ」というよりドリフなんですよ。

──RYOさんは志村けん派だと。

NAOTO　そうなんですよ！

RYO　ははは（笑）。まあアルバムの中でも“大勢感”が出てる曲がいいなと。ビッグバンドと一緒に広い会場で鳴らすような雰囲気を意識して作りました。あとテンションが高いままサラッと終わるような曲にしたくて。ORANGE RANGEではロカビリーをやってきてないから、それをやったら面白いんじゃないかとも思ったんです。

“いい曲”じゃないものを作りたい

──終盤の8～10曲目の流れもいいですよね、落ち着いた曲が並んでいて。「Sky High」はYAMATOさんが書いた曲だそうですね。

YAMATO　はい。草原で大合唱してるようなイメージで作りました。

──この曲も明るいのか、切ないのかわからない不思議な聴き心地で。勝手にこの曲のことを“メランコリックアッパー”って名付けてるんですが。

NAOTO　いいね！ 曲名をそれに変えます！

──いやいや（笑）。

NAOTO　ビート感はあるけどメロディが切ないから、“メランコリックアッパー”なイメージなんでしょうね。

──次の「ひと雫」は、YOHさんが書いたバラードです。

YOH　最初に風景が浮かんだんですけど、その先が形にできなくて完成するまですごく苦しみましたね。1年ぐらいかかりました。バラードを作ろうという気持ちはなかったんですけど、最終的に落ち着いた曲になりました。

──アルバムの流れの中で聴くと、この曲も確固とした色が出てますね。「安全な暗闇」とつながる部分がある。

YOH　そう言ってもらえるとうれしいです。曲が出そろったときに、曲順はまだちゃんと決まってなかったんですけど、「安全な暗闇」の歌詞とつながる雰囲気があって。それで「ひと雫」は「安全な暗闇」の前に置きたいと提案しました。歌詞をバッと読んだだけではわからないと思うけど、この2曲は俺の中では密接につながってる感覚がある。そこも味わってほしいですね。

──そしてラスト曲「安全な暗闇」の歌詞は、今作の中でも特にわかりづらい内容ですね。

NAOTO　そうですね。「安全な暗闇」に関しては、その曲名自体が矛盾を孕んでいるし、ほんと意味のわからない曲にしたくて。作る前にもみんなに言ったんですよ。「まったく意味がなくて、“いい曲”じゃないものを作りたい」って。今回のアルバム自体を尻すぼみにしたいというか、フワフワさせて、何も解決しないまま終わらせたくて。そのためだけに作りました。

──聴き手を混乱させたい？

NAOTO　そう。「ええじゃないか」も、乗り終わった後にヘンな気持ちになるんですよ。「俺、何をされてたんだろ」って。それと同じように、「TEN」っていうアルバムを聴いて「あれはなんだったんだろ」という気持ちになってもらえたらなと。特に「安全な暗闇」は「トカゲのおっさん」に近いかも。

YAMATO　「ごっつええ感じ」につなげるのかよ！

NAOTO　「トカゲのおっさん」って最初のほうの話はわかりやすいんですよ。でも、最後のほうの話は意味がわからないんです。シュールだし、哀愁もあるし。だけど、あの最後がいいんですよね。

──モヤっと終わらせて、聴き手自身に考えさせたい？

NAOTO　そうそう。結論や意味はあなたたちが考えてくださいって。今回は何かに物申すとかではなく、曲や音のキャラクターをハチャメチャにすることだけを考えていたし。

──そういう意味では、曲を聴いて考えさせられたり、ドキッとさせられたり……単純に割り切れないいろんなものがアルバムの中に詰まってますね。だから、今作は考えさせるし、聴いたあとに心に深く残る。

NAOTO　はい。でも、「ごっつええ感じ」のコントみたいにシュールな曲もあれば、ドリフのコントみたいな「弾丸ブギウギ♂♀」という曲もあるし（笑）。自分たちのイメージ通りの作品が作れた自信はあります。