ナタリー PowerPush - ORANGE RANGE
テーマは「バンド解体」 意欲作をNAOTOに迫る
メモを冷蔵庫に貼ってます
──自分たちでレーベルを始めてから、ORANGE RANGEはとても身軽に、フットワークが軽くなったと感じてたんです。傍から見ててすごく楽しそうだなって。結果、NAOTOさんがより多作になったようにも思うんです。提供曲とかソロの曲とかも増えたように見えますし。
自分の名前を出すことが増えたからかな。作るペースはあんまり変わってないんですよ。
──なるほど。それこそHOME MADE 家族やCHI-MEY、LOVERSSOULなどの提供作品や、delofamilia、それにソロワークと、カラーの違う楽曲がたくさんリリースされたことで、NAOTOさんは“引き出し”をたくさん持っているんだというのがこの2年で広く知られるようになったとも思うんです。そういう、プロジェクトによって制作するテイストを変えているという意識はあるんでしょうか。
うーん、1つの作品を作り上げた段階で、漠然と「次はこれをやりたい」「こういう曲作りたい」って気持ちにはなります。次のビジョンとも言えない、本当にちっちゃい気持ちなんですけど。そういうのを積み重ねていくうちにまた「次はこういうのがいいかも」って考えが生まれたり。それをずっと繰り返してる感じなんですよ。だからすごく意識的っていうわけではなくて。
──人に提供する曲と自分の曲とで、制作の出発点に差はあります?
人の場合はオーダーのようなものがあったりするんです。「この曲のサビみたいな感じで」とか「このバンドはこういうタイミングだからこういう曲が欲しいんです」とか。それでディスカッションしながら作り上げていくんですけど、ORANGE RANGEとかソロとかdelofamiliaの場合は、ふとしたひらめきというか……。「今日は、これ」みたいな思いつきの延長線上から作り始めてるような。
──なるほど。ちなみにその思いつきってどんなときに?
それはもう10年前から変わってなくて、自宅のトイレとかで思いつくことが多いです。トイレがだめだったらお風呂とか(笑)。それでもだめだったら寝る。それでも思いつかなかったら、そのアイデアからは作らないことにして、ほかのやりたいことに取りかかるんです。
──そういう制作方法だと、曲を作り貯めることってできないんじゃ?
うん、僕は曲の作り貯めはしない派なんです。でも、やりたいことのメモはしてる。それもなんか「4つ打ち」とか「バラード」とか、ざっくりとしたメモで。
──音のメモですか?
全然。ペンで殴り書きしたメモです(笑)。冷蔵庫の扉に貼るような。
──それは(笑)。NAOTOさんちの冷蔵庫見てみたくなります。
中に入ってる食品の賞味期限の横に貼ってありますからね。
サビは熱くしないでくれ
──「NEO POP STANDARD」の収録曲はどれも、バックトラックがスカスカですよね。音が薄く作ってある。HOME MADE家族との座談会でも音数が少ないことについて話されていましたが、これはつまり、今NAOTOさんの中のトレンドが音を引いていく方向に向いているのかなと思っていて。今、世界的なダンスミュージックの流れも、どちらかと言うと引き算傾向にありますよね。そのあたりを意識されているのか、それとも音を少なくするのがNAOTOさんにとって自然なことだったんでしょうか。
自然ですね。加えて、ORANGE RANGEの場合はメンバーから「引いてくれ」って要望もよくあるんですよ。最初のデモでは結構ごちゃごちゃしてることが多いので。あとはレコーディングしながら「これは歌いにくいな」「じゃあ引いちゃえ」とか。こういう歌が入ったら、もっと音をすっきりさせたほうが歌詞が聞こえやすいな、とか判断することもあるし。
──それにしてもすごい音数の少なさですよね。ある4小節はボーカルとシンセドラムしか鳴ってないとか。
でもね、トラック数自体はそんなに普段と変わってないかもしれないです。そんなに多いタイプではないので。それでも、アレンジやレコーディングのときに引き算するのは毎度のことですね。なんか歌詞が入ってくるといらなくなってきちゃう音が出てくるというか。
──歌詞はHIROKIさん、YAMATOさん、RYOさんと共同で作るんですよね。じゃあ、この言葉を入れるからこの音がいらない、という判断も4人で?
そうですね。メールでやり取りするんで、できた歌詞をメールで見て、「俺ここ直すよ」とか。
──みんなで顔を付き合わせて作業はしないんですか?
今回だけしなかったです。いつもはホワイトボードを用意してみんなで殴り書きして、あーだこーだ言いながら作ってくんですけど、今回はさっき言ったようにバンドっていうのを一回崩したかったんで。作り方からして違うアプローチを。
──意図的に共同作業をなくしたことで、差し障りはありました?
いや、なんか意外と好評で……(笑)。「やりやすいわあー」って。やっぱり、客観的に見れるから。今まではみんな、自分が言いたいことを全部書いてたんですよ。全体のバランスを見ずに。ところが今回はメールベースだったから、歌詞が活字になって改めて送られてくることで「こういう流れなんだ」って客観的になれたらしくて。
──では、ほかのメンバーからは「やりづらい」と言われたことはありました?
全部打ち込みなんで、ボーカルの3人はレコーディングのときに歌が走ってしまうのに苦戦してました。4つ打ちの曲とかでは特に。まあ最初の1日、2日で慣れたみたいですけど。でも3人の声が重なるところはどうしても誰かがずれたりして、そこらへんは苦労してましたね。バンドで演奏してるときは、走ってる人もいるけど「それがカッコいいじゃん」って感じだったんですよね。「俺だけ遅れてない?」って言っても「これが一番いいんだよ」って。
──なるほど。
あのね、制作当時は気付かなかったんですけど、別の取材を受けたときにHIROKIが、俺に「サビは熱くしないでくれ」って言われたって話してて。俺、その記憶ないんですけど(笑)。サビの歌詞はHIROKIが書くことが結構多くて、それでずっと言ってたらしいんですよ。「サビは抽象的に」って。その代わり、AメロとかBメロでは自分が熱くなりたければなっていいって。歌入れのときもおんなじように言ってたみたいです。
CD収録曲
- Restart
- Subway
- Soul to Soul
- Hello Sunshine Hello Future
- Warning!!
- Lion
- Dry Hard
- Morning View
- Deep Blue Sea Flower
- Baby Baby
- Backpack
- Magical Mystery Hunter
- Anniversary Song ~10th~
DVD収録内容
- Hello Sunshine Hello Future
- Anniversary Song ~10th~
- オレンジレンジ10周年緊急記者会見
- -Bonus Movie- How to dance「Anniversary Song ~10th~」
- -Bonus Movie- Making of「Anniversary Song ~10th~」
ORANGE RANGE(おれんじれんじ)
沖縄出身・在住の5人組バンド。中学の卒業パーティをきっかけに結成。2001年に現在のメンバーが揃い、地元・沖縄にある米軍のライブハウスを中心に活動を続ける。2002年2月にアルバム「オレンジボール」をインディーズから発表。以後、沖縄以外でのライブも頻繁に行うようになり、2003年6月にシングル「キリキリマイ」でメジャーデビューを果たす。続く2ndシングル「上海ハニー」がオリコンウィークリーチャート5位を記録。その後も「ロコローション」「花」「ラヴ・パレード」「キズナ」など、数々のナンバーワンヒットを飛ばす。2010年7月に自主レーベル「SUPER ECHO LABEL」を設立し、10月にアルバム「orcd」をリリース。2012年2月にはSPEEDSTAR RECORDSと提携を開始し、4月にニューアルバム「NEO POP STANDARD」を発表した。