音楽ナタリー PowerPush - 大森靖子×峯田和伸(銀杏BOYZ)
10年目の邂逅
大森靖子が満を持してのメジャーデビュー。これを記念して、ナタリーでは大森と峯田和伸(銀杏BOYZ)の対談企画を実施した。高校時代から銀杏BOYZの大ファンだったという大森は、ほぼ初対面の峯田を前に何を語るのか。そして話題はいつしかそれぞれの音楽観、ライブ観へ。緊張感とユーモアあふれる2人の対話をたっぷりと味わってもらいたい。
取材・文 / 大山卓也 撮影 / 上山陽介
毎日メールを送ってくる20人の中の1人
──お2人は互いに面識はあるんですか?
峯田和伸 この前、お芝居(峯田出演舞台「母に欲す」)に来てくれましたよね。
大森靖子 はい。
峯田 それでちょっとしゃべったよね。あれ? 前もしゃべったことあるんだっけ?
大森 ええと……。
峯田 ないんだっけ。
大森 高校のときにサインもらおうと思ってライブのあと並んで、サインもらって帰っただけです。
峯田 じゃあこの間が初めてだ。
大森 そうですね。
──大森さん、もしかして今日緊張してます? さっきから峯田さんと目を合わせてないですけど。
大森 いや、無理です。だって。もう……無理ですよ(笑)。
──もともと大森さんが峯田さんのファンだったそうですが。
峯田 なんかメールが来てて。お客さんから。
──峯田さんは携帯のメールアドレスを公開してましたもんね。
峯田 そうです。なんか広まった時期があって。で、その中で毎日メールくれる人が当時20人ぐらいいて、その中の1人。
──いつ頃の話ですか?
大森 私が高校生で17、18歳とかですね。銀杏BOYZが2005年にツアーで愛媛に来たんです。そのときのライブでメールアドレス言ってて、送ってみたら「あ、送れた」と思って。
──メールにはどんなことを書いてたんですか?
大森 当時、私立のわりかしいい学校だったんですけど、サボっててあんまり行ってなかったりとか、あと家でゴタゴタがあって顔がボコボコになってたりとかしてて、完全にヤンキーみたいなキャラになってて。別にそんなわけじゃないのに。
──ふふふ(笑)。
大森 でもじゃあそれでいいやと思って、がんばってそのキャラやってたら疲れちゃって。そういう疲れた感じとか、愚痴とかをずっと送ってました。なんかバイトの店長に告られてめんどくさいとかいうのを、ちょっと文学的にして送ってたみたいな感じです。だから今のブログと一緒ですね。
歌えばいいのにって思ってた
──峯田さんは大森さんからのメールを読んでどう思ってたんですか?
峯田 「この子大変だなあ」って(笑)。
大森 ふふふ(笑)。
峯田 今いくつですか?
大森 26です。
峯田 生き残れたんですね。
──ん? どういうことですか?
峯田 当時メール毎日くれてた20人ぐらいのうち、亡くなった子がもう5、6人いて。親からメール来たりとか。たぶん本当にしんどい人がけっこういたと思うんです、今思えば。でも誰かに毎日メールを送るのってすごいことじゃないですか。力も使うし時間も使うし。そんぐらいのことをやってる人がもし楽器とか持って曲とか書いたらたぶんすごいのになと思ってたから、だからよかったなと思って。メジャーデビューも決まったって聞いて、すげえなと思って。
──峯田さんが当時の大森さんに「歌ってみれば」とアドバイスしたわけじゃないんですよね?
峯田 言ってないと思う。でもいつもけっこう長いメールだったから、これを歌詞みたいにして歌えばいいのになっていうのは思ってたかな。
──大森さんからのメールに才能を感じたということ?
峯田 才能っていうか……。
大森 そんな内容じゃないです(笑)。
峯田 なんだろうな。返信が欲しいっていうわけじゃなくて、本当にただの“吐き出し場”っていうかさ。飲み屋とか行くと、男子トイレの横とかに「ここに吐いてください」っていうバケツあるじゃん。たぶんあれと一緒なんだよね。俺も別に返信しないし。暇なときにたまにしてたくらいで。
大森 2、3回告知みたいなの来ましたけど(笑)。
峯田 (笑)。まあでもそんなのは返したかもしれないけど。「助けてください」とかさ、そういうメールが来ても俺返せなかったから。
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- メジャーデビューシングル「きゅるきゅる」 / 2014年9月18日発売 / エイベックス・エンタテインメント
- CD+DVD / 3780円 / AVCD-83080/B
- CD / 1080円 / AVCD-83081
CD収録曲
- きゅるきゅる
- 私は面白い絶対面白いたぶん
- 裏
DVD収録内容
- きゅるきゅる(Video Clip)
- 絶対少女ツアーファイナル in 恵比寿 LIQUIDROOM
大森靖子(オオモリセイコ)
愛媛県生まれのシンガーソングライター。弾き語りスタイルでの激情的な歌が耳の早い音楽ファンの間で話題を集め、2012年4月にミニアルバム「PINK」をリリース。2013年3月に1stフルアルバム「魔法が使えないなら死にたい」を発表し、同年5月に東京・渋谷CLUB QUATTROでワンマンライブを実施。レーベルや事務所に所属しないままチケットをソールドアウトさせ大成功に収める。その後12月には直枝政広(カーネーション)プロデュースによる2ndフルアルバム「絶対少女」をリリース。レコ発ツアーファイナルを2014年3月、東京・LIQUIDROOM ebisuにて開催する。同年9月にはシングル「きゅるきゅる」でエイベックスからメジャーデビュー。自身がボーカルを務めるロックバンド、THEピンクトカレフでの活動も継続中。
銀杏BOYZ(ギンナンボーイズ)
2003年1月、GOING STEADYを突然解散させた峯田和伸(Vo, G)が、当初ソロ名義で「銀杏BOYZ」を始動させる。のちに同じくGOING STEADYの安孫子真哉(B)、村井守(Dr)と、 新メンバーのチン中村(G)を加え、2003年5月から本格的にバンドとしての活動を開始。2005年1月にアルバム「君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命」と「DOOR」を2枚同時発売し、続くツアーやフェス出演では骨折、延期、逮捕など多くの事件を巻き起こす。2007年からはDVD「僕たちは世界を変えることができない」や「あいどんわなだい」「光」といったシングル作品をリリースし、2011年夏のツアーを最後にライブ活動を休止。しばしの沈黙を経て2014年1月に約9年ぶりとなるニューアルバム「光のなかに立っていてね」とライブリミックスアルバム「BEACH」を2枚同時リリースした。チン、安孫子、村井はアルバムの完成に前後してバンドを脱退しており、現在は峯田1人で活動を行っている。