ナタリー PowerPush - 小野リサ

ボサノバの女王がJ-POPを歌った理由

ブラジルでは「日本に行けばボサノバのCDが手に入る」と評判

──「人生の扉」は竹内まりやさんの楽曲ですが、小野さん自身、歌詞のメッセージにも強く共感しているとか。

小野リサ

まさに今の私の心境なんですよね。月日はあっという間に経ってしまうけれど、でも、これからもずっと同じように歌い続けていきたい。どんな年齢になっても、この人生を生きていきたいという……。

──ボサノバやジャズは、年齢を重ねるごとに深みが増してくる音楽だと思います。

ええ。フランスの楽曲を歌ったた「ダン・モニール」というというアルバムを作ったとき、アンリ・サルヴァドールさんにお会いして。92歳でお亡くなりになるまで、ずっと歌っていた方なんですが、最後の世界ツアーのときに、Billboard Live TOKYOのコンサートにお誘いいただいて、「ダン・モニール」を一緒に歌わせていただいたのですね。すでに90歳を超えていたんですが、ステージに上がって歌っているときは、背中がピーンと伸びていて、ダンディでおしゃれで。私もそういうふうになりたいなと思いました。

──デビューのときから「長く歌っていきたい」と考えていました?

全然(笑)。そこまでは考えていませんでしたし、あのときは自分のアルバムをリリースできるというだけすごくうれしかったのです。とにかく、日本の皆さんにブラジルの音楽の楽しさを伝えたいなって……。

──1980年代後半から1990年代前半にかけて、ワールドミュージックという言葉が流行っていて。ボサノバもその中の1つにカテゴライズされていた印象もあります。

小野リサ

そうかもしれないですね。1つのムーブメントと言いますか、若者がそういう音楽に興味を持った時期があったので。私はずっとジャズのライブハウスで歌っていて、お客さんは常連さんが多く、年齢層もわりと高かったんです。ところがある日、ライブハウスの前に20~30代くらいの人たちが行列を作っていて。あのときは本当に驚きました(笑)。もちろん、うれしい驚きだったんですけどね。

──一過性のブームで終わってしまうかもしれない、という危惧はなかったですか?

いえ、それはありませんでしたね。私は自分自身の音楽を演奏して、ブラジルの音楽の魅力を伝えたいと思っていただけなので。そういうムーブメントはまた別の話と言いますか。

──なるほど。実際、ボサノバは日本においてもしっかりと浸透しているわけですからね。

「日本に行けば、欲しかった(ボサノバの)CDが手に入る」とブラジルでも評判ですからね(笑)。マニアの方も多いと思います、日本には。

ボサノバは世代を超えて伝わっていく心の音楽

──ここ数年は日本だけではなく、中国、韓国でも大規模のコンサートを行っていらっしゃいますが、アジアにおけるボサノバの浸透について、どんなふうに考えてますか?

10年前に初めて台湾で演奏したことをきっかけにして、アジアのいろいろな国々を回るようになったのですが、ちょうど日本の方々がボサノバを聴き始めたときの雰囲気……、おしゃれな音楽として取り入れ始めた時期が(アジアの国々にも)2、3年前からあるような気がしますね。

──本場のブラジルではどうなんでしょうか? 毎年のように新しいスタイルの音楽が生まれますが、やはりボサノバは特別な存在なんですか?

小野リサ

そうですね。普遍性を持った音楽と言いますか、ブラジルにおいては心の音楽だと思います。以前、ジョアン・ジルベルトが野外ロックコンサートに出演したことがありました。たくさんの若者がキャンプをしていたのですが、朝方、雨が降ってるなかにジョアンがギター1本持って出てきて、2時間くらい1人で歌ったんです。その間、彼らはずっと一緒に口ずさんでいて。それを見たとき、世代を超えて伝わっていく心の歌なんだなと実感しました。

──すごい光景ですね、それは。小野さんがロックフェスに出演したときはどうでしたか?

フジロックですか? あのときも野外で、若者がたくさんいましたけど(笑)、野外の雰囲気のコンサートも楽しいですよ。

ニューアルバム「Japao 2」2013年6月19日発売 / 3000円 / Dreamusic / MUCD-1285
収録曲
  1. 水の影[作詞・作曲:松任谷由実]
  2. グッド・バイ・マイ・ラブ[作詞:なかにし礼 / 作曲:平尾昌晃]
  3. あなたの忘れ物 ※新曲(NHKラジオ深夜便のうた)[作詞・作曲:沖正夫]
  4. 空に星があるように[作詞・作曲:荒木一郎]
  5. 胸の振り子[作詞:サトウハチロー 作曲:服部良一]
  6. 何もきかないで ※ポルトガル語バージョン[作詞・作曲:荒井由実]
  7. 星に祈りを[作詞・作曲:佐々木勉]
  8. いのちの歌[作詞: Miyabi / 作曲:村松崇継]
  9. ブルーライト・ヨコハマ[作詞:橋本淳 / 作曲:筒美京平]
  10. 人生の扉[作詞・作曲:竹内まりや]
  11. ワインレッドの心 ※ポルトガル語バージョン[作詞:井上陽水 / 作曲:玉置浩二]
  12. 青いフラミンゴ ※新曲[作詞・作曲:井上陽水]
小野リサ ジャポンツアー2013 ~日本の名曲とボサノヴァの夕べ~
2013年7月14日(日)
東京都 東京国際フォーラム ホールC
2013年7月15日(月)
大阪府 大阪森の宮ピロティホール OPEN 16:30 / START 17:00
チケット料金:7350円
一般発売:2013年4月20日
小野リサ ボサノヴァ・ナイト
2013年7月6日(土)
長野県 八ヶ岳高原音楽堂
OPEN 16:30 / START 17:30
コンサートのみ 1万円(申込みは電話にて承ります)
コンサート付き宿泊セット 3万2500円~(隣接のリゾートホテルでの宿泊・夕食・朝食。1室2名利用、1人分料金)
サッポロ・シティ・ジャズ
2013年7月21日(日)
北海道 SAPPORO MUSIC TENT
1回目 OPEN 13:30 / START 15:00
2回目 OPEN 18:30 / START 20:00
料金:5000円
LISA ONO Music Journey for You~Acoustic Live 2013
2013年8月18日(日)
神奈川県 神奈川県立音楽堂
OPEN 16:30 / START 17:00
料金:5800円
小野リサ(おのりさ)

日本を代表するボサノバシンガー。ブラジル・サンパウロで生まれ、10歳の頃に日本に帰国する。1988年に大貫妙子のアルバム「プリッシマ」に参加し、翌1989年にデビューアルバム「カトピリ」を発表。ボサノバの生みの親であるアントニオ・カルロス・ジョビンやジャズサンバの巨匠ジョアン・ドナードらと共演し、ニューヨークやブラジル、アジアなどでワールドワイドなライブ活動を展開している。1999年に発表したアルバム「DREAM」は20万枚を越えるヒットを記録。2011年に初の全曲日本語によるカバーアルバム「Japao」、2013年にシリーズ第2弾「Japao 2」をリリースする。