音楽ナタリー Power Push - うたパス Presents あの人と音楽談
Vol. 6 振分親方
著名人に音楽について話を聞き、定額音楽配信サービス「うたパス」で30曲のプレイリストを作ってもらう本連載。6回目はアイドルやアニソン好きとして知られる元大相撲力士の振分親方に登場してもらった。
取材・文 / 石橋果奈 撮影 / 上山陽介
自分を奮い立たせるテーマソング ──振分親方
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PSP用ゲーム「第2次スーパーロボット大戦Z 再世篇」のテーマソング。振分親方が現役時代に出会った特別な楽曲。
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振分親方がカラオケで歌う十八番。親方は相撲関係者とのカラオケでは「盛り上げ役」とのこと。
“スーパーロボット”にならなきゃ戦えなかった
高見盛精彦の四股名で活躍した振分親方は、2013年に現役を引退。現在は東関親方と共に東関部屋で力士の指導に当たっている。小学生の頃に力士を志し始めた親方の学校生活は、勉強に稽古に大忙し。そんな学生時代の親方にとって音楽は、相撲の際に闘争本能を呼び起こすためのものだった。
「一番音楽を聴いていたのは高校生の頃だったかな。中でも当時流行っていたtrfやaccessをよく聴いていて。彼らの曲は“ガソリン”みたいなものだったんですよ。稽古が終わってちょっと疲れたときに聴いてテンションを高めていましたね」
高校卒業後、親方は相撲部がアマチュア相撲界の強豪として知られる日本大学に進学。寮生活を始めた。
「大学1、2年生のときはテレビのない寮の大広間でみんなで寝てました。学年が上がるまでは滅多にテレビを観ることができなくて、たまーに観られるテレビが僕にとって娯楽だったんです。あとはコンビニに行ったときに有線で流れていた音楽で気に入ったものがあると、ずっとそれが頭の中に流れていて。あとでどうにか雑誌などで調べていましたね」
その後、親方は2000年に十両に昇進。高見盛の名で幕内力士になると、愛嬌のあるキャラクターも相まって名実共にスターダムを駆け上がる。その一方で右膝の靭帯断裂や右肩の亜脱臼などたびたび選手生命を脅かす怪我に見舞われたり、角界で不祥事が起こったりと、落ち込むことも多かったという。
「引退する直前に相撲界が最悪な時期になってしまって。落ち込みましたね。その頃よく聴いていたのが、JAM PROJECTの『鋼のレジスタンス』。この曲はゲーム『第2次スーパーロボット大戦Z 再世篇』のテーマソングでした。自分の現役時代のあだ名が“ロボコップ”だったんですけど、実際に自分自身がマシーンになったつもりじゃないと戦えなかったんです。だって相手もマシーンみたいに強いから、自分が“スーパーロボット”みたいにならなきゃ。『鋼のレジスタンス』は自分を奮い立たせるテーマソングでもあったんですよね」
相撲もライブもお客さんとの真剣勝負
現役を引退した今でも、振分親方の音楽好きは変わらない。現役時代は流行りの楽曲を好んで聴いていたが、現在は古い映画を観てその劇中歌や主題歌を好きになることも多い。
「現役の頃は激しいサウンドを好む傾向があったんですけど、最近はゆったりした曲も好きになってきましたね。引退してからまったりとした時間が過ごせるようになって、DVDで昔の映画をよく観ているんです。加山雄三さんの『若大将シリーズ』にハマって、加山さんの『君といつまでも』が好きになりました」
また親方は音楽好きが高じて学生時代からカラオケに足繁く通っており、利用時間を延長することもしばしば。当時は1人で好きな曲を大声で熱唱するのを楽しみにしていたが、近年では相撲の関係者と共に足を運ぶことが多く、そこでは率先して盛り上げ役を買って出る。
「東関親方は力士たちをピシッとしめる役割なんですけど、自分は『1曲歌って盛り上げるか!』みたいな役割で。リクエストされたら『なんでも歌ってやる!』という気持ちになるんです。十八番はゴールデンボンバーの『女々しくて』や湘南乃風の『睡蓮花』ですね! 本当は力士が盛り上げる役割ですけど(笑)」
「『人を楽しませてあげたい』という気持ちがいつも根底にある」という親方は、最後に音楽ライブとの共通点を交えて、相撲に対するスタンスをこう語ってくれた。
「力士は相手を倒すことだけを思って、大一番に対して集中力を高めてエネルギーを出します。勝負は一瞬で決まることもあるけど、歌手の方は、コンサートでは2時間ぶっ通しで歌うこともざらです。でも“代金を払って観にきてくださったお客さんを楽しませる”という部分では同じだと思うんです。アーティストの方との表現方法は違いますけど、相撲も音楽もお客さんとの真剣勝負だと思っていて。『お金を払って観に来た甲斐があった』って思わせたら自分の勝ちですからね。お客さんが喜んでくれるのが一番うれしいです」
振分親方選曲
テーマ「テンションを高めるプレイリスト」
- T.M.Revolution「INVOKE-インヴォーク-」
- T.M.Revolution「Inherit the Force -インヘリット・ザ・フォース-」
- T.M.Revolution「Web of Night(English Version)」
- T.M.Revolution × 水樹奈々「Preserved Roses」
- 水樹奈々「Synchrogazer」
- 水樹奈々「Exterminate」
- ももいろクローバーZ「行くぜっ!怪盗少女」
- ももいろクローバーZ「MOON PRIDE」
- AKB48「少女たちよ」
- AKB48「言い訳Maybe」
- AKB48「Everyday、カチューシャ」
- AKB48「恋するフォーチュンクッキー」
- HKT48「桜、みんなで食べた」
- NO NAME「虹の列車」
- fripSide「black bullet」
- fripSide「Level5 -judgelight-」
- fripSide「pico scope -SACLA-」
- trf「EZ DO DANCE」
- プリンセス プリンセス「世界でいちばん熱い夏」
- TM NETWORK「Get Wild」
- TM NETWORK「BEYOND THE TIME ~メビウスの宇宙を超えて~」
- TM NETWORK「WILD HEAVEN」
- access「Doubt & Trust ~ダウト&トラスト~」
- access「MOONSHINE DANCE」
- 湘南乃風「睡蓮花」
- 島谷ひとみ「Garnet Moon」
- ケツメイシ「さくら」
- GENERATIONS from EXILE TRIBE「Hard Knock Days」
- 加山雄三「君といつまでも」
- 黒うさP「千本桜 feat.初音ミク」
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振分親方(フリワケオヤカタ)
1976年青森県生まれの元大相撲力士。小学生の頃にアマチュア相撲を始め、1999年に幕下付出として初土俵入り。2000年には高見盛の名で幕内力士となり、“角界のロボコップ”という愛称で親しまれる。2013年に力士を引退し、現在は東関親方と共に東関部屋にて指導に当たる。
2016年9月30日更新