音楽ナタリー Power Push - うたパス Presents あの人と音楽談
Vol. 1 羽田圭介
話題の著名人に音楽についてインタビューし、さらにこだわりのプレイリストを作ってもらう連載企画「あの人と音楽談」がスタート。第1回は、昨年「スクラップ・アンド・ビルド」で「第153回芥川賞」を受賞したことや、多数のテレビ番組への出演で注目を集める羽田圭介に話を聞いた。
取材・文 / 石橋果奈 撮影 / 豊島望
演奏する、歌うという身体技法こそが音楽の魅力 ──羽田圭介
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聖飢魔II。羽田は「芥川賞」受賞が決定した際、メタルの楽曲のみを歌うカラオケ大会にデーモン閣下のメイクを施し参加していた。
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聖飢魔IIがB.D.5年(1994年)にリリースした“大教典”(アルバム)「PONK!!」のジャケット。これが羽田が初めて購入した聖飢魔IIの作品。
デーモン閣下は歌が圧倒的にうまい
2003年に「黒冷水」で「第40回文藝賞」を受賞し、17歳で小説家としてデビューした羽田圭介。2008年の「走ル」、2009年の「ミート・ザ・ビート」、2014年の「メタモルフォシス」が芥川賞の候補に挙がり、ついに2015年に「スクラップ・アンド・ビルド」で「第153回芥川賞」を受賞した。彼は受賞が決定した際、聖飢魔IIのような“悪魔メイク”を自ら施し、小説家や編集者と共にメタル限定カラオケを実施していたことが話題を集めた。
「参加者の中にいた長嶋有さんと中村航さんはリアルタイムで聴いてたので、すごく聖飢魔IIに詳しいんです。でもそのほかの方々は全然。女性作家とか、もう全然歌えないし。デーモン閣下が中島みゆき『地上の星』とか、女性アーティストの曲をいろいろカバーしてるんですけど、ズルしてそういうのばっかり歌ってて」
「悪魔教」の布教という目的のため、1985年にヘヴィメタルバンドの様式で地球デビューした“悪魔の集団”、聖飢魔II。1999年12月31日に解散しながらも、2005年のデビュー20周年、2010年のデビュー25周年、2011年開催の東日本大震災の被災者支援を目的としたチャリティミサのために再結成している。
聖飢魔IIを好きな理由について「デーモン閣下(Vo)の歌が圧倒的にうまいですからね。あとはバンドとして演奏がすごい上手だなあっていう、ただそれだけです」とした彼は、明治大学商学部に在学していた18歳の頃、神保町にあるレコード店で聖飢魔IIがB.D.5年(1994年)にリリースした“大教典”(アルバム)「PONK!!」と出会った。「どういう曲が入っているかも知らずに買っちゃったんですよ。そのアルバムの周囲に漂ってる空気感に惹かれたのと、どっかで聴いて歌がうまかったっていうのを覚えていて」
そして2015年、羽田はデビュー30周年を迎え期間限定で再び集結した彼らの黒ミサ(ライブ)に足を運んだ。そのときの感想をこう話す。「今回のツアーで初めて生で聖飢魔IIを観たんです。今あるエフェクトの技術とか全部使っても、ほかのアーティストではこんな感じにならないんだろうなって思うぐらい、本当に素晴らしい演奏でしたね」
CHEMISTRY、ゴスペラーズ、平井堅から「盗んでやろう」
ここからは羽田の音楽に対する思いを探っていこう。彼は高校1年生のとき、授業でギターを弾いたことがきっかけで音楽に興味を抱いていったとのこと。「でも練習しながら『楽器弾いて何が面白いんだろうな』ってずっと思ってましたね」
そう語りつつも、教室で弾き語りを披露した際、クラスメイトから拍手を浴びた。「それで『俺ちょっと才能あるな』と勘違いして。でも楽器にハマっていったわけではなく、当時流行ってたCHEMISTRY、ゴスペラーズ、平井堅とか、男性のR&B歌手に惹かれ始めたんです。『うまい男性ボーカリストの歌を聴けば自分も歌がうまくなるんじゃないか?』『盗んでやろう』っていう理由で」
そんな羽田に気になる最近のアーティストはいるかと尋ねると、「まったく聴く気が起きない」との答え。「最近のうまいアーティストの曲を聴くと『昔の自分だったら好きだったかもなあ』とは思いますけど、もう僕のほうが受け付けないんです。音楽って年齢に伴う感受性と密接に関わってるというか、20歳ぐらいの多感な時期には歌モノがすごく響くと思うんですよね」
最後に、小説家として言葉を生業にしている彼は、音楽における歌詞の役割について、独自の考えを明かしてくれた。「もともと僕、歌詞は添え物でいいと思っているんです。もっと言うとアーティスト自身が作詞作曲をしなくていいんじゃないかなって。演奏する、歌うっていう身体技法こそが、ほかの誰にも替えの利かないことだと思うんですよね」
羽田圭介 選曲
テーマ「歌がうまい人チャンネル」
- 聖飢魔II「WINNER!」
- 聖飢魔II「FIRE AFTER FIRE」
- 聖飢魔II「MASQUERADE」
- 聖飢魔II「THE REQUIEM」
- 聖飢魔II「悪魔のメリークリスマス」
- 久保田利伸「Missing」
- 久保田利伸「You were mine」
- 久保田利伸「Indigo Waltz」
- 久保田利伸「Cymbals」
- 久保田利伸「No Lights... Candle Light」
- ゴスペラーズ「街角 -on the corner-」
- ゴスペラーズ「アンジュナ」
- ゴスペラーズ「Promise - a cappella -」
- ゴスペラーズ「ローレライ」
- ゴスペラーズ「永遠に - a cappella -」
- Queen「Under Pressure」
- Queen「Don't Stop Me Now」
- Queen「Somebody To Love」
- Queen「Save Me」
- Queen「A Kind Of Magic」
- Queen「The Show Must Go On」
- THEE MICHELLE GUN ELEPHANT「サタニック・ブン・ブン・ヘッド」
- THEE MICHELLE GUN ELEPHANT「エレクトリック・サーカス」
- X JAPAN「DAHLIA」
- X JAPAN「FOREVER LOVE」
- X JAPAN「Tears」
- X JAPAN「Silent Jealousy」
- X JAPAN「Rusty Nail」
- 尾崎豊「Forget-me-not」
- 尾崎豊「OH MY LITTLE GIRL」
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- バックナンバー
- Vol. 1
羽田圭介(小説家) - Vol. 2
土井善晴(料理研究家) - Vol. 3
棚橋弘至(プロレスラー) - Vol. 4
加藤諒(俳優) - Vol. 5
佐野ひなこ(女優) - Vol. 6
振分親方(元大相撲力士) - Vol. 7
LiLy(作家) - Vol. 8
栗城史多(登山家) - Vol. 9
ジョージ朝倉(マンガ家)
羽田圭介(ハダケイスケ)
東京都出身の小説家。1985年10月生まれ。明治大学付属明治高等学校在学中の2003年に「黒冷水」で「第40回文藝賞」を受賞し小説家デビュー。その後2008年の「走ル」、2009年の「ミート・ザ・ビート」、2014年の「メタモルフォシス」が「芥川賞」の候補に上がる。そして2015年に「スクラップ・アンド・ビルド」で「第153回芥川賞」を受賞し、それをきっかけに数々のテレビ番組に出演している。
2016年9月30日更新