OLEDICKFOGGYがニューアルバム「Gerato」を3月7日にリリースする。「グッド・バイ」以来約2年ぶりのオリジナルアルバムとなる今作には、これまでにも増してバラエティに富んだ12曲が収録されている。
アルバムの発売に際して、音楽ナタリーでは伊藤雄和(Vo, Mandolin)と、彼がファンであることを公言している芥川賞作家・西村賢太の対談を実施。伊藤のラブコールをきっかけに2016年に知り合った2人は、その後親交を深め、飲みに行くのはもちろん、西村の作品の解説を伊藤が執筆を担当するほどの仲に。尊敬し合う関係だと言う2人に互いの魅力や共通点を語り合ってもらった。
取材・文 / 柴山順次 撮影 / Chabo
“ながら観”のはずが……
──お二人の出会いから伺わせてください。
西村賢太 映画「歯車にまどわされて」(OLEDICKFOGGYのドキュメンタリー映画「オールディックフォギー / 歯車にまどわされて」。2016年8月公開)のタイミングで、講談社経由で映画のコメントの依頼を受けたんですよ。それで送られてきたDVDを何気ない気持ちで観たんです。僕、コメントの仕事とか、(作品を)観ないでコメントしてしまうタイプなんですよ(笑)。僕自身音楽に全然興味がないし、今回も最初は“ながら観”をしていたんですけど、劇中の曲に響くものがありまして。その曲が「いなくなったのは俺の方だったんだ」なんです。それで「これはちゃんと観なきゃ」ときちんとDVDを観たら「いいえ、その逆です。」とか「パズル」も響きました。それでアルバムを聴いてみたくなり、次の日に御茶ノ水のdiskunionでOLEDICKFOGGYのアルバムを5枚全部買ってきたんですけど、すごくいいんですよね。今まで聴いたことがない音楽なのに、どこか懐かしさもあって。それで映画の公開初日にスクリーンで観たくて映画館に足を運んだんです。そしたら映画会社の人が僕のことを知っていたらしく、エレベーターのドアが開いた瞬間に「こっちへ来てください」と言われて、いきなり伊藤さんに会うことになってしまい……僕はメンバーに会うつもりはなかったんですけど。結局そのときはぜんぜん挨拶もできなかったですね、お互い。
伊藤雄和 僕が手紙を書いたのってそのあとでしたっけ?
西村 そうですね。
──手紙を書かれたんですか?
伊藤 はい。コメントのお礼の手紙を書いたんですよ。その手紙に先生から返事をいただき、そこから飲みに行くようになったんです。
──伊藤さんは西村さんが映画に来ることは知っていたのですか?
伊藤 いや、知らなかったです。「来てるよ」ってスタッフに言われて。
西村 あははは(笑)。
伊藤 でも映画が始まる前は挨拶に行けなかったんですよ。
西村 ものすごくごった返していましたからね。僕もわりとそういう挨拶が苦手なタイプなので、黙って行って黙って帰ってこようと思っていて。だけど、運がいいのか悪いのか、見つかってしまったんです(笑)。
西村文学を手にするきっかけは風俗発言
──そもそも伊藤さんが西村文学に触れたきっかけとなったのは何だったのでしょうか?
伊藤 先生が芥川賞を受賞したときの一連の報道がきっかけですね。“風俗発言”があったじゃないですか。あれを見て「すごい人だな」って。それで先生の本を買いに行ったんですけど1行目でやられてしまって。先生の小説を読んでいくとあの風俗発言も辻褄が合うんですよね。
西村 あの日はものすごい数の報道陣だったんですよ。想像を遥かに絶するくらいの人がいて、そこでまともな受け答えなんてできないじゃないですか。だから早く終わらせて一服したかったし、自分でも何を言っているかあまりわかってなかったんですけど(笑)。でも何も考えないでしゃべったことに伊藤さんが食い付いてくれたことでOLEDICKFOGGYの音楽を知れたのはよかったなと思いますね。
──人柄に惹かれて作品を手にすることはよくあるのですか?
伊藤 いや、こういう出会い方は初めてですね。そこから先生の作品だけじゃなく、先生が読んでいる本にも手を出して読んだり。そんなことなかなかないですよ。
──音楽の聴き方に似ているかもしれませんね。好きなアーティストのルーツを掘っていくような。
伊藤 そうですね。
西村 ただ伊藤さんのすごいところは一緒に飲みに行くようになって「町田康さんやみうらじゅんさんにコメントを断られて、唯一引っかかったのが西村先生なんです」って平気で言うんですよ(笑)。いや、僕としても「よくぞ引っかけてくださいました」と(笑)。
これはただの不良じゃないな
──それがきっかけで西村さんはOLEDICKFOGGYの音楽にのめり込んでいくわけですが、最初に聴いたときはどう感じましたか?
西村 僕は音楽のジャンルとかロックの定義とか、全然わからないんですよ。でもOLEDICKFOGGYの歌詞は妙に引っかかってくるんです。歌詞が耳触りのいい、流れていくような言葉ではなくて、留まるんです。耳に留まって、頭に留まる。だからその留まる理由をちゃんと知りたくてアルバムを買いに走ったんです。でもバンドの歌詞カードの文字って小さいじゃないですか。僕は老眼が入っているから文字が読めなくて、虫眼鏡で読みました(笑)。そしたら変な言い方ですけど、僕と伊藤さんの言葉って共通点があるなと感じたんです。言葉の選び方が小説好きの、文系の使い方だなって。これはただの不良じゃないなと(笑)。映画の中でも本がたくさん映っていたので読書家ということはわかっていたんですけどね。
伊藤 僕の歌詞には西村文学の影響がかなりあると思いますよ。
──確かにOLEDICKFOGGYの歌詞を読むと、小説を読むときのような感覚を感じることがあります。
西村 だから最近は僕も伊藤さんの歌詞から言葉をパクっているんですよ(笑)。「パレード」の一節の「違う!」とか僕の小説でそのまま使っていますからね。
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布団から出れる人間と出れない人間
- OLEDICKFOGGY「Gerato」
- 2018年3月7日発売 / DIWPHALANX
-
[CD]
3240円 / PX333
- 収録曲
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- Gerato
- 昔日
- さよならが言えなくて
- KUNG FU VACATION
- mud puppets me
- アステマ
- 矛盾 / 葛藤 / 憎悪 / 滑稽
- don't touch me
- 汚れた詩情
- flexible
- 薄荷煙草とギムレット
- ベターエンド
- OLEDICKFOGGY「Gerato TOUR 2018」
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- 2018年3月18日(日)東京都 新宿LOFT(※ワンマンライブ)
- 2018年3月23日(金)秋田県 秋田LIVE SPOT 2000
- 2018年3月24日(土)岩手県 盛岡Club Change
- 2018年3月25日(日)栃木県 HEAVEN'S ROCK Utsunomiya VJ-2
- 2018年3月31日(土)岡山県 津山K2
- 2018年4月1日(日)和歌山県 和歌山CLUB GATE
- 2018年4月6日(金)青森県 Mag-Net
- 2018年4月7日(土)福島県 Out Line(※ワンマンライブ)
- 2018年4月8日(日)埼玉県 HEAVEN'S ROCK Kumagaya VJ-1
- 2018年4月14日(土)徳島県 club GRINDHOUSE
- 2018年4月15日(日)奈良県 奈良NEVER LAND
- 2018年4月21日(土)高知県 CARAVAN SARY
- 2018年4月22日(日)兵庫県 fab-space
- 2018年4月27日(金)愛知県 豊橋 club KNOT
- 2018年4月28日(土)静岡県 沼津POCO(※ワンマンライブ)
- 2018年4月29日(日・祝)大阪府 CONPASS
- 2018年5月3日(木・祝)東京都 下北沢BASEMENT BAR / 下北沢THREE
- 2018年5月4日(金・祝)岐阜県 yanagase ants
- 2018年5月5日(土・祝)三重県 MUSIC SPACE 鈴鹿ANSWER
- 2018年5月11日(金)山口県 Organ's Melody
- 2018年5月12日(土)島根県 アポロ
- 2018年5月13日(日)鳥取県 MOON&SPOON
- 2018年5月18日(金)滋賀県 B-FLAT
- 2018年5月19日(土)兵庫県 MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎(※ワンマンライブ)
- 2018年5月20日(日)静岡県 FM STAGE
- 2018年5月26日(土)群馬県 高崎clubFLEEZ(※ワンマンライブ)
- 2018年5月27日(日)千葉県 千葉LOOK
- 2018年6月2日(土)宮崎県 SR BOX
- 2018年6月3日(日)鹿児島県 SR HALL
- 2018年6月8日(金)福岡県 小倉FUSE
- 2018年6月9日(土)福岡県 Queblick
- 2018年6月10日(日)福岡県 久留米GEILS
- 2018年6月16日(土)愛媛県 Double-u studio
- 2018年6月17日(日)香川県 DIME
- 2018年6月23日(土)京都府 KYOTO MUSE
- 2018年6月24日(日)三重県 club chaos(※ワンマンライブ)
- 2018年6月29日(金)山形県 LIVE ARB
- 2018年6月30日(土)新潟県 GOLDEN PIGS BLACK STAGE(※ワンマンライブ)
- 2018年7月1日(日)福島県 clubSONICiwaki
- 2018年7月7日(土)福井県 HALL BEE
- 2018年7月8日(日)長野県 the Venue
- 2018年7月13日(金)熊本県 Django
- 2018年7月14日(土)佐賀県 SAGA GEILS
- 2018年7月15日(日)長崎県 Studio Do!
- 2018年7月16日(月・祝)大分県 club SPOT
- 2018年7月20日(金)神奈川県 F.A.D YOKOHAMA
- 2018年7月21日(土)宮城県 enn 2nd
- 2018年7月22日(日)茨城県 mito LIGHT HOUSE
- 2018年8月4日(土)三重県 M'AXA
- 2018年8月5日(日)島根県 松江B1
- 2018年8月6日(月)広島県 TO FUTURE
- 2018年8月10日(金)岩手県 KLUB COUNTER ACTION MIYAKO
- 2018年8月11日(土・祝)岩手県 KESEN ROCK FREAKS
- 2018年8月12日(日)宮城県 石巻BLUE RESISTANCE
- 2018年8月18日(土)愛媛県 niihama Jeandore
- 2018年8月19日(日)岡山県 PEPPERLAND
- 2018年8月24日(金)京都府 STUDIO FARM
- 2018年8月25日(土)静岡県 Shizuoka UMBER
- 2018年8月26日(日)静岡県 G-SIDE
- 2018年9月1日(土)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO(※ワンマンライブ)
- 2018年9月8日(土)福岡県 Queblick(※ワンマンライブ)
- 2018年9月9日(日)広島県 福山 Music Factory
- 2018年9月14日(金)福島県 Karan堂
- 2018年9月15日(土)新潟県 小千谷市山本山高原山頂広場
- 2018年9月16日(日)富山県 MAIRO
- 2018年9月17日(月・祝)石川県 vanvanV4
- 2018年9月21日(金)北海道 livehouse mosquito
- 2018年9月22日(土)北海道 帯広Rest
- 2018年9月23日(日・祝)北海道 北見夕焼けまつり
- 2018年9月24日(月・振休)北海道 KLUB COUNTER ACTION
- 2018年9月29日(土)大阪府 梅田CLUB QUATTRO(※ワンマンライブ)
- 2018年10月5日(金)沖縄県 Output
- 2018年10月6日(土)沖縄県 宮古島YUM YUM
- 2018年10月12日(金)山梨県 KAZOO HALL
- 2018年10月13日(土)福島県 LIVE STAGE PEAK ACTION
- 2018年10月14日(日)栃木県 CLUB South BBC
- 2018年10月20日(土)山形県 酒田hope
- 2018年10月21日(日)宮城県 仙台MACANA(※ワンマンライブ)
- 2018年10月28日(日)東京都 日比谷野外大音楽堂 (※ワンマンライブ)
- OLEDICKFOGGY(オールディックフォギー)
- 伊藤雄和(Vo, Mandolin)、スージー(G, Cho)、TAKE(B)、四條未来(Banjo)、yossuxi(Key, Accordion)、大川順堂(Dr, Cho)からなるラスティック・ロックバンド。エモーショナルでポリティカルな日本語詞と1960年代後半~70年代前半の日本のフォーク、ニューミュージック的な温かいメロディー、そして時にはハードコア・パンクな側面を見せる独特なサウンドが特徴。2003年に結成されて以来、さまざまなジャンルのバンドと競演を重ね、年間平均100本のライブで知名度を上げてきた。2012年「京都大作戦2012 ~短冊に こめた願いを 叶いな祭~」に出演後、活躍の場を広げ、2014年には映画「クローズEXPLODE」の挿入歌として代表曲「月になんて」が使用された。2016年3月に5th新作アルバム「グッド・バイ」をリリース。全国縦断63会場ツアーを敢行し、ツアーファイナルの東京・渋谷TSUTAYA O-EASTワンマンを大成功に終わらせる。2016年8月には川口潤監督によるドキュメンタリー映画「オールディックフォギー / 歯車にまどわされて」が劇場公開された。2017年3月にベストアルバム「オールディックフォギー名作撰 破戒篇」「オールディックフォギー名作撰 絶海篇」を2作同時リリース。2018年3月に6枚目のフルアルバム「Gerato」を発売し、レコ発ツアーのファイナルとして10月に東京・日比谷野外大音楽堂でワンマンライブを行う。
- 西村賢太(ニシムラケンタ)
- 1967年7月12日生まれの作家。私小説の書き手として知られる。2007年「暗渠の宿」で第29回野間文芸新人賞を、2011年「苦役列車」で第144回芥川龍之介賞を受賞。最新作は2018年1月発売の「夜更けの川に落葉は流れて」で、同書にはOLEDICKFOGGYの伊藤雄和が帯コメントを寄せている。