音楽ナタリー Power Push - 伊藤雄和 × 小峠英二(バイきんぐ)

ライブの常連が語るOLEDICKFOGGYの魅力

OLEDICKFOGGYがニューアルバム「グッド・バイ」をリリースする。

ハードなラスティックサウンドで人気を集めるOLEDICKFOGGY。彼らにはアーティストはもちろん、俳優やお笑い芸人などさまざまなジャンルの著名人にもファンが多い。今作収録の新曲「シラフのうちに」のミュージックビデオには、怒髪天の増子直純やSAのNAOKI、ベッド・インの中尊寺まいといったアーティストのほかに、バイきんぐの小峠英二や俳優の渋川清彦らが出演し、話題を集めている。そこで音楽ナタリーではOLEDICKFOGGYの伊藤雄和(Vo, Mandolin)と、ライブにも足を運ぶほどOLEDICKFOGGYのファンだというバイきんぐ・小峠の対談をセッティングした。互いに聞きたいことをぶつけ合った、ざっくばらんな会話を楽しんでほしい。

取材・文 / 荒金良介 撮影 / 西槇太一

なんて悲しい曲名なんだ

左から伊藤雄和(Vo, Mandolin)、小峠英二(バイきんぐ)。

小峠英二 OLEDICKFOGGYと出会ったのは僕がよく行く洋服屋さんの店員さんに教えてもらったのがきっかけです。その店員さんは僕の音楽の嗜好を知っていたので、「たぶん好きですよ」ってオススメしてくれて。CDを買ったら、めちゃくちゃカッコよかった。衝撃を受けました。最初に買ったのは「繁栄とその周辺」なんですけど、まずタイトルが面白いし、とにかくシャレてるんですよね。歌詞は「元気出せ」とかそういうものではなく、どこか世界を斜めから見たようなもので、それがまたサウンドと合ってる。余裕のある感じがするんですよ。少し力の抜けた感じ。

伊藤雄和 よく分析してくださってますね(笑)。確かに「元気出せ、がんばろうぜ」みたいな歌詞はない。俺がそれを言ってもなあと思ってて。元気はどこかで勝手にもらえばいいから。

小峠 あと「いなくなったのは俺の方だったんだ」(2013年12月リリースのシングル表題曲)って、なんて悲しい曲名なんだと(笑)。

伊藤雄和(Vo, Mandolin)

伊藤 ああ(笑)。ずっとバンドを続けていると、今までいたバンド仲間やお客さんが会場からどんどんいなくなって、自分だけが残っていきますよね。だけどその人たちから見たら、いなくなったのは俺のほうだったのかなと。それに気付いてこの曲を作りました。

小峠 なるほど。新曲の「シラフのうちに」もまたタイトルがシャレてるじゃないですか! OLEDICKFOGGYはそういうところもホントにカッコいい。

伊藤 うれしいです。

小峠 もしかしたら失礼なこと言ってるかもしれないけど、OLEDICKFOGGYの皆さんって昔ヤンチャされてたんじゃないかなって思うんです。というのも、僕、ワルい人たちが作った音楽が好きなんですよね。そういう人たちが純粋に作った音楽に惹かれる傾向があって。いろいろなことを経験した、芯のある人が作った音楽が好きですね。すごく流行っていても、格好だけのバンドだと僕はあまり惹かれないんですよ。お客さんが踊ってる理由もわかるし、売れてる理由もわかるけど、自分は体が動かない。

伊藤 売れてるお笑い芸人さんを見てもそう思います?

小峠 お笑いも一緒だと思います。結局どう生きてきたのか、それが作品に出てる人が好きですね。

伊藤 俺もそう思います。とはいえ、売れてる人たちと競演するとそこから学ぶべきこともありますけどね。

OLEDICKFOGGYは曲を知らなくても踊れる

小峠 去年11月に初めてOLEDICKFOGGYのライブに行ったんですけど、ライブもカッコいいですよね。メンバー皆さん、カッコいい。アコーディオン担当の女性がいるじゃないですか?

伊藤 ええ。yossuxiですね。

小峠英二(バイきんぐ)

小峠 ステージに女性が1人いると映えますよね。で、ウッドベースがいて、バンジョーがいて……っていう珍しい楽器の並びで。そこも好きです。CDを聴いたとき、この人たちはライブも絶対いいんだろうと思いましたもん。初めてライブを観たときまだアルバム全部は持ってなくて、その日のセットリストだと知ってる曲と知らない曲の割合が半々ぐらいだったと思います。でも思わず体が動いた。いい曲をやる人たちのライブは初見で聴いてもいいし、踊れるんですよ。OLEDICKFOGGYはそういうバンドなんですよね。

伊藤 自分たちのことを知らない人を踊らせたい気持ちはあるんですけど、俺は「踊れ!」って言えないんですよ。「手を挙げろ」とかもですけど、強制したくないんですよね。純粋に音楽がいいと思ったら踊ってくれるだろうなと。あと時間内にちゃんとやりたいんですよ。だからしゃべってる暇もなくて。歌詞で言いたいことを言ってるつもりなので、あまりMCもしたくないんですよね。

小峠 俺も「踊れ!」とか言われるのはあまり好きじゃない。「言われなくても、よかったら踊るから」みたいな。だって僕らが「笑え!」と言ってるようなものですからね。面白ければ笑ってくれるだろうし、そうじゃなければ笑わないだけの話で。お客さんはお金を払ってるわけだから、好きに観るべきですよね。

伊藤 そう思います。ただライブはぶっ通しでやるんで、弦が切れたりすると大変なんですよ。

小峠 そういうときはどうするんですか?

伊藤 ちょっとしゃべるんですけど、あまり盛り上がらず。「ああ、しゃべらなきゃよかった」って思います(笑)。

小峠 ははははは(笑)。

伊藤 言ったことに対して反応があるのは気持ちいいと思うけど、例えば「座れ!」と言った場合、座ってくれなかったら終わりじゃないですか。

小峠 「座れ! ……やっぱりいいわ!」って、めちゃくちゃダサいですもんね(笑)。

1人で居酒屋、行けます?

小峠 2回目に観たライブはワンマンだったんですけど、そのときも熱気がすごかったですね。僕、1人でライブに行けないんですよ。絶対に誰かを連れて行くんです。

左から伊藤雄和(Vo, Mandolin)、小峠英二(バイきんぐ)。

伊藤 俺も1人じゃ行けないですね。

小峠 あっ、やっぱりそうですか。

伊藤 旅行は1人で行けます?

小峠 無理ですね。

伊藤 俺も行けないです。

小峠 1人で居酒屋は行けます?

伊藤 それは行けます。

小峠 行けるんですか!(笑)

伊藤 最終的に誰か呼ぶんですけどね。

小峠 なるほど。で、そのOLEDICKFOGGYのワンマンの日はどうしても一緒に行く人が見つけられなくて、でもライブが観たいと思って数年ぶりに1人でライブに行きました。

伊藤 けっこう飲んでたみたいですね?

小峠 ライブではものすごく飲むんですよ。さらに、いいライブだったらベロベロになるんです。

伊藤 目撃情報によると、ウーロンハイ濃いめと注文してたそうで(笑)。

小峠 そうそう、全部濃いめ。いいライブって、比例してお酒も増えるんですよね。で、ライブに行くと、周りが面白がって俺のことを無理やりダイブさせるんですよ。その日もダイブさせられそうになって……。

伊藤 そうだったんですね。

小峠 はい。ちょうど「水曜日のダウンタウン」という番組の企画で、1週間の間に何かドッキリを仕掛けられるという宣言をされてて、その期間内だったんですよ。だから、これドッキリなのかなって思いました。その後、番組内で「この1週間ドッキリだと思ったことを教えてください」と言われて話をしたら、それはドッキリじゃないと言われました(笑)。

伊藤 はははは(笑)。そういえばテレビ番組に出演するときにときどきOLEDICKFOGGYのTシャツを着てくれてますよね? ありがたいです。

小峠 いえいえ、カッコいいから着ているだけです。

伊藤 テレビで着てくださったおかげで、通販での売れ行きがすごいです(笑)。

OLEDICKFOGGY ニューアルバム「グッド・バイ」 / 2016年3月9日発売 / 3000円 / DIWPHALANX / PX300
OLEDICKFOGGY ニューアルバム「グッド・バイ」
収録曲
  1. マネー
  2. シラフのうちに
  3. グッド・バイ
  4. 未完の肖像
  5. 土蜘蛛
  6. ジンクス
  7. 暁のメナム
  8. 地下で
  9. マグネティック・ラヴ
  10. オカルト
  11. WINTER
  12. 歯車にまどわされて
  13. メルヘン
OLEDICKFOGGY(オールディックフォギー)
OLEDICKFOGGY

伊藤雄和(Vo, Mandolin)、スージー(G, Cho)、TAKE(B)、四條未来(Banjo)、yossuxi(Key, Accordion)、大川順堂(Dr, Cho)からなるラスティックバンド。2003年に結成されて以来、さまざまなジャンルのバンドと競演を重ね、年間平均100本のライブで知名度を上げてきた。2012年「京都大作戦2012 ~短冊に こめた願いを 叶いな祭~」に出演後、活躍の場を広げ、2014年には映画「クローズEXPLODE」の挿入歌として「月になんて」が使用された。2016年3月に新作アルバム「グッド・バイ」をリリース。

バイきんぐ

小峠英二、西村瑞樹からなるSMA NEET Project所属のお笑いコンビ。小峠の怒り口調のツッコミを特徴としたコントで人気を集めている。2008年と2011年の「キングオブコント」で準決勝に進出し、2012年の「キングオブコント2012」で優勝を果たした。現在多くのテレビやラジオ番組で活躍中。