OLDCODEX|未開の地を切り開いてきた10年間

わけわかんないと思われていたい

──OLDCODEXは初期からアニメタイアップが多く、いろんな人に聴かれる機会が多かったと思うのですが、異色の組み合わせのユニットであるからこそ、実力で周りを認めさせて生き残っていかなければならない状況がありましたよね。そうやってリスナーやミュージシャン仲間を増やしてきて、幅広い層から支持を得ている今があるのだと思います。

YORKE. いや、まだまだだと思います。アニメのタイアップをやってるのに、「OZZFEST JAPAN」や「LUNATIC FEST.」に出たり、ワケわかんないから観てくれる人もいると思う。そういうふうに10年過ぎただけです。むしろ、いまだにワケわかんないと思われていたい。初めて行った場所で受ける「こいつら何?」っていう視線が僕は大好き。「見とけよ」って思えるしね。それを常に感じていないとエネルギーが出ない。ロックってそういうもんだと思うから。もしもね、歌って絵を描く表現がもっと世の中に広まったら、僕は絵を描かなくなることもあるかもね。「そんな簡単じゃないんだ」って。フェスでも、描かないときもあるんですよ。それで客席を見て、誰かがこっちを見ているなと思ったら、そいつにメッセージを送りたくて描き始めたり。パフォーマンスを一方的に放出する時期もありましたけど、今は対象がいるし、迷っている人さえも強引に手を引っ張って進んでいきたいんです。

──意表を突きたいという精神は「Take On Fever」にも感じましたよ。これだけヘビーな曲がアニメのタイアップって、珍しいことだと思います。

Ta_2(Vo)

Ta_2 そこは意図的に作っていたかも。OLDCODEXが所属しているランティスはアニメーションに特化したレーベルですけど、ほかのレーベルも含めて、ここ5年ぐらいでアニメーションのタイアップをやるバンドがすごく増えたと思う。

──アニメタイアップに対するイメージも変わってきましたよね。

Ta_2 そう。アニメ主題歌をやるバンドを“アニソンバンド”と言っている人もいるけど、今は邦楽ロック畑の人たちが当たり前のようにアニメのタイアップをやったりする。今回は個人的に、そういう人たちにアニメタイアップのあり方を見せつけてやるという気持ちがどこかにあったかな。俺たちは今までタイアップ作品にすごく敬意を払ってきたつもりだし、「どうやったらアニメを観ている人がワクワクするだろう?」「アニメーターはどんな絵を描くかな?」「どんなカット割りかな?」と想像してきたから。嫌な言い方にはなりますけど、誰もここまではできないだろうなとは思います。

──そういった熟考を経てOLDCODEXが突破口を開いてきたおかげで、“アニソンバンド”のイメージが変わったところもあると思うんですよね。

YORKE. 言いすぎでしょ(笑)。そうだったらいいけどね。でも、僕自身は評価に踊らされたこともないし、今作っているものに魂を削っているだけ。もしもほかのバンドがアニメタイアップをやりやすくなったならどんどんやればいいと思うけど、OLDCODEXがやっているようなタッグの組み方は、なかなかできないとは思います。僕もTa_2のおかげでアニメーターの方と会う機会が多くて、どういうふうにアニメを作っているのか教わるし、同じクリエイターとしてリスペクトし合える関係だと思っているから。だから、OLDCODEXをある意味信頼してもらって、アニメ側からOKをもらえるんだと思うな。

Ta_2 例えば90秒版はミックスを変えているんですよ。テレビで放映されるときって音のバランスが補正されるんですけど、うちの曲はレンジが広くてローが強いから、音量が小さくなっちゃうんです。それを計算して、ベースとドラムのローを相当切った状態で、音量も小さくして、ギターを大きくして、コーラスと歌が聴こえる、90秒で完結できるようなミックスにしているんです。劇伴やセリフが入っても音量が下がらないギリギリを狙いました。オープニングで音量がガンッて下がって聴こえる曲ってあるでしょ?

──確かにアニメを観ていて、そこが気になることはあります。

Ta_2 そうしたくなくて昔からいろいろ試してきたんですけど、今回のようにミックスを変えるというやり方が一番いい。そういうところまでアニメーション側と一緒に作っています。

──そういうお話を聞くと、まだアニメ作品のほうを観ていない人もきっと90秒版も聴きたくなるし、アニメ映像と合わさったものも観てみたくなりますよね。

YORKE. それでアニメ作品がより観てもらえたらいいね。

OLDCODEX

大切な人への “手紙”

──2曲目の「Nasty」は、どういうきっかけでできあがったんですか?

Ta_2 長年ロックバンドをやってると、自分たちの雛形が決まり切ってくるところがあって。それを壊したくて、前のアルバムでそのきっかけを作ったり、幅を広げたりしたので、次は今まで手を伸ばしてこなかった“ビートを変える”というところにいってみようかなと。

──だからビートで引っ張るような曲になっているんですね。

Ta_2 そうですね。それで歌メロとかは、ドラマチックに動かないようにして。こういう方向性もあるということを形にしたかったんです。

──3曲目の「painting of sorrow」はバラードです。曲名も含めて、歌詞に強い思いを感じました。

YORKE. これは対象がいて、その人に向けて書きました。手紙のような感じ。そいつがどうなったかを言う必要はないから、言葉に意味を持たせていないけど。自分はペインティングで表現していくという意味でも、こういうタイトルにしました。

Ta_2 まさに“手紙”っていうのが答えです。吐き出したい感情があって、それをそのまま楽曲という手紙に添えて出したっていう。でも、それをマイナスな感じには出したくなかった。すごくつらくても笑顔になる瞬間ってあるから、そこを切り取れないかなって。

──確かに、悲しいバラードではなく、スタイリッシュになっている印象を受けました。

Ta_2 そこは、アレンジをやってくれた小山(寿)くんと打ち合わせして。最初はもっと音数も少なくて物悲しかったんだけど、「聴いている人が涙を飲み込んで前を向けるようなサウンドにしたい」「悲しいという気持ちで塗り固めたくない」と言いました。悲しいときに「悲しいです」とそのまま言うと、中には興ざめする人もいると思うんです。あえて真逆の表現をしたほうがちゃんと感情が伝わると思ったので、ちょっと派手に聴こえるようなセクションを作ったり、キレイに聴こえるようなオケを入れたり、コントラストを考えました。

YORKE.(Painter)

──だからこそリアルというか。そもそも感情って単純じゃないですもんね。そこは、歌詞に関しても言えると思います。

YORKE. そうだね。「Rage on」(テレビアニメ「Free!」オープニングテーマを表題曲とした7thシングル。2013年7月にリリースされた)のアニメ版のジャケットを見てもらうとね、この曲の意味がわかると思うんだ。これ、アニメ版を作るとき、すごく大変だったんですよ。アニメーターと仕事したんですけど、「アニメーターは決められた通り線を引いて色を塗っているから、自由に描いているYORKE.がうらやましい」って言ってたなあ。でも僕は、逆に決められた通りにはできないから、彼がうらやましかった。その2人がぶつかったときに、果たして新しいものができたのかなって、今も考えていて。これは違うアニメのタイアップだけど、そのときのことをそのまま手紙のように作詞した感じです。

──聴きどころが満載の1枚になりました。現在ツアーの真っ最中ですが、来年4月から新しいツアーも始まりますね。

YORKE. 今はアルバムをテーマに回っているんですが、来年のツアーでは、また強く成長した世界観を体感してもらいたいですね。

Ta_2 来年のツアーは会場の規模も大きくなるので、違ったセットや世界を見られると思います。楽しみにしていてほしいです。

ツアー情報

OLDCODEX "LADDERLESS" Tour 2019(※終了分は割愛)
  • 2019年11月30日(土)香川県 高松festhalle
  • 2019年12月1日(日)広島県 BLUE LIVE HIROSHIMA
  • 2019年12月14日(土)神奈川県 Yokohama Bay Hall
  • 2019年12月15日(日)神奈川県 Yokohama Bay Hall
OLDCODEX Tour 2020
  • 2020年4月25日(土)北海道 Zepp Sapporo
  • 2020年5月8日(金)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
  • 2020年5月9日(土)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
  • 2020年5月23日(土)大阪府 Zepp Osaka Bayside
  • 2020年5月24日(日)大阪府 Zepp Osaka Bayside
  • 2020年5月30日(土)福岡県 Zepp Fukuoka
  • 2020年6月3日(水)愛知県 Zepp Nagoya
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