音楽ナタリー Power Push - 奥華子

10周年を経て初めて見せた顔

毎日食べて飽きてきたけど「やっぱりまた食べたい」

──今回のシングルは両A面で、もう1曲の「最後のキス」は奥さんの王道とも言える失恋バラードになっていますね。

はい。今回は奥華子っぽい曲をもう1つのタイトル曲にしたかったんです。これ、曲自体はけっこう昔からあって、温めていたんです。シングルを出すたびに毎回候補曲にはなっていたんですけど、曲として納得行かない部分がずっとあったから、中途半端には出したくない思いが強かった。今回、サビを全部変えて、歌詞もだいぶ直したことで納得の行く形になったので、作品に収録することにしました。

──転調するサビが奥さんらしい感じですよね。

そうですよね。この曲のAメロをすごく気に入っていたので、そこは変えたくなかったんです。でもAメロからの流れで考えるとどうしてもサビのキーが低くなってしまうから、流れを考えずにサビだけ新たに作って。で、いいサビができたからそれをどう組み合わせるかって考えたときに、これは転調するしかないなと(笑)。結果、いい仕上がりになったと思いますね。

──アレンジはご自身の名義になっていますね。

奥華子

これは信頼するミュージシャンの方々に来ていただいて、私の弾くピアノに合わせて演奏してもらったんですよ。だから奥華子名義にはなっていますけど、各パートのミュージシャンの方に引っ張ってもらって完成しました。歌なしで同時録音するからものすごい緊張感だと思うんですけど、3テイクくらいでできちゃいましたね。

──歌詞の世界観も奥さんの得意とするところで。

うん。「また失恋か」みたいな気持ちは自分でもありますよ。でも毎日食べて飽きてきたけど「やっぱりまた食べたい」みたいな感覚ってあるじゃないですか(笑)。似たようなことを歌っている曲もあるんだけど、それが落ち着くっていう。そういう意味ではどこを取っても自分らしい曲だなって思いますね。メロディの音の数が少ないから歌詞を書くのはすごく難しいんですけどね。短い言葉で言いたいことを全部伝えなきゃいけないから。

ここからは落ち着いて

──2つのタイトル曲のミュージックビデオはどちらも沖縄県で撮影されたそうですね。

はい。「キミの花」では初めてバンドをバックに、外で飛び跳ねながら歌ってます。で、「最後のキス」はグランドピアノで弾き語りをしました。崖っぷちで歌ってるので「土曜ワイド劇場」みたいな感じもしますけど(笑)。曲の雰囲気同様、対照的なMVになったと思います。

──そして通常盤には「積木」という曲も収録されています。これはかなり初期の曲をレコーディングし直したんですよね。

そうなんですよ。インディーズ時代の曲で。ライブでもほとんどやっていなかったので誰も知らないような曲だったんですけど、昨年の全曲ライブで歌ったことで「CD音源にしてほしい」って言ってくださる方も増えたので、ぜひ入れようと。私としてもインディーズ時代の曲を録り直して、シングルのカップリングにどんどん入れたい気持ちがあるんです。

──曲ができた当時のことって覚えてます?

どうやって作ったかは思い出せないんですけど、歌詞を見ると「今だったらこうは書かないな」っていう初々しさはありますね。これ、高校生時代の恋愛のことを書いてるんですけど、相手にすがりついてるというか、なんか怖いんですよ(笑)。

──あははは(笑)。2人の関係が崩れてしまわないように「ボンドで固める」とか。

そうそう! 「遠くからあなたを見守ってるよ」とか怖いこと言ってるし。歌詞だけ見ると、完全にストーカーの曲ですよね(笑)。でも曲は軽快で明るい感じなので、普通に聴いてもらえるかなとは思いますけど。ちなみにこの曲のアレンジは自分で打ち込んで作りました。全部手弾きなので、そのグルーヴがいい感じのチープさを出してますね。思い切り自己満足で楽しんで作れました。

──今後のライブでは聴ける機会も増えそうですかね。

奥華子

シングルの発売記念ライブとかでは歌うと思いますけど、基本的にはそんなにやらないと思いますよ。ライブ映えしない曲なんで(笑)。CDにしたことで日の目を見せてあげることができたんで、それでいいかなって。

──では最後に、2017年はここからどんなふうに活動していきたいですか?

ここ2年くらいは10周年っていうことでお祭り的な感じだったので、ここからは落ち着いて活動していきたい気持ちはあります。ひさしぶりにアルバムを作って、それを持ってツアーも回りたいですし。

──前回のアルバム「プリズム」は2015年のリリースでしたからね。ファンの期待も高まってると思います。曲はどんどんできている状況ですか?

全然できてないのでこれから作ります。ただ、シングルのときに何曲も作るので、まだ出したい曲はいろいろあるんですよ。だから大丈夫だと思います。たぶん(笑)。

ニューシングル「キミの花 / 最後のキス」 / 2017年2月22日発売 / ポニーキャニオン
通常盤 [CD] / 1200円 /PCCA-04484
セイレン盤 [CD] / 1000円 / PCCA-70498
通常盤収録曲
  1. キミの花
  2. 最後のキス
  3. 積木
  4. キミの花(Instrumental)
  5. 最後のキス(Instrumental)
セイレン盤収録曲
  1. キミの花
  2. 最後のキス
  3. キミの花(Instrumental)
  4. 最後のキス(Instrumental)

「キミの花 / 最後のキス」リリースイベント

  • 2017年2月25日(土)神奈川県 ビナウォーク
  • 2017年2月26日(日)千葉県 ららぽーとTOKYO-BAY
  • 2017年3月2日(木)愛知県 アスナル金山
  • 2017年3月3日(金)兵庫県 ミント神戸
奥華子(オクハナコ)
奥華子

“10万人が足を止めた魔法の声”と称されるシンガーソングライター。キーボード弾き語りによる駅前路上ライブを2004年に渋谷でスタートさせる。1年間に2万枚の自主制作CDを手売りするなどの驚異的な集客力が話題となり、2005年7月にシングル「やさしい花」でメジャーデビュー。2006年には劇場版アニメ「時をかける少女」の主題歌に「ガーネット」、挿入歌に「変わらないもの」が採用されスマッシュヒットとなる。2011年4月には東日本大震災を受け制作された新曲「君の笑顔」をデジタル配信。この楽曲の収益全額は被災者および被災地の復興支援、そして今後必要とされる活動のために寄付された。2012年10月には初のベストアルバム「奥華子BEST -My Letters-」をリリース。2016年夏には、デビュー10周年を記念して奥華子がこれまで発表してきた150曲を超える全楽曲を弾き語りで披露するライブツアー「奥華子 10周年ありがとう!弾き語り全曲ライブ!」を全国4都市で開催した。2017年2月にテレビアニメ「セイレン」のオープニング曲を含む両A面シングル「キミの花 / 最後のキス」を発表。