音楽ナタリー Power Push - 奥華子
10周年を経て初めて見せた顔
明るい雰囲気の曲も実はあるんですよ
──今回シングルリリースされた新曲「キミの花」は、テレビアニメ「セイレン」のオープニングテーマとして使用されています。奥さんの楽曲がアニメ主題歌になるのは「ガーネット」以来ですね。
はい。そういうことも含め、また新しい風が吹いた感じが自分的にはありました。CMソングとかもそうですけど、何かに向けて曲を作るのはすごく好きなんですよ。自分から一歩離れて客観的に作れる部分があるので。なので今回もあっという間にできました。ピアノに向かって歌詞も曲も同時に作っていった感じです。そんなに奥華子っぽくない雰囲気ではあるんですけど、アニメチームの方がすごく気に入ってくださったのでよかったです。
──その「奥華子っぽくない雰囲気」は狙ったものなんですか?
いや、狙ってはないです。アニメのことだけを考えて作ったらこうなったというか。まあ、でも今までの私にあまりないタイプの曲ではあるけど、全然なくもないっていう感じですしね。要素的にこういう明るい雰囲気の曲も実はあるんですよ、奥華子には(笑)。
──はい、存じ上げております(笑)。
それが今回はアニメをきっかけに全面に出せたっていう。シングルのタイトル曲でそういう部分が全面に出たのは初めてだと思いますけどね。17枚目のシングルにして(笑)。
──歌詞は「セイレン」という作品にグッと寄せられていますね。恋する男子の甘酸っぱい思いが描かれていて。
脚本を見せていただいたときに、ちょっとハジけきれない主人公の男の子の気持ちにすごく共感できたんですよ。青春物語ではあるけどもうちょっとマニアックというか、妄想癖のある主人公だったりするので、そういう部分を思いながら書きました。だから、ホントにもう「『セイレン』の曲!」っていう感じです。
──この曲に出てくる男子は憧れの女子を“一つだけの花”に例えて、恋心をこっそり募らせています。
そう。「俺に付いて来い!」っていうタイプじゃなく、「僕だって恋したいんだ」みたいな男の子ですからね。
──ただ曲のタイトルからは、男子の強い願望も見えてきた気がしたんですよ。「僕も“キミの花”になりたいんだ」っていう。
ほお。
──あ、全然違うみたいですね(笑)。
ああ、なるほど。そういうことか。自分も“花”だってことですね。私の場合、タイトルはわかりやすいほうがいいと思っているんで、「キミという花」を短くして「キミの花」にしたんですけど、確かに意味合いは全然変わってきますよね……そういうことにしていいですか?(笑)
──あははは(笑)。まあ、そういう受け取り方もできるということで。サウンドは、バンド感があって爽快な感じですね。
「冬花火」(2014年リリース)のときからいろいろやってもらっている森本(隆寛)くんにアレンジをお願いしました。彼とは感覚が似ているというか。私が「こうなったらいいな」って思っていると、言わずともそうしてきてくれるんですよ。だからすごくスムーズ。ギター、ベース、ドラムを彼1人が演奏してくれたおかげでサウンドに一体感が出てると思いますね。
──歌に関してはいかがでしたか?
この曲はAメロのキーがすごく低いんで、滑舌をよくしないと何を言ってるかわからなくなっちゃうんです。なので、そこは気を付けながら歌いました。全体的にけっこううまくいったと思います。最近は1人でPro Toolsに歌を録ることが多いんですけど、今回も1人でノリノリで歌ってました(笑)。
──スタジオで歌録りをしない理由はあるんですか?
スタジオだと時間が決まっていたりするじゃないですか。うまい人だとその時間内できっちり終わらせられると思うんですけど、私の場合はホントに何十回も歌うので、時間の制約がないほうがいいんです。ちなみにこの曲は、歌もサウンドもワンコーラス分を先に録ったんですよ。
──テレビで使われる分を先に。
そう。で、それをそのまま使いつつ、ほかの部分をあとで足していったんです。だから作業的には難しかったんですけど、歌は2番のほうがうまくなってます(笑)。完成までに何回も歌い重ねたので。ちゃんと聴くと1番と2番の差はわかると思いますよ。
──え、でもそんなに劇的に変わっている印象はないですよね。
いやいや、全然違うんですよ、自分的には(笑)。うまいことつながったなとは思いますけどね。
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- ニューシングル「キミの花 / 最後のキス」 / 2017年2月22日発売 / ポニーキャニオン
- 通常盤 [CD] / 1200円 /PCCA-04484
- セイレン盤 [CD] / 1000円 / PCCA-70498
通常盤収録曲
- キミの花
- 最後のキス
- 積木
- キミの花(Instrumental)
- 最後のキス(Instrumental)
セイレン盤収録曲
- キミの花
- 最後のキス
- キミの花(Instrumental)
- 最後のキス(Instrumental)
「キミの花 / 最後のキス」リリースイベント
- 2017年2月25日(土)神奈川県 ビナウォーク
- 2017年2月26日(日)千葉県 ららぽーとTOKYO-BAY
- 2017年3月2日(木)愛知県 アスナル金山
- 2017年3月3日(金)兵庫県 ミント神戸
奥華子(オクハナコ)
“10万人が足を止めた魔法の声”と称されるシンガーソングライター。キーボード弾き語りによる駅前路上ライブを2004年に渋谷でスタートさせる。1年間に2万枚の自主制作CDを手売りするなどの驚異的な集客力が話題となり、2005年7月にシングル「やさしい花」でメジャーデビュー。2006年には劇場版アニメ「時をかける少女」の主題歌に「ガーネット」、挿入歌に「変わらないもの」が採用されスマッシュヒットとなる。2011年4月には東日本大震災を受け制作された新曲「君の笑顔」をデジタル配信。この楽曲の収益全額は被災者および被災地の復興支援、そして今後必要とされる活動のために寄付された。2012年10月には初のベストアルバム「奥華子BEST -My Letters-」をリリース。2016年夏には、デビュー10周年を記念して奥華子がこれまで発表してきた150曲を超える全楽曲を弾き語りで披露するライブツアー「奥華子 10周年ありがとう!弾き語り全曲ライブ!」を全国4都市で開催した。2017年2月にテレビアニメ「セイレン」のオープニング曲を含む両A面シングル「キミの花 / 最後のキス」を発表。