ナタリー PowerPush - 奥華子

一歩前進するための「good-bye」

「奥華子としてもう一回、一からやろう」っていう気持ちがあった

──そして今回、6枚目のアルバム「good-bye」がリリースされるわけですが、この制作はいつ頃からスタートさせたんですか?

昨年秋に学園祭ライブがあったので、それが終わってからですね。11月、12月、今年の1月と、短期間に集中して作っていきました。こういうアルバムにしようとか、タイトルはこうしようとか、そういうことをまったく考えずに、思うがままに作っていった感じです。いつもと同じ感じで。

──とは言え、できあがったアルバムにはいつもとは違った空気が満ちているような気がします。

曲の作り方はそんなに変わらないんですけど、アレンジの方向性はちょっと違うかもしれないですね。今までは自分が弾き語りで録ったものに音を付け加えていただくっていうアレンジの形が基本スタイルだったんです。だけど今回は、アレンジャーさんにピアノ自体も弾いてもらって丸ごとお任せっていうふうに委ねた曲が多いんですよ。それは先行シングルの「シンデレラ」ですごく振り切ったアレンジにしてもらったことがきっかけにもなっているんですけど。

──「シンデレラ」は昨年6月にリリースするはずだったとおっしゃっていましたが、そのタイミングからそういう新しいアレンジの方向性が見えていたということですか?

いえ、6月に出そうとしてたものと、今年の1月にリリースしたものではアレンジが違うんですよ。リリースを延期したことで時間ができたので、もっといい形で出そう、もっと振り切ったものにしようっていうことになったんです。

──この曲は島田昌典さんによるアレンジで、今までにないくらいキラキラした仕上がりになっていますよね。

インタビュー写真

間口が広がりましたよね。曲の持つポップスのエッセンスをより濃くしていただいた感じがします。なんかね、「奥華子としてもう一回、一からやろう」っていう気持ちがあったんですよ。やっぱり震災があったことでいろんなことが変わって、世の中的にいろんなことがリセットされることが多かったと思うんです。それが私自身の心境と一致したのも大きかったと思います。

──なるほど。震災を経て、そういう気持ちの面での変化もあったというわけですね。

そうですね、うん。だから今回は曲によって、いろんなやり方ができたんです。この曲はアレンジャーさんに委ねてみようとか、この曲は弾き語りで自己完結にしようとか、1曲に対する方向決めに時間をかけることができたので迷わずに進められました。

バンド曲はツアーで得た信頼感があったからこそ生まれた音

──今回のアルバムにはバンドの一体感が心地良い曲も多いですね。

バンドで録るっていうのは今までにもあったんですけど、昨年末にバンドツアーをやったことが今回はすごく影響してると思います。そのツアーのメンバーで録音した曲がいくつかあって、それはライブで得た信頼感があったからこそ生まれた音になってると思うんですよ。曲で言うと、「ロスタイム」「愛してた」「TAKOYAKI」「GOOD BYE!」がそうなんですけど。ほかのメンバーだったらこうはいかなかったなって。

──現場でのセッション感みたいなものは「TAKOYAKI」で特に感じることができました。

インタビュー写真

スタジオに入る前にこんな形にしようっていうシミュレーションはしてるんですけど、実際に録り始めるとそこで新しいアイデアが生まれて、ああでもないこうでもないって言いながらできあがっていったので、すごくリアルタイム感がありますね。曲調としても、こういうCMソングっぽい雰囲気の曲って今まではアルバムに入れてなかったので、新鮮な感じもあります。

──そして愛してた」はめちゃくちゃ大人っぽいですよね。

大人なんで!(笑)

──アハハハ、そうですよね(笑)。すごく好きです、この曲。

等身大ですね、この曲は一番。33歳の私っぽい。ほかの曲では意識して「こういう曲を作ろう」っていう感じがあるので。

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CD収録曲
  1. ロスタイム
  2. 年上の彼
  3. 二人記念日
  4. シンデレラ
  5. サヨナラは言わないまま
  6. 春色の空
  7. 君の笑顔 (album ver.)
  8. TAKOYAKI
  9. 君にありがとう
  10. 愛してた
  11. 卒業の時 (弾き語り ver.)
  12. GOOD BYE!
  13. 悲しみだけで生きないで
  14. 足跡
奥華子(おくはなこ)

メガネがトレードマークの、キーボード弾き語りシンガーソングライター。2004年2月にスタートした駅前路上ライブで1年間に2万枚のCDを手売りするなどの驚異的な集客力が話題となり、2005年7月にシングル「やさしい花」でメジャーデビュー。2006年には劇場版アニメ「時をかける少女」の主題歌に「ガーネット」、挿入歌に「変わらないもの」が起用されスマッシュヒットとなる。2010年3月発売のシングル「初恋」は自身初のオリコンウィークリーチャート初登場10位を記録。CMソングも多く手がけており、その飾らない歌声は幅広い層からの支持を集めている。2011年4月には東日本大震災を受け制作された新曲「君の笑顔」をデジタル配信。この楽曲の収益全額は被災者および被災地の復興支援、そして今後必要とされる活動のために寄付された。2012年1月には1年半ぶりのシングル「シンデレラ」、2月には通算6枚目のオリジナルアルバム「good-bye」を立て続けにリリース。