ナタリー PowerPush - 奥華子
デビュー5周年で見せる「たかが奥華子」の本気
3月にリリースされたシングル「初恋」が自身初のオリコンウィークリーチャートトップ10入りを果たし、7月19日には3年5カ月ぶりとなる大阪城野音ライブを超満員で大成功させた奥華子。デビュー5周年を迎え、これまで以上に多くの人のもとへとその歌声が響き始めている中、新たなアイテムが2作連続で届けられる。
PSPソフト「テイルズ オブ ファンタジア なりきりダンジョンX」のテーマソングとなっているシングル「ガラスの花」と、ヒットシングル「初恋」を含む全14曲を収録した5枚目のアルバム「うたかた」。
5周年を迎えた今の心境から、それぞれの作品に込めた思い、そして9月からスタートする弾き語りツアーへの意気込みまで話を聴いた。
取材・文/もりひでゆき
デビューからの5年間は自分との戦いだった
──7月27日でデビューからまるっと5年が経ちましたね。
早いですねぇ。5年ってあっという間だなって思いました、振り返ってみると。それだけ、ものすごく濃かったというか。毎日、やらなければいけないこととやりたいことがやってくる感じで。そういう意味では時間との戦いだった部分もあるんですけど。
──やりたいことを確実にやれてきた5年でした?
んー、どうだろう。でも、やりたくないことはやってこなかったなって思います。それはすごく大事。奥華子として、それをやったら奥華子じゃなくなるみたいな、そういうことをやらないっていうのは守ってこれましたね。周りの人のおかげだと思うんですけど。
──音楽に対する気持ちに変化はありました?
やっぱり甘くないなっていうのは思うようになりました。自分との戦いでもあるし、難しい部分がいっぱいあるなって。そう考えると、これから5年間やっていけるかな、みたいな(笑)。
──気持ちが折れそうになってしまう瞬間もあったり?
いっつもですよ! 今回のアルバムでも曲がほんとにできなくって。もう歌うことをやめようかって思うぐらいひどかったんですよ。でも、結局はそういうことの繰り返しなんですよね。できてしまうと「あ、いけるじゃん!」みたいな(笑)。で、ライブで聴いてもらって「感動しました」とか言ってもらえると、それがもううれしいし。
──その連鎖で走り続けられる感じなんですね。
ほんとそうですね。だから私の場合、歌が大好きで、作ることが大好きでっていうこと以前に、誰かが感動してくれたり喜んでくれたりすることで自分の価値を見出せるタイプなので、どう聴いてもらえるかっていうのがすごく大事なんです。
──そういう意味では、前シングル「初恋」が初のトップ10入りを果たしたっていうのは、大きな出来事だったんじゃないですか?
うれしかったですね。今まで以上に若い世代の方に知ってもらえたっていう感じはありましたし、年齢関係なく、幅広い世代の方にこの「初恋」という曲は聴いてもらえて支持してもらえたんだなぁって。ただ、トップ10に入ったっていうことで何かが大きく変わったりとか、気持ちが変わったりっていうことはそんなになかったですけどね。
ゲームのテーマソングはCMソングと似ている
──そんな状況の中、6年目一発目のシングル「ガラスの花」がリリースされました。
はい。これはゲーム(PSPソフト「テイルズ オブ ファンタジア なりきりダンジョンX」)のテーマソングになっているんですけど、台本をガッツリ読ませていただいて、その世界に入り込んで作らせてもらった曲ですね。ゲームのテーマが、自分の生きる道を探していくっていうような普遍的なものだったので、そこをいかにリンクさせられるかなっていうのを意識して。そこはある意味CMソングと共通してるんですけど、求められるものに対して、どれだけ自分の力で近づけるかみたいな。やることがすごく明確な感じでした。
──そういう曲の作り方は得意?
得意というか好きですね。だから思い切りやれた感じはあります。アレンジも含めて。
──サウンドはすごくドラマチックな仕上がりですよね。
奥華子が作ってる時点で奥華子っぽい曲ではあるんですけど、もしゲームのタイアップがなかったとしたらこんなにアレンジを激しくはしてないだろうなとか、そういう部分でゲームの世界に寄せた感じはあります。やっぱり自分以外の要素が入ると新しい何かが生まれるというか。それがすごく楽しかったです。
──歌詞はどうでした?
歌詞の世界はそんなに普段とかけ離れてない書き方をしてると思うんですけど、「戦い」のようなワードは自分の中からは出てこなかったと思うので、そういう部分ではゲームに作らせてもらった感じはやっぱりしますね。あ、でもけっこう難しかったんだ。ゲームの舞台が現代じゃないので、ケータイとか缶ジュースとか、そういう単語を使えないんですよ。私の歌詞って、そういう名詞を使うことが多いので、それが難しくて。だからより心情を歌ってる曲になったというか。
──とは言え、ファンタジーに寄りすぎているわけではないし、絶妙なバランスで奥さんらしい歌詞だと思いました。
そうですね。やっぱりゲームをしない人に聴いてもらってもいいものにしたいとは思っていたので。限定する言葉が少ない分、いろんなとらえ方をしてもらえる曲になったような気がします。
CD収録曲
- ガラスの花
- トランプ
- 初恋(Live ver.)
- 一番星(Live ver.)
- ガラスの花(Instrumental)
CD収録曲
- ガラスの花
- 初恋(Live ver.)
- 変わらないもの(Live ver.)
- ガラスの花(弾き語り ver.)
- ガラスの花(Instrumental)
DVD収録内容
- 「テイルズ オブ ファンタジア なりきりダンジョンX」トレーラームービー ほか
奥華子(おくはなこ)
赤いメガネがトレードマークの、キーボード弾き語りシンガーソングライター。2004年2月にスタートした駅前路上ライブで1年間に2万枚のCDを手売りするなどの驚異的な集客力が話題となり、2005年7月にシングル「やさしい花」でメジャーデビュー。2006年には劇場版アニメ「時をかける少女」の主題歌に「ガーネット」、挿入歌に「変わらないもの」が起用されスマッシュヒットとなる。2010年3月発売のシングル「初恋」は自身初のオリコンウィークリーチャート初登場10位を記録。CMソングも多く手がけており、その飾らない歌声は幅広い層からの支持を集めている。