音楽ナタリー Power Push - 沖野俊太郎×小山田圭吾
「またバンドやろう」盟友2人の語らい
元Venus Peterの沖野俊太郎が、Shuntaro Okino名義で約15年ぶりとなるソロアルバム「F-A-R」をリリースした。
セルフプロデュースでレコーディングされた全14曲で構成の今作は、沖野のルーツも詰め込んだこだわりの1作。開放感のあるサウンドも魅力で、現在の彼の前向きなモードを感じることができる。
なお沖野は今後、リミックス作品をリリース予定とのことで、その中には小山田圭吾が手がけるアルバム収録曲「この夜にさよなら[kono yoru ni sayonara]」のリミックス音源が収められるという。これを記念して音楽ナタリーでは、かつて沖野とともにvelludoとして活動し、現在も沖野と付き合いのある小山田を迎えての対談を企画。出会いから、お互いの音楽に対する思い、そしてこれからについてじっくり語ってもらった。
なお小山田の手がけたリミックス音源は追ってリリース予定だが、現在沖野の期間限定Twitterアカウント(@FAR_OKISHUN)ではアルバムのリリースにあわせてフォロワーにこの音源を公開する施策を行っている。ファンは2人の対談とあわせてこちらもぜひチェックしてほしい。
取材・文 / 土屋恵介 撮影 / 上山陽介
沖野から持ちかけた「一緒にバンドやろう」
──まずは、お2人が出会ったときの話から聞かせてもらえますか?
小山田 出会いは、井上由紀子(元フリッパーズ・ギター。現在は雑誌「nero」編集長)さんの家だよね。
沖野 そうそう。俺が原宿かどこか歩いてたら、井上さんが急に「一緒にバンドやりませんか」って話しかけてきたのね。あの人のパワーはすごいから「この人といたら、何かあるのかな」と思ってついていったんだよ(笑)。俺、当時ほかにもバンドはやってたんだけどね。
小山田 モッズバンドのShoutだよね。
沖野 そう。そこから、井上さんのバンドのギターとしてメンバーになったのね。もう1人、太田くんって人も入ってきたんだけど。
小山田 で、太田くんは、僕とも知り合いだったの。太田くんが別の高校のハードコアバンドのベースをやってて、僕は自分の学校のパンクバンドを手伝ってて。その辺の高校生が集まって、ジャムスタ(新宿JAM)でライブやったときの対バン相手だった。
沖野 そうそう。俺が井上さん家に呼ばれて行ったら、太田くんもいて。井上さんが読んでた「ポパイ」の街角スナップに小山田くんが出てて、「私、ボーカル、この子がいい」って言ったのね。そしたら太田くんが「知ってるよ」って。
小山田 で、いきなり太田くんから電話がかかってきて、「バンドやろうよ」って言われたんだよ(笑)。僕は、高校卒業してセツ(・モードセミナー)は行ってたけどバンドはやってなかったから、断る理由もなくて。でも、「どうなんだろう」って思って井上さん家に行ったら沖野くんがいたの。
沖野 俺が20歳で、小山田くんが18歳くらいだよね。
──そこから沖野さんがボーカル、小山田さんがギターという編成のvelludoは、どうやって結成されたんですか?
小山田 実は井上さんに「バンドやろう」って話をされたんだけど、僕も沖野くんもそんなにピンとこなくて。
沖野 当時、井上さんは、プラスチックスとかテクノポップ系の音楽が好きだったんだよね。
小山田 そうそう。でも僕はその頃UKインディとか聴いてたから、ちょっと違うなって。でも沖野くんとは話が合ったのね。そのとき、沖野くんがThe Doorsの「Break On Through (To the Other Side)」を、打ち込みでカバーしたテープを聴かせてくれて、カッコいいなと思って。
沖野 逆に俺はUKインディとか知らなかったの。1960年代のThe Velvet Underground、The Doors、The Beatles、The Rolling Stonesとかが好きで。Echo & the Bunnymenくらいは知ってたけど、UKのインディバンドは小山田くんに教わったんだよね。
小山田 音楽の話も合うし、沖野くんから「一緒にバンドやろう」って言われたのをきっかけにvelludoをやることになったんです。
velludoは反応ゼロ
──velludoは「Self Love Portrait」というシングルを1枚出してますよね。
沖野 たまたま、俺の友達の彼氏がインディレーベルをやってて。
小山田 それで「音源出すか」っていきなりレコーディングしたんだよね。
──結成してすぐのことですか?
小山田 うん。あとvelludoは自分たちでライブのブッキングはしてなかったよね。ほぼレーベルのイベントにしか出てなかったし。そもそもvelludoってライブ何回やった?
沖野 少ないよ。3回くらいじゃない?
小山田 いや、6回くらいはやったでしょ(笑)。ブッキングがレーベルの人だったから、対バンがうちらと全然違うタイプのバンドばっかりで。まだバンドブームの名残りもあったし、サイコビリーのバンドとやったり。
──80年代後半って全然違うジャンルのアーティスト同士の対バンイベントが多かったですよね。
小山田 そうそう。だから、全然対バンと仲よくなったりしてないよね。
沖野 うん。今はあまり考えらんないだろうけど、そういう時代だったよね。
小山田 だからライブやっても、うちらを観に来る人はほとんどいないし、お客さんも全部で10~20人くらい。曲をやってもシーンってなんのリアクションもなくて(笑)。
沖野 反応ゼロ(笑)。今、思い出したけど、ライブの前に俺が小山田くん家のポストに頭ぶつけて、すげえ血が出て何針も縫ったことがあったんだよ。唯一YouTubeに上がってるvelludoの映像があるんだけど、俺が帽子かぶってるのはそのせいで。あれはシャレになんなかった(笑)。
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収録曲
- 声はパワー [koe wa power]
- The Light
- この夜にさよなら[kono yoru ni sayonara]
- We Are Stories
- The Love Sick (album edit)
- Swayed
- Summer Rain
- Welcome To My World
- CPU Song
- Daydream Of You
- Moon River No.1
- I'm Alright, Are You Okay
- When Tomorrow Ends
- Mood Two
アルバム「F-A-R」発売記念企画
11月11~26日の期間限定で、アルバム「F-A-R」の収録曲「この夜にさよなら[kono yoru ni sayonara]」の小山田圭吾リミックスバージョンが聴けるTwitterキャンペーンを実施中。
- 期間限定Twitterアカウント「@FAR_OKISHUN」をフォロー。
- 「@FAR_OKISHUN」のつぶやきをRTする。
- 後日、RTした方全員に、「@FAR_OKISHUN」から「この夜にさよなら[kono yoru ni sayonara]」のリミックスバージョンが聴ける試聴URLがTwitterのダイレクトメッセージで届きます。
沖野俊太郎(オキノシュンタロウ)
1967年東京生まれ。学生時代からバンド活動を始め、1988年に小山田圭吾とvelludoを結成する。レコードデビューを果たすも、沖野が渡米したためバンドは解散。その後ロンドンに滞在したのち、1990年にVenus Peterに加入しボーカル兼ギターとして活躍する。1994年にVenus Peterが解散したあとはソロに転向し、2000年よりソロユニットIndianRope名義での活動も展開。ほかのアーティストへの楽曲提供や、アニメのテーマ曲や挿入歌も手がける。2005年に1年限定でVenus Peterを再結成し、2006年9月にアルバム「Crystalized」を発表している。多角的な活動を行う中、2015年11月にソロとしては約15年ぶりとなるアルバム「F-A-R」をリリース。
- okinoshuntaro.com 沖野俊太郎オフィシャルサイト
- Shuntaro Okino | Free Listening on SoundCloud
- Shuntaro Okino/沖野俊太郎(@okinoshuntaro) | Twitter
- Shuntaro Okino | Facebook
- 沖野俊太郎の記事まとめ
Cornelius(コーネリアス)
小山田圭吾によるソロユニット。1991年のフリッパーズ・ギター解散後、1993年からCornelius名義で音楽活動を開始する。アルバム「THE FIRST QUESTION AWARD」「69/96」は大ヒットを記録し、当時の渋谷系ムーブメントをリードする存在に。1997年の3rdアルバム「FANTASMA」、続く4thアルバム「POINT」は世界21カ国でリリースされ、バンドThe Cornelius Groupを率いてワールドツアーを行うなどグローバルな活動を展開。2006年のアルバム「Sensuous」発売に伴う映像作品集「Sensurround + B-sides」は米国「第51回グラミー賞」最優秀サラウンド・サウンド・アルバム賞にノミネートされた。現在、自身の活動以外にも国内外多数のアーティストとのコラボレーションやリミックス、プロデュースなど幅広いフィールドで活動を続けている。2015年8月には、近年手がけた楽曲を自身のセレクトで厳選収録した編集盤「Constellations Of Music」をリリース。