岡崎体育|祝メジャーデビュー5周年!「OT WORKS II」全曲解説で紐解く仕事術

10 街角トワイライト

──「街角トワイライト」では鈴木雅之さんとデュエットされています。このコラボが発表されたときは意外な組み合わせに驚きました。

岡崎体育

オファーはマーチンさんからいただいたんですが、当時お会いしたことがなかったのにお声がけいただいてむちゃくちゃ光栄に感じつつ「なんで僕が?」と思った記憶があります。それと最初は編曲だけのお話だったんですが、「岡崎体育さんも歌ってください」とリクエストをいただいたので断れないなと。

──緊張感のあるお仕事だったわけですね。

この曲を新しく生まれ変わらせようとか大それた気持ちはなかったですけど、ありがたいお話なので全力でやりました。着地点を考えず、音を肉付けしていって完成したという感じで、ここまでほかのアーティストの方の楽曲をアレンジしたことがなかったので挑戦でもありました。

──オリジナルバージョンは1981年リリースなので岡崎体育さんが生まれる前ですね。お母さん世代にはなじみがある1曲でしょうか。

そうなんです。お話をいただいたときにオカンがめちゃくちゃ喜んでくれて、「マーチンとあんたがデュエット!?」って。オカンには「マーチンと比べてやっぱあんたの歌ひどいな」と言われましたけど、親孝行にはなったかな。

11 二人ぼっちの世界

岡崎体育

──サンボマスターのトリビュートアルバムに収録されている1曲ですが、リリース当時、木内泰史(Dr)さんが「震えるくらいに素晴らしい曲になってまして、正直僕らもこのアレンジでやりたいです」とコメントされていました。

えー、うれしい!

──この曲はピアノと歌だけのそぎ落とされたアレンジで、音数が少ないがゆえに印象に残るというか。あえて感情を押し殺しているような歌い方も、歌詞の切なさや情熱的な部分を際立たせているように感じました。

「二人ぼっちの世界」はもともと大好きな曲だったので、それを岡崎体育流の新解釈でアレンジできたらいいなと思いました。ピアノバラードにすることでほかとの差別化ができるんじゃないかと考えたんです。僕はトリビュートアルバムに参加するときだけじゃなくて、フェスに出演するときなんかでもMVPを狙うようにしていて。「岡崎体育のライブがよかった」「岡崎体育の曲が一番よかった」と言ってもらえるように常に考えているんです。この曲については伊澤一葉さんとご一緒できたのもうれしかったですね。僕はピアノのアレンジに関して彼の右に出る人はいないと思っているんです。ダメ元でオファーしたら快諾してくださって、タッグを組めたのもよかったです。

12 化かしHOUR NIGHT

──「OT WORKS II」の最後を飾るビッケブランカさんとのコラボ曲「化かしHOUR NIGHT」については以前対談でたっぷりお話いただいたので(参照:ビッケブランカ VS 岡崎体育「化かしHOUR NIGHT」特集)……今回は岡崎体育さんにとってビッケブランカというアーティストの存在についてお聞きしたいです。

デビューも同時期だし、年齢も近いし、1人で活動しているし共通点も多く……友達でありライバルですね。「化かしHOUR NIGHT」で、「僕らは同じ穴の狢 まるで透明な鏡を見てるみたいだ」と歌うほどお互い意識してはいるんですが、ビッケブランカと岡崎体育を比べたときに明確に違うのがアーティスト性なんです。

──具体的には?

僕の中のイメージでは矢沢永吉さんに近い感じ。スター性がある。いきなり世界が変わったとしてもビッケブランカを“そつなくこなせる”というか。人の顔色を伺ったり、躊躇したりすることが少なくて、肝が据わっている。僕はそうじゃない。

──そうはおっしゃっても岡崎体育さんの場合、時代や状況に応じて自分のアウトプットを変えられるという強みがあるのかなと思うんですが。

ああ、そうかもしれないですね。「化かしHOUR NIGHT」を作ってみて、ビッケブランカとは歌い方、歌詞の書き方とか違うところがあって、それを発見するのが楽しかったです。「OT WORKS II」に収録されている楽曲ではいろんな人とコラボレートしていますが、いずれも自分を見つめ直すようなきっかけになった気がします。

死ぬまでソニーにいる!

──メジャーシーンで5年活動してみて、岡崎体育というアーティストについてご自身ではどう評価されていますか?

うーん、新作をリリースするときのVTRコメントで自分で「リリースしましたー!」って自分でヨイショして手を叩けるタイプだと思います。三枚目いうか。曲に関してもイキってはいない。なんというか、何をやっても恥ずかしいんですよね、岡崎体育は。ヤバイTシャツ屋さんのこやま(Vo, G)とも話したんですが、「こういう曲カッコいいな」と思って普段聴いている音楽を自分の曲としてアウトプットすると気恥ずかしさがあるんです。「こういうのって、アーティストがやることやろな」って思っちゃう。

岡崎体育

──つまりアーティストという自覚はない?

はい。5年経ってもアーティスト、ミュージシャンという自覚は限りなく薄いです。でも、自覚が限りなく薄いことが強みになってるとも思うんですよ。例えば「おはスタ」のレギュラーになれるのも、アーティスト性が薄いからだと自覚していますし。自分のことを客観視しつつ、求められることに応えて、場所ごとに自分を変えることができる。

──そしてもちろんそれに充実感も感じていらっしゃる。

そうですね。年々歌い方やアレンジ、曲調について「岡崎体育っぽい」って言われる機会が増えてめちゃくちゃうれしいんです。そういうとき、世の中の人に認知してもらえてるんだなと感じますね。僕、とにかく曲を作るのが好きなんです。なので岡崎体育と一緒に音楽を作ったら面白いと思ってもらえたらありがたいですし、今後もいろんな方に声をかけてもらえたらうれしいです。

──最後にデビュー5周年以降の目標を教えてください。

これからの目標は……毎年何か当てたい。

──当てたい、ですか?

岡崎体育がこんな曲を出しました!って常にニュースになりたい。それで世間が評価してくれる状況を毎年作りたいですね。「ミュージックビデオ」でデビューして、そのあと「感情のピクセル」「Natural Lips」が話題になって、最近だと「THE FIRST TAKE」で披露した「YES」のパフォーマンスで注目してもらって。岡崎体育を面白いって思ってくれる人がいる。その数を増やしていって「岡崎体育、毎年なんかやっとんな」って世間の人に思ってもらえるようにしたい。それを続けていければ今のポジションで長く音楽ができると思うんです。目標はソニーに在籍し続けることですね。ソニーが手放したがらないようなアーティストになる! 死ぬまでソニーにいる!

岡崎体育