05 孫の代まで
──「孫の代まで」はNHK Eテレ「あはれ!名作くん」のテーマソングとして作られた曲で、岡崎体育さんが作詞作曲だけでなく、編曲、プロデュースも手がけられました。フル尺で1分50秒、「OT WORKS II」の中でも2番目に短い曲です。
「あはれ!名作くん」ってすごくスピード感のある作品なんですよ。それとボケのキャラクターが4、5人いて、ツッコミが1人というはちゃめちゃなアニメなので、言葉が多い歌詞が作品に合うかなと。以前、寿司くん(ヤバイTシャツ屋さん・こやまたくやの映像作家としての名義 / 参照:ベタを大事にする寿司くん | 映像で音楽を奏でる人々 第20回)が作っていた映像作品に10秒、20秒くらいのテーマソングを書かせてもらう機会があったんですが、作業的にはそれに近かったですね。アニメ自体も短いので、テーマソングもギュっとしたものでないといけない。さらに、アニメに出てくるキャラクターのセリフを入れるという課題もあり。短い尺の中で曲として成立させる技術は、寿司くんの作品を通して身に付けた気がします。
──曲名にちなんで、孫の代まで残るような楽曲の条件にはどんなものがあると思いますか?
うーん、J-POPのような流行歌よりは、童謡とか民謡のように何か目的があって歌い継がれるものな気がします。例えば子供が泣いたときにあやす曲とか。だから、子供が泣いたときに歌えば一発で泣き止む曲が作れれば、孫の代まで歌い継がれるんじゃないかな。なので、今後赤ちゃんが泣き止む曲とかを作ってみたいです。
06 今宵よい酔い
──「今宵よい酔い」は2019年に発表された曲でJINROとのタイアップ曲でした。タイアップが発表された当時、「令和時代のお酒の楽しい飲み方を歌った曲」と紹介されていました。
世の中がお酒の飲み方に対して慎重になり始めた時期で、JINROさんはいち早くアルコールハラスメント防止キャンペーンをやっていたんです。そのキャンペーンに合う曲を作ってほしいとオファーをいただいたのを覚えています。今の時代、お酒が飲めない人も増えていますし、お酒が飲めないということが言いやすい状況にはなりつつある。でも、まだまだ会社の忘年会や新年会、大学のサークルの飲み会で飲ませる風潮が残っているので、時代は変わっているということを伝える注意勧告ソングにしました。今後もアルハラだけじゃなくて、パワハラやセクハラなど、世の中のおっさんたちに向けて今の時代に価値観をアップデートしていこうと勧告していきたいと真面目に思ってます。
──歌詞はアルハラ防止の注意喚起的な内容ではあるのですが、サイコキネシスで上司に語りかけるというユニークな手法が使われています。
そこはミュージックビデオの制作を見越して、演者さんに労力がかからないようにしました。一度「パピコ」とのタイアップで「お風呂上がりにパピコを食べる歌」という曲を作ったんですが、歌詞がほぼセリフだったのでリップシンクに苦労して、撮り直しが続いたんですね。だけど、サイコキネシスっていうテイにすれば演者さんも口を動かさないでいいし、撮影もすんなりいくだろうと。まあ、これは僕がよくやる手法ではありますね。脳内に直接語りかけたりとか心の声やったら、MVでリップシンクしなくていいし、練習せんでもいい。そういう横着心からできた曲でもあります。
07 アクティブ10公民テーマソング
──NHK Eテレの「アクティブ10公民」に提供された「アクティブ10公民テーマソング」は現時点で世に出ている岡崎体育史上最短の楽曲でしょうか? 尺は22秒です。
これは10分でできた曲ですね。「アクティブ10公民テーマソング」オンエア時間内に仕上がった感じです。
──何かオーダーはあったんですか?
20秒以内で曲を作ってください、だけでした。アカン、短かすぎて解説することがない……。
08 留学生
──この曲ではMONKEY MAJIKとコラボレーションされていますが、きっかけはなんだったんでしょうか。
メンバーのメイナード(Vo, G)とブレイズ(Vo, G)とNHKの朝ドラ「まんぷく」で共演したことをきっかけに仲よくなって。彼らが京都でワンマンライブを開催したときにお邪魔して、打ち上げにも参加させてもらう機会があったんです。その席で「何か一緒にやりたいね」と言っていただいて、メイナードから「Natural Lips」の逆バージョンをやりたいとリクエストされてできたのが「留学生」。お互い意見を出し合って作った曲ではあるんですが、一番すごいと思ったのが、英語と日本語両方の歌詞が物語になっていて、それがつながっていること。コラボ曲ってお互いのフィーリングでパッと作ってそれがケミストリーを生むところもあると思うんですが、「留学生」に関してはMONKEY MAJIKの皆さんが歌詞の細かい部分まで考えて制作してくれて。デモが上がってきたときも、歌ってるときもすごくキッチリと仕事をされているのを感じて、めちゃくちゃ真面目な方々だなと。それでいてメンバーの皆さんはすごくゆったりしている……日本で作ったというより、例えばハワイでリラックスしながら作ったような感覚でした。自分でも完成度がすごく高い曲だなと思いますし、この曲を聴いたKEITA(橘慶太)さんが「めちゃくちゃいいね」って連絡をくれたんです。それがきっかけで「Tokyo Night Fighter」につながった気がします。
09 Tokyo Night Fighter
──そのKEITAさんとのコラボ曲はかなりシリアスなトーンの1曲で、「東京で成功をつかんで生き抜く人々」がテーマです。
この曲の1番の歌詞はKEITAさんが、2番は僕が書いたんですが、蓋を開けてみたらお互い思っていたことの違いが浮き彫りになりましたね。
──どういうことでしょう?
KEITAさんは、この曲を田舎から出てきてアイドルを目指している女の子が東京でがんばっている歌として書いたらしいんですよ。でも僕は1番の歌詞を読んだときに「絶対ヤクザの歌やん」と思ったので、その設定で書いたらKEITAさんから「ヤクザの歌じゃないよ!」と。でもそれを面白がってくれて、僕の勘違いから最終的にそのままになったという。
──KEITAさんの思惑とは違う楽曲になったと。そういったハプニングもコラボならではかもしれないですね。
そうですね。MVも歌詞に寄せてくれて、KEITAさんが刑事役、僕がヤクザを演じるという内容になりました。
──曲同様かなりシリアスな仕上がりでした。岡崎体育さんから見たKEITAさんってどんな方ですか?
完璧超人ですね。自分ができないことをできるまでやる人で、中途半端で投げ出すことをしない。例えば声変わりする前に歌っていたw-inds.の曲を今も歌えるようにボイストレーニングしたり、編曲も勉強してw-inds.の楽曲を今の日本のスタンダードから飛び抜けた曲にしたり、自分に備わってないものも備えていく人。もう尊敬しかないです。