ベースを買いに行ったのに、9万9000円のDTMソフトを購入
──DTMソフトで作曲を始めたのはどういうきっかけだったんでしょうか? バイオグラフィには2008年に「DTMソフト『CUBASE5』を購入 本格的に作曲を始める」とありますが。
大学時代にバンドを初めて組んだときに、みんな初心者だから、それぞれ弾けそうな楽器を選んでもらったらベースだけ余って。それで僕がベースをやることになったんですよ。でもベースを持ってなかったのでワタナベ楽器店に行ったんですけど、その楽器店が本店とデジタル&ドラム館ってあって。間違ってデジタル&ドラム館に入っちゃったんです。そしたら店員さんにDTMソフトを執拗に勧められ……。「僕、ベースを買いに来たんですけど」って言ったら、「この中にベースの音があるから! これからの時代DTMやで」って9万9000円のソフトを買わされたんです(笑)。それでせっかく買ったし使おうやって話になって。今思えばあのときすんなりベースを買えていたら、普通のバンドをやっていたかもしれませんね。まあ、あとでベースを人から譲ってもらってベースも弾いていたんですけど。
──予定とは違う館に入ったことで運命が変わったと。
ある意味でそうですね。
──当時の作風は?
メッセージソングは一切なく、自分が好きな言葉を並べて叫んだりするだけの曲が多かったですね。今と歌詞の雰囲気は近かったかな。バンドだったので音は全然違いましたけど、「メロディがキャッチーやな」とか「サビ覚えやすいな」とは言われてました。キャッチーなメロディ作りは当時から意識してましたね。
──そもそも音楽を仕事にしたいと思ったのはいつ頃だったんですか?
それが僕すっかり忘れてたんですけど、岡崎体育として活動を始めてから小学校のときの卒業アルバムを開いたら「作曲家になって自分の音楽を世界中の人に聴いてもらいたい」って書いてたんですよ。しかも、それが楽器も何も習ってない頃の話なんです。
──それは面白いですね。
で、それを書いた理由を思い出したんですけど、小学校6年生のときにリコーダーで自分が作った曲を1曲披露するっていう宿題があって、作った曲を褒められたんです。
──その頃から作曲家としての片鱗が……。
それがあとになって先生に「これ何かのパクリやろ」って言われて。
──どうしてですか?
僕のあとの女の子が「私はどうしても曲が作れないので、アニメのオープニングの曲を吹きます」って吹いたんですよ。それを聴いた先生が、放課後に僕を呼び出して「あの子は正直に吹けないと言ってたのに、なんで君は自分で作ったって言って人の曲をやるの?」って疑われて。
──小学生が作るにしてはクオリティが高すぎたと。
でしょうかね(笑)。それで、その先生を見返したろと思って卒業文集に「作曲家になる」って書いたんです。当時は楽器もまともにやってなかったのに(笑)。
「4年やってメジャーデビューできなかったらあきらめろ」
──岡崎体育として活動を始めた頃、どんなアーティストを目指していましたか?
絶対に埋もれたらだめやと思ってましたね。並みいるアーティストの中で突出した存在にならなきゃやってる意味がないっていう。そういう考えがあったので、とりあえず目立つことをして、業界の人にチェックしてもらわなきゃって思ってネタに走ったんですよ。人が初見で反応しやすい笑いに重きを置いて活動し始めたんですけど、それがいい感じに転んだかなと思ってます。
──メジャーデビューのきっかけはなんだったんですか?
ソニーグループの新人発掘のスタッフの目に留まって、そこで育成契約をしてもらったことがきっかけですね。それが2014年の年末かな? 絶対メジャーデビューするつもりだったし、できないわけがないと思ってたんで。
──自信があった?
……っていうのは冗談で、声がかかったときはめっちゃうれしかったです。
──メジャーデビューに際して周りの反応はどうですか?
家族は喜んでますね。僕が出るラジオを録音したり、テレビを録画したり。それと僕、スーパーでバイトしてるんですけど、パートのおばちゃんもYouTubeとか観てくれて、周りの温かい応援に支えられてますね。岡崎体育として活動を始めたのが23歳のときだったんですけど、僕一人っ子なんで、親は堅い仕事に就いてもらいたかったみたいなんです。でもなんとか説得して、音楽の道に進むことになったとき「4年やってメジャーデビューできなかったらあきらめろ」と言われて。だからインディーズ時代は、ライブで「27歳の夏までにメジャーデビューします」って言い続けてました。それをちゃんと叶えられたのでよかったです。
──スーパーでのバイト歴は長いんですよね。
はい。今もバリバリシフト入ってますね。多いときは週5で入ってたんですけど、ちょっと今は音楽活動で忙しくしているので週3に調整してもらって。バイトをやり始めた頃に「音楽をやってて、メジャーデビューを目指してるんです」って話したら理解してくれて。いろいろ協力してもらってるので、感謝の思いもあるし、できるだけ長くバイトは続けようと思ってます。メジャーデビューアーティストがスーパーでバイトしてるっていうのもキャッチーかなと思うし。
──バイトをしていることが音楽活動に影響している部分はありますか?
バイト先で見聞きしたことをネタに曲を書くことはないんですけど、2010年代において、アーティストにとってSNSパフォーマンスってすごく大事だと思ってて。Twitterにバイト先での面白い出来事を書くことで、「岡崎体育面白いな」と興味を持ってくれたらいいなと。だからバイト中もお客さんの声に耳をすませて、ネタを拾い集めています。
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- メジャーデビューアルバム「BASIN TECHNO」/ 2016年5月18日発売 / SME Records
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 2800円 / SECL-1879~80
- 通常盤 [CD] / 1800円 / SECL-1881
CD収録曲
- Explain
- MUSIC VIDEO
- 家族構成
- FRIENDS
- Voice Of Heart
- Outbreak
- スペツナズ
- エクレア
初回限定盤DVD収録内容
- Outbreak
- MUSIC VIDEO
- Explain
- Voice Of Heart
- FRIENDS
- 家族構成
- 岡崎体育ワンマンライブ「クソワロタ共和国」
- 2016年5月27日(金)東京都 TSUTAYA O-WEST
- ※チケットソールドアウト
- 岡崎体育ワンマンライブ「バリウケル帝国」
- 2016年6月5日(日)大阪府 LIVE HOUSE Pangea
- ※チケットソールドアウト
- 岡崎体育ワンマンライブ「バリイケメン王国」
- 2016年6月17日(金)奈良県 奈良NEVER LAND
- ※チケットソールドアウト
岡崎体育(オカザキタイイク)
1989年生まれ、京都府出身の男性ソロアーティスト。2012年より地元のスーパーマーケットで働きながら「盆地テクノ(BASIN TECHNO)」の伝道師として活動を開始する。自主制作アルバムを発表しながら、関西を拠点にライブ活動を展開。キャッチーなテクノポップサウンドと独創的な歌詞の妙、口パクによる強烈なライブパフォーマンスが注目を集める。Twitterに投稿した「冷蔵庫に貼ってあったメモ書きを英語風に読んでみた」と題した動画や、歌詞世界を忠実に再現したミュージックビデオが話題になる。2016年3月にメジャー(巻尺)に音源を付けた“メジャーデビューアルバム”「MEASURE」を、5月にSME Recordsから正真正銘のメジャーデビューアルバム「BASIN TECHNO」をリリース。