プロになるために
──Roverさんと「カフェイン」を作り上げたことで、オオカワさんはどんな発見や気付きがありましたか?
オオカワ やっぱりRoverさんはすごいプロだなと感じたし、改めて自分の未熟さを痛感したし、自分もプロの一員になりたいと強く思いました。僕はベリーグッドマンの楽曲を頻繁に聴いてるんですけど「人に勇気を与えられるアーティストってすごいな」とつくづく思うんです。Roverさんとご一緒させていただいたことで、改めて僕もみんなに勇気を与えるアーティストになりたいと思いました。
──「勇気を与える」ためには何が必要だと思います?
オオカワ 路上ライブをやっていたときは、ただ歌うだけであんまり深く考えていなかったんです。Roverさんとご一緒させていただけるようになって、今まで感覚でやってきたことを改めたり、アーティストである前に1人の人間として立派になるべきだなと思いました。
Rover プロっていうのは、どんな仕事でも狙った通りのものを作り出せる人のことだと思うんです。ピッチャーだったら狙ったところにボールを投げられるとか、僕らだったら思い描いた通りの曲を書くとか。では、なぜ思ったようにしたいのか? それはなんのためなのか? 最終的には幸せなるために音楽をやってるし、幸せだから音楽をやってる。やっぱりセイヤの歌う姿を見てると幸せそうだし、聴いてるこっちまで幸せな気分になれる。これってすごく難しいことなんですけど、彼は難なくやってるんですよ。歌声に関してはすでに誰からも文句を言われないレベルまで達していると思うし、彼はそこを狙い続けてやってきたんだと思うんですよね。ただ、環境とか周りの反応に左右されないこともプロであるための大事な要素のひとつなので、今後はそういう力も身に付けていってほしいなと思います。
オオカワ がんばります!
技術を磨いていけるのが楽しい
──Roverさんが言ったように「カフェイン」はオオカワさんの歌う楽しさがにじみ出ているのが魅力だと思います。ただ、「プロになると楽しく歌い続けるのが難しい」と言う人も中にはいたりしますよね。オオカワさんが今、楽しく歌い続けられているのはどうしてなのかなって。
Rover それに関しては、僕の見解を言ってからのほうが答えやすいかなと思うので、先に話しますね。歌を“技術”と“ハート”の要素に分けるとしたら、彼はハートの部分には興味がなかったんですよ。だけど不思議なもので、技術を磨けば磨くほど、自然と歌にハートが乗っかってくるんですよ。それを彼は知らずに、とにかく発声とか声の出し方を研究して、技術を磨くことだけに執着し、楽しさを見出してきた人なんです。
──最初に技術を追い求めたことが功を奏した。
Rover そうです。「気持ちを込めて歌えばいい」と勘違いしがちですけど、実はそうじゃないんですよね。それを十分に伝えるだけの技術を身に付けなければいけない。例えば人の結婚式で「おめでとう」の気持ちを込めて泣きながら歌ってる人を見ても、周りはちょっと聴いていられない……という状況もあるじゃないですか。
──本人だけが歌に酔いしれてる状況。
Rover そうそう。逆に、「おめでとう」という感情をそこまで持っていなくても、めっちゃうまく歌われたら「おお、すごい。感動するわ」となる。すごく矛盾しているように聞こえるかもしれないですけど、音楽って基本的には技術の上に成り立つものだと思いますね。あとはセイヤくんお願いします!
オオカワ Roverさんが言われた通り、自分はハートの部分にはあまりこだわってなかったんです。音楽を聴くときも歌詞をちゃんと聴いていなかったというか、耳の気持ちよさだけに注目して「この発声を真似したい」とか「この歌い方を真似したい」と思いながら、自分が歌うときはいろんな要素を混ぜて歌ったりとかして。だから気持ちよりも、技術を磨いていけるのが楽しいんです。
Rover 技術を追い求めることは死ぬまで続くことなんですよ。でもそれって、もっとうまくなりたいと思う気持ち、努力を楽しいと思う気持ちがないとできないことなので、セイヤはアスリート型やなと思います。歌い続けた結果、筋力や瞬発力が上がると、試合に勝つ確率が高くなる。試合に勝てば周りに勇気を与えられるのと一緒で、歌がどんどんうまくなったり表現の幅が広がれば、聴く人は幸せになる。とはいえ、技術を追い求めることに飽きるタイミングは絶対に来ると思うので、そこだけはちょっと怖いなと。乗り越えるためには強い信念が要りますよ。
──Roverさんはそういった問題をどのように克服されたんですか?
Rover 仕事をするうえで「この日まで仕上げてください」という期日に間に合わせるのは、一般職の方々も僕らも一緒なんです。「期日までに曲が作れない」というのはあり得ないので、他人の力を借りてでも完成させなければいけない。そこまで責任を持ってできるかどうかは、最終的にはプロ根性ですよね。「俺が曲を作ってスタッフやファンのみんなを守るんだ」という正義感や責任感がなければ難しいと思います。その覚悟が、まだセイヤにはないかな。逆にこの若さであっても困るしね。今、レコード会社のスタッフさんや僕らが彼に付いていってるのは、その力があるかどうかを確かめたいからなんやで。
オオカワ 自分のためにいろんな方が動いてくれている。そのことに感謝するだけじゃなくて、ちゃんと結果を出すことが僕の使命だと思ってます。正直、7月の1stワンマンは全然納得いってないんですよ。だから、今後のワンマンで「今日のライブはよかったね」とファンの方やスタッフに言ってもらえるくらい成長できたら、 Roverさんへの1つの恩返しになるのかなと思います。
僕、これからさらにがんばります
──それで言うと、今後は「カフェイン」のレコ発ワンマンツアーが控えていますね。
オオカワ 前のワンマンでたくさん課題が見つかったし、実際に映像を振り返ってもカッコ悪いと思っちゃったんですよね。次こそは「わざわざライブを観にきてよかったな」と思ってもらえるようなステージにしたいです。「カフェイン」のリリースを記念したワンマンなので、楽曲のよさをもっと伝えたいし、自分と見つめ合いながらお客さんに気持ちをぶつけたいと思います。
──最後に、オオカワさんからRoverさんに伝えたいことはありますか?
オオカワ Roverさんは僕のいいところや悪いところをしっかり言ってくれるんですよ。それまで一緒に路上ライブをやってきた仲間たちは、僕が何をやっても「いいじゃんいいじゃん!」しか言わなくて、そこに僕は違和感を抱いていたんです。Roverさんはダメなときは「それは微妙やな」と言ってくれるし、僕自身も「もっとがんばりたい」と前を向くことができた。改めて言うのは恥ずかしいけど……本当にありがとうございます。僕、これからさらにがんばります。なので今後もご迷惑をおかけすると思いますが……。
Rover あ、それは嫌です。迷惑はかけないでください(笑)。
オオカワ あはは。迷惑はなるべくおかけしないようにしますけど、これからもよろしくお願いします。
──ちなみに「カフェイン」の資料に「Roverによるプロデュース楽曲第1弾」と書いてあったのですが、今後も楽曲が発表されていくんですか?
Rover 今、僕とセイヤで新しい楽曲を世の中に出していけるように動いてます。まずは「カフェイン」を名刺代わりに聴いていただいて、次はさらに新しいセイヤの一面が出せるような楽曲をどんどんリリースしようと思ってます。曲はいっぱいできているので、楽しみにしていてください。
ライブ情報
- オオカワセイヤ「カフェイン」リリースワンマンライブ 【Open Cafe!!!】
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- 2021年9月17日(金)東京都 下北沢シャングリラ
- オオカワセイヤ
- 鹿児島県出身のシンガーソングライター。高校卒業後に「歌で飯を食う」と決意し、福岡県で路上ライブを中心に活動をスタートさせる。日本武道館での単独ライブ実現を胸に行った路上ライブの数は1000本以上。その中で、道行く人の耳に留まったパフォーマンスの動画がSNSを通じて拡散され、多くのフォロワーを集めた。2020年には初のワンマンライブを企画し、チケットがソールドアウトするも、新型コロナウイルス感染拡大の影響で同公演は延期に。その後、ベリーグッドマンのRoverをプロデューサーに迎え、拠点を大阪に移して楽曲制作に励む。2021年7月に、「カフェイン」を配信リリースした。
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- オオカワセイヤの記事まとめ
- Rover(ロバー)
- 2013年11月に大阪で結成されたボーカルユニット・ベリーグッドマンのメンバー。2014年3月に配信シングル「コンパス」でデビューし、同年4月に初のアルバム「SING SING SING」をリリースした。精力的にライブや楽曲リリースを続け、2016年3月にシングル「ありがとう~旅立ちの声~」でメジャーデビューを果たす。2019年1月には念願の地元・大阪城ホールでのワンマンライブを開催した。2020年8月には新レーベル「TEPPAN MUSIC」を設立し、10月に第1弾作品となるアルバム「TEPPAN」をリリース。またグループとしての活動と並行して、APOLLO、関ジャニ∞、Kis-My-Ft2、CODE-V、Softlyなどほかのアーティストへの楽曲提供も行っている。10月にはアルバム「必ず何かの天才」をリリースする。