大橋彩香 a.k.a HASSY|ラッパーHASSY、ここに誕生!とびっきりのハッピーをみんなに拡散

大橋彩香が“はっしーの日”の8月4日に“大橋彩香 a.k.a HASSY”名義で新曲「#HASHTAG ME」を配信リリースした。

エイプリルフールの4月1日に「私、大橋彩香辞めます」という動画を突如YouTubeにアップした大橋。「5年間、元気で笑顔な大橋彩香をがんばったら好きな音楽をやっていいというのがプロデューサーとの約束だった」と彼女はラッパーとして新たにデビューすることを動画内で告げて、ファンを大いに驚かせた。その後すぐにインタビュー動画はエイプリールフールの嘘であることが明かされたが、彼女は実際に“大橋彩香 a.k.a HASSY”名義でラップを取り入れた楽曲に挑戦することに。そうしてできあがった新曲「#HASHTAG ME」はキャッチーな曲調やクールなラップパート、パンチのある歌詞が印象的な楽曲となっている。

音楽ナタリーでは大橋にインタビューを行い、新曲での挑戦から音楽活動に対する現在の思いまでじっくりと話を聞いた。

取材・文 / 須藤輝撮影 / 斎藤大嗣

大橋彩香ならやりかねない

──音楽ナタリーで大橋さんに単独でインタビューするのって、今回が初めてなんですよね。

そうか。前回の「WINGS」(2020年12月発売3rdアルバム)のときは対談でしたもんね(参照:大橋彩香「WINGS」特集)。

──そんな初の単独インタビューが、今回のような変化球というか飛び道具的な楽曲でいいのかなと、ちょっと考えてしまったんですけど……。

確かに(笑)。ある意味、大橋彩香のインタビューではないのかもしれません。“HASSY”さんの曲なので。

──HASSYさんとしてインタビューを受けてみます?

いや、大橋で普通にしゃべります!(笑)

──即答でしたね。今お話にあったように、今回の配信シングルは4月1日に、大橋さんがHASSYとしてラッパーデビューするという動画をYouTubeにアップしたことが始まりなんですよね。

はい。「私、大橋彩香辞めます」というタイトルで。エイプリルフールなので、何か面白い企画をやってみようと嘘の動画をアップしたんですけれども、「大橋彩香ならやりかねない」と信じてしまったファンの方も意外といらっしゃって。それはそれで面白かったんですけど、すぐにネタばらしをして、でもラップソングを出すというのだけは本当で、あれから4カ月を経て8月4日の“はっしーの日”にリリースとなりました。

──ファンの皆さんにHASSYが受け入れられてしまったというのは、それだけ大橋さんの音楽活動が多様になっているということでは?

ああ、そうかもしれないですね。デビューした当時はストレートに“明るく元気”な楽曲をよく歌っていたんですけど、徐々にカッコいい曲だったり、自分の心の奥底に眠っている気持ちを吐き出すような曲だったりも歌うようになって、楽曲の幅も広がってきてはいたので。

──その意味では、アルバム「WINGS」は象徴的でした。

大橋彩香

うんうん。ロックありダンスナンバーありの「WINGS」を経てからの「#HASHTAG ME」ですし、だからこそファンの皆さんも「はいはい、ラップラップ」みたいな感じでスッと受け入れてくださったのかも。それか、例えば昔出した「イカはイカすぜ☆クラーケン子ちゃん」(2018年4月発売の7thシングル「NOISY LOVE POWER☆」カップリング曲)に比べたらだいぶ普通ですよね(笑)。

──実際、「WINGS」に収録されていた「HOWL」の2番Aメロのポエトリーパートがラップっぽかったので、僕はそんなにHASSYに違和感はなかったです。

なるほど。ただ、あそこはラップだと思っていなかったから、すんなり歌えたのかもしれません。たぶん、ラップだと思っていたら身構えちゃったんじゃないかな。でも、言われみれば「HOWL」で一応、下準備みたいなことはできていたんですね。リリースから半年以上経って気付きました(笑)。

──もともとラップはお好きだったんですか?

今回の企画は、私が以前インタビューで「いつかラップに挑戦したいです」と話していたのをプロデューサーさんが覚えてくださっていたことが発端になっていて。なおかつ今はいろいろと大変なことが多い状況だから、エイプリルフールにかこつけてみんなを盛り上げたいという気持ちもあったんです。でも、私自身が「ラップに挑戦したい」と言ったことを忘れていて、「え? ラップですか?」みたいな感じで驚いちゃって(笑)。

──(笑)。

とはいえ、K-POPもよく聴いているのでラップパートが入った曲には馴染みがありましたし、最近は「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-」とか、声優さんがラップに挑戦する企画も多くなってきているので「私もいつでもできるようにしておいたほうがいいな」という気持ちもちょっとありました(笑)。あと、ラップを取り入れているK-POPのガールズグループって、女子が憧れる女子という感じがするんですよね。なので私もカッコいいところを見せて、女性ファンを獲得していけたらいいなと。

私、今おかしなことやってるな

──「私、大橋彩香辞めます」の動画で、大橋さんは「表の顔と裏の顔」「見たことない私ですけど、皆さん嫌いにならないでね」とおっしゃっていましたが、これは「MASK」(アルバム「WINGS」収録曲)の作編曲者であるe-ZUKA(GRANRODEO)さんとの対談でお話ししていたことと……。

一緒ですね。「MASK」の歌詞はKanata Okajimaさんが書いてくださったんですけど「どうしてそんなに私のことがわかるの?」とびっくりしてしまったぐらい、私のことが書いてあるんですよ。やっぱり表に出ている私がすべてではないし、どんな私でも好きになってほしいというのは常々思っていることでもあるので、ここで改めて言っておこうと。

──動画本編ではある種のステートメントとしてクールに発信されていましたが、後日アップされたメイキング動画では……。

笑いをこらえるのが大変でした(笑)。慣れないことをしているときって、それを俯瞰している自分がいて、その自分が笑っちゃうんですよね。「私、今おかしなことやってるな」って面白くなっちゃって。だから恥ずかしがらずにHASSYを演じなきゃいけないなと反省もしました。声優のお仕事をしているときは絵があるから大丈夫なんですけど、自分の顔が映るとすぐ恥ずかしくなっちゃうので、絵を背負わなくても恥を捨てられるようになりたいです。

──ミュージックビデオの撮影などは苦手だとおっしゃる声優アーティストの方もいらっしゃいますね。

そう、MVとかはすごく緊張するんですよね。いつも「私の顔のところだけ何か適当な絵でも貼ってくれないかな」って思っちゃうぐらい(笑)。本来、声優は裏方なんですけど、今はマルチな活動も当たり前になってきているのでそちらにも対応しなきゃいけないというか、もうちょっと顔を出して自己表現できるようになりたいですね。

──自己表現できていると思いますけど。

いや、まだまだ照れがあるし、自分磨きをがんばらないと。家にいるときも「もっと鏡を見て表情管理をしなきゃいけないな」と思いつつ、アーティストデビューしてから7年近く経っちゃったんですけど……。

──今も、マスク越しではありますが、いい表情でお話しされていますよ。

いやいや。もうちょっと表情のバリエーションを増やしたり、ライブでいつサービスモニターに抜かれてもいいようにがんばりたいなって。やっぱりアイドルの皆さんはすごいじゃないですか。めちゃくちゃカメラも捕まえるし、私もそういうのを積極的にできるようになりたい。声優としてもアイドル役をやったりしているので、そちらにも生かしたいと思いますね。

“3人の私”がいます

──新曲は「#HASHTAG ME」という、SNSを意識したタイトルですね。

タイトルは作詞をしてくださったカミカオルさんのアイデアだったんですけど、今、Twitterとかインスタでも皆さんハッシュタグを使われているし、トレンドにも上がったりするじゃないですか。なので「もっと私のことも拡散してほしいです」という意味でも「#HASHTAG ME」はいいんじゃないかなと思いますね。歌詞もけっこう特徴的で、この曲が5年、10年経ったらどういうふうに聞こえるんだろうなっていうぐらい“今”を歌っている感じがあって。

──難しいことは何も言っていないというか、シンプルにハッピーな歌詞ですね。

うんうん。みんなには幸せになってほしいし、私も幸せになりたい。お互いに幸せを願っている感じもして、すごくいい歌詞だなって思いますね。個人的には「B-I-G BRIDGE の大橋です」がなかなか強烈で、気に入っています。

──ラップパートのド頭の歌詞ですね。

私は最初「ビッグ・ブリッジ」と読むんだと思っていたんですけど、仮歌を聴いたら「ビー・アイ・ジー・ブリッジ」で、こだわりを感じました。この部分の振り付けが難しくて、振りの練習をしているときに「B-I-G BRIDGE の大橋です」というフレーズをダンスの先生と一緒に何回も口ずさんでいたこともあって、めちゃくちゃ頭に残っています。そこはMVでは踊っていないんですけど、頭をブンって振り回すような振りで、ウィッグで長くしたポニーテールがどうしても顔にかかっちゃったりして(笑)。長髪でバキバキに踊ってらっしゃる方は、髪さばきが上手なんだなと驚きました。

大橋彩香

──TAKAROTさんが作曲・編曲されたトラックも非常にキャッチーで、メロディも耳に残ります。

TAKAROTさんは今までもEDM系の曲とか、ダンサブルな曲でよくお世話になっているんですけど、こういうタイプの曲はとてもお上手ですよね。本当にキャッチーで、私もすぐに曲を覚えちゃいました。実は候補曲が2曲あって、どちらもいい曲だったんですけど、この「#HASHTAG ME」のほうが明るいメロディの中にちょっとグッとくる切なさ、エモさみたいなものがありつつ、歌い上げる感じもあって。ただ明るいだけじゃないという点に惹かれました。もともと私は歌い上げる系の曲が好きというか、歌い上げないと不完全燃焼みたいになっちゃって。だからソロではそういう曲が多くなってくるんですけど、そのしわ寄せがワンマンライブに来ています(笑)。

──そんな歌い上げる系の曲がまた新たに1曲追加されたと。

今回は、やっぱりHASSYの楽曲だったので普段よりもちょっとキャラソン寄りというか、かわいさをマシマシにして歌いました。それはカッコよく歌うラップパートとの落差を出すためでもあるんですけど、Bメロだけは普段の私っぽく歌おうと……だから3人の私がいますね。かわいい私、カッコいい私、その中間の私みたいな。あとはハッピーな詞と曲にふさわしい幸福感を意識しつつ、ニュアンスも強めで楽しくレコーディングさせてもらいました。

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