専門学校で教わったスタジオの予約法

──音楽の専門学校に進もうと思ったのには、何かきっかけがあったんでしょうか。

私、高校生のときは「卒業したらライブ活動を始めよう、専門学校なんか行かない」なんて思っていたんですが……高校2年生のとき、あるオーディションですごく素敵な女の人に出会って。その人は「自分もこういう人になりたい」って思えるような方だったんですけど、話をしているうちにその方が音楽の専門学校に通っていることを知って「専門学校っていいんじゃないかな」って考えるようになったんです。あと当時私の周りには音楽をやっている友達がいなかったんですけど、その方が「友達を作るのにも専門学校はいいよ」って教えてくれたので、「自分も通おう」と決心しました。

──専門学校ではどんなことを学んだんですか？

私、今までに部活動で学んできた以外のことは本当に何も知らなかったから……言ってしまえば、バンドにおけるベースの役割とかも全然わかってなかったんです（笑）。だから、初歩的なことを一から教えてもらった感じです。それに、勉強が苦手だから音楽理論やソルフェージュは頭の中でさらりと流してましたね……。何ごとも教科書で教えてもらうだけではいまいち理解できなくて、実技をやりながら「今のがクリシェだよ」って言われて、「そうなんだあ」って覚える感じでした（笑）。

──頭ではなく体に叩き込むタイプなんですね。

そうですね。あと、専門学校ではスタジオの予約の仕方とかも教えてもらいました。私、スタジオやライブハウスへの行き方とか入り方すらも知らない人間だったんで、専門に行って教えてもらえてよかったなって思います（笑）。

ライブを重ねていくうちに、自分らしさが出せるようになった

──ライブ活動を始められたのは卒業してからですか？

在学中にライブをしている子がほとんどだったんですけど、私はライブハウスの仕組みがまずわかっていなかったから在学中は全然活動していなくて（笑）、初めてライブをしたのは卒業する直前でした。会場が六本木にある、なんだかギラギラしたところで、すごく怖かったのを覚えてます。

──緊張しました？

もう、口から心臓が出そうでした！

──そのときはオリジナル曲を歌ったんですか？

はい、自分の曲を歌いました。そう、これはあとで振り返って気付いたことなんですけど、そのとき歌った曲が全部暗い曲で……。撮っていた映像を観返してみたら、私の出番のときだけどんよりした空気が漂っていました（笑）。この日のことは忘れられないですね。顔も暗いし服も暗い色で……お客さんもつまらなかったろうなって。

──そうだったんですね。でもそれからは積極的にライブ活動をされたんですよね？

はい。本当にすべてのことが初めての経験だったから、最初のうちは自分でライブをブッキングするなんてできないだろうなって思っていたんです。けれど、いざライブをしてみるとお客さんが「次はここでライブをやってみたら」ってライブハウスを紹介してくれたりとか、ライブに一緒に出た人に別の公演に誘ってもらえたりとか……いろんなつながりが生まれていったんです。おかげで、こんなにどうしようもない私でもいっぱいライブができるようになって、ここまでなんとかやってきました。いろんな縁が生まれたことは、本当にうれしかったです。ライブを重ねていくうちに、自分らしさが出せるようになったかなとも思います。

「来年ダメだったら諦めよう」って決めていた

──そうやってライブ活動を続けている中でも、デビューするためにオーディションは受けていたんですか？

そうですね、オーディションは学生時代からずっと受け続けていて。私、最後の最後の審査でダメになるってことが多かったんです。そういう状況がずっと続いていたから、去年の12月に「来年ダメだったら歌手を目指すのは諦めて就活しよう」って決めたんです。

──退路を断って「リトルウィッチアカデミア」の主題歌オーディションに臨んだんですね。このオーディションのときのことは覚えていますか？

はい、よく覚えてます。「この曲を聴いたらグッときてくれるはず」っていう妄想をしながら当時の自分の心境を曲にしたものを本番では歌ったんですけど……緊張し過ぎて手が震えちゃって（笑）。思い出すだけでも震えがきます。

──でも、見事に合格してデビューをつかみ取りました。

うれしかったですね。ただ、「受かりました、デビューが決まりました」ってハッキリと言われたわけではないから、気付いたら今があるっていう感じで……まだ「デビューは現実なのかな？」って、なんだかふわっとしてるんです。レコーディングしても、曲が完成しても、どこか人ごとみたいな感覚があります（笑）。なのでしっかりしなきゃなと思ってます。