小倉唯|みんなと心でつながりたい、愛とこだわりが詰まったライブを解説

自分をどれだけ追い込めるかが重要

──そもそも小倉さんのライブって、バラードパートもありつつ、最初から最後まで“踊りながら歌う”ということをほぼずっとしていますよね? ソロアーティストなので歌割りも当然全部1人で担っていて、いわゆる表情管理も2時間半ずっと徹底していて。ライブの世界観がすごくコンセプチュアルで、広い舞台の上下左右すべて使っているので移動も多い。そこに衣装の早着替えも何度もあって……これだけのステージを完成させる、その気力と体力はどこからくるんだろうか?とライブを観るたびに考えさせられます。

私も不思議なんですけど、一番大事なのはやはり精神力ですかね。自分がダメだと思ったら負けなので、「自分ならできる! やるしかない」と、自分をどれだけ追い込めるかが、いいパフォーマンスをするための鍵だと思っています。人に追い込まれるんじゃなくて、自分自身で自己ベストを更新していくためのモチベーションを、どうやって保つかが大切。人から言われてただそれをやるだけだと、「これをやらなきゃ」と縮こまっちゃうと思うんです。そうじゃなくて「もっといいものを自分で更新し続けたい」という強い思いがあるからこそ、そこに向かって努力できる。むしろ、それを自分では努力だと思ってないというか。やるしかない、という根性です。私の性格も関係していると思いますが。

──負けず嫌いというのもあるでしょうし。

よく母親からも「唯は本当にしつこい性格だね」って言われます(笑)。でも、その執拗さが、実はパフォーマンスを作り上げるうえでも生きているのかもしれないです。一度やり遂げたいと思ったことは、実現できるまで挑戦してしまうという。

──そういう気持ちが高いダンススキルにもつながってるんでしょうね。ご自身としてはダンスという強みに関してはどう思っていますか? ミュージックビデオのダンスバージョンをアップしている声優さんってそう多くはないと思うのですが。

そこに関しては、本当に両親に感謝しています。小さい頃から、いろいろな習い事をさせてもらっていた経験が生きているので。ダンスは昔から好きですね。ダンスの先生からは、よく「ほかの人にはない癖や動き、独特の表現を持っている」と言われることもあって。ダンスのオリジナリティは、私の強みなのかもしれないなと思います。自分らしい動きやテイストを大切にして、これからもダンスのスキルアップを図っていきたいです。

──どれだけハードなダンスでも、観ている側にその大変さを微塵たりとも感じさせないというか、当たり前のようにナチュラルに踊ってるように見せられるのも小倉さんのすごさだなと個人的には思います。それこそ、高速ラップと高速ダンスもそうですね。

なんというか、そこへ持っていくのがプロとして当たり前のことだと認識しているので、「私はすごくがんばりました」という気持ちはあまりないんです。完璧じゃない状態で撮影に臨んだりライブのステージに立ったりするのは、自分にとってすごく恥ずかしいことだと思っていて。自己満足かもしれないけど、ちゃんと準備をする。舞台に立つ者としての最低限のマナーかなと思ってやっているだけですね。

スタッフさんがつないでくれた1つの愛情

──小倉さんのライブの特徴の1つとして、幕間のムービーにもこだわってますよね。ここ最近のツアーでもタップダンス、台湾でのロケ映像など、いろいろと上映されてきました。

幕間ムービーは1stライブのときから伝統みたいな感じでずっと続いているもの。きっと、スタッフさんがつないできてくださった1つの愛情表現だと思っています。今では、積極的に「こういう企画はどうですか?」「こういうのをやってみたいですー」とアイデアを出させていただいています。お客さんも毎回ムービーを楽しみにしてくださっているようなので、私のライブの醍醐味になっているような気はしますね。

小倉唯

──1本目のムービーは「LOVEcall」にちなんで“LOVEな関係のスペシャルなゲスト”が小倉さんへの愛を告白するという企画でした。ここではご家族と電話をする場面もあり、家族愛という意味での“LOVE”も感じましたね。

収録中は周りにスタッフさんがたくさんいたので恥ずかしかったですね(笑)。でも、改めて家族からの愛を実感できましたし、こうして映像で形としても残していただいて、ある意味、親孝行できたのかなあとも思います。ムービーの最後には、会場にいるファンの皆さんに電話をかけて「いつだってCall Me!」につなげるという演出もこだわりポイントです。

──2本目のムービー「ユイユイメモリアル」は恋愛シミュレーションゲーム風のユニークな企画でした。小倉さんとファンの方が偶然出会うところから物語がスタートし、途中で選択肢が出てきて、ファンの皆さんがペンライトの光でどちらかを選んで多数派だったほうのルートに進んでいくという。Blu-rayに収録されている夜公演はハッピーエンドにはなりませんでしたが……(笑)。

夜公演のほうが収録されるのに、まさかハッピーエンドじゃないルートにいくとは思わなくて、びっくりしました!

──あえてムービーの中の小倉さんを怒らせるような選択肢を(笑)。昼公演はハッピーエンドだったようなので、ファンの皆さんもきっと違うルートを観たかったんですね。

きっとそれで、違うパターンのエンディングを見たくて、皆さんが一致団結したんだと思います。ムービーが流れている間、私は裏で着替えていたので、あとで知って「みんなちょっとー!」ってなりました(笑)。

──(笑)。Blu-ray盤だと自分でリモコンを操作して選択できるんですよね?

そうなんです! まだ観られていないセリフやエピソードもあるかもしれないですね。ぜひいろいろな選択肢を楽しんでもらえればと思います。

バラードを気持ちよく歌えるようになった

──「ユイユイメモリアル」を挟んで、ライブ後半には「かけがえのない瞬間」「ハートフォレスト」と、バラードが続くパートもありました。ライブでのバラードの歌唱に関して、変化を感じる部分はありますか?

デビュー当時は、どちらかというとバラードを歌うことに苦手意識があったんです。もともと歌うときに少し走ってしまう癖があって、性格的にもどちらかというとせっかちなタイプなので、ゆったりゆったり後ろに歌っていくという歌い方がなかなか習得できなくて。ただ、最近は自分自身も年齢を重ね、落ち着いて物事を判断できるようになって。ようやく、バラードをバラードらしく気持ちよく歌えるようになりました。

──“バラード”の中でも表現の幅がどんどん広がって多彩になってきていますよね。例えば「ハートフォレスト」では優しくお客さんを包み込むような歌声が印象的でした。

バラードでの表現というところにおいて、昔よりも低音の声質をコントロールしやすくなったのは大きいかもしれないです。あとは、自分自身に余裕がでてきたからこそ、思いを届けられるようになったのかな。自分の成長とともにパフォーマンスが変化していて、1つ達成感のようなものも感じられました。

小倉唯

──アンコールで最後に披露された「Look@Me♡」も昨年の「#LOVEcall」構想時にはなかった曲かと思いますが、「アンコールはエンドレス」というフレーズもあり、まさにこの場面にふさわしいナンバーでした。歌い終えたあと、小倉さんの目がうるんでいるようにも見えたのですが、あのときはどういう気持ちだったんでしょうか?

ようやくライブを実現できたうれしさと、無事に終えられるという安堵感。またいつライブができるかわからない、複雑な気持ち。そして会場の温かさ……いろんな感情が、自分の中であふれ返っていたと思います。まるで1つの映画を観たかのような、複雑な心情でした。

──来年はいよいよ小倉さんのソロアーティスト活動10周年イヤーですね。どういう年にしていきたいですか?

10周年をただお祝いするだけではなく、その先の11年目に向け、また1つ可能性を感じていただけるような年にできたらいいなと思っています。今まで積み上げてきた歴史を含め、改めて、いろんな方に私、小倉唯のことを知ってもらえるような1年にしていけたらいいですね。

#Re♥LOVEcall
COSTUME

「#Re♥LOVEcall」衣装

「#Re♥LOVEcall」というライブタイトルに沿って、ハート模様や愛にあふれた衣装を作っていただきました。とにかく甘々。リボン、フリルといったかわいらしいものが凝縮されています。帽子にハートのチャームが付いているのもポイントです。

「#Re♥LOVEcall」衣装

今までありそうでなかった、少しタイトめなシルエットのワンピース。大きな襟、ポケット、レトロな雰囲気もあって、後ろのセットとマッチした色味、そしてスポーティさも兼ね備わっているという、すごく絶妙なバランスの衣装。ダンスメドレーの衣装をワンピースの下に仕込んでいました。

「#Re♥LOVEcall」衣装

踊っているとすごく暑くなるので、とにかく涼しい格好、というところで作っていただいた衣装です。パンツのサイドに入っている編み上げだったり、トップスの重ね着風のテイストだったり。トップスの切り返し部分には、メッシュ素材の切りっぱなし生地が垂れていたり。こだわりがたくさん詰まっています。

もともと2020年に開催予定だった「#LOVEcall」から引き継いだ衣装でした。カラフルなフリルをたくさん付けていただき、後ろのセットにも色味がすごくマッチしていたと思います。バラードを歌っているときだけ、楽曲の雰囲気に合うように、上から巻きスカートを付けました。

小倉唯(オグラユイ)
小倉唯
1995年、群馬県生まれの声優、アーティスト。2009年に14歳で声優デビュー。「HUGっと!プリキュア」輝木ほまれ / キュアエトワール役、「ゴブリンスレイヤー」女神官役など数々の話題作でメインキャラクターを担当する。2012年7月にシングル「Raise」でソロデビュー。2015年3月には初のフルアルバム「Strawberry JAM」をリリースし、7月には神奈川・パシフィコ横浜 国立大ホールで初のワンマンライブを開催した。2018年3月リリースのシングル「白く咲く花」のカップリング曲「かけがえのない瞬間」では初めて作詞を手がける。2020年は2月に自身で企画プロデュースから作詞まで行った11thシングル「I・LOVE・YOU‼」、6月に12thシングル「ハピネス*センセーション」、12月に初の配信シングル「Very Merry Happy Christmas」と3作品をリリースした。2021年3月にスマートフォン向けアプリゲーム「ブルーアーカイブ -Blue Archive-」のテーマソング「Clear Morning」を13thシングルとしてリリース。 7月に神奈川・パシフィコ横浜 国立大ホールでライブ「小倉唯 LIVE 2021『#Re♥LOVEcall』」を行い、8月にテレビアニメ「ジャヒー様はくじけない!」のオープニング主題歌「Fightin★Pose」を表題曲とした14thシングルを発表した。12月にライブ映像作品「小倉唯 LIVE 2020-2021『LOVE & Magic』」をリリースする。