FARAWAY
──小倉さんの楽曲の中で、ここまではっきりと別れを歌った楽曲は少ないですよね。
あまりなかったです。
──この曲はどのように解釈しましたか?
すごく大事な人と別れてしまった悲しみというか……実はもう一生会えない別れというイメージで、歌詞の方向性を固めたんです。自分の身近な人にもう二度と会えないってどんな気持ちなんだろうと考えながら歌ったので、自分の歌の表現もいつもと違うダークなトーンになっていると思います。暗いイメージではあるんですけど、その切なさを忘れてしまうんじゃなくて、痛みさえも大事に自分の中に刻み込んで歩いていくような強さも感じる曲です。
──こういった陰りのある世界観を表現するのは、大きな挑戦ですよね。
この曲も試されてるなと思いました。皆さんいろんな葛藤や悩み、出会いや別れというものに悩まされながら日々を送っていると思うので、そういう方々にもこの曲を聴いて、共感していただけたらいいなと思います。
ショコラ
──「ショコラ」はアルバムがバレンタインデー付近のリリースであることを意識したうえで入った曲ですか?
はい! そういった意識もありました。
──小倉さんはこのバラード曲を、「あなた」に語りかけるようにたおやかに歌われていますね。
これは乙女心を歌った切ない曲ではあるんですけど、まだ消えきらない温かな気持ちを歌っているというか。気持ちを消したいわけじゃなくて、あえてずっと自分の心に置いたまま、まだ浸っていたい……そんなしっとりとした思いを楽曲から感じました。これまでそばにいてくれた温かい人をがんばって想像しながら、まさに近い距離で語りかけるようなイメージで歌いましたね。
──「Tinkling Smile」リリース時のインタビューではゆったり歌うのが苦手とおっしゃっていましたが、バラードに対する意識も変わってきたのかなと思いました(参照:小倉唯「Tinkling Smile」インタビュー|あらゆる可能性をモノにする “プリティモンスター”の誕生)。
あ、最近変わったんですよ! ゆったり歌うほうがいろいろと表現しやすいなって気付いて、「ショコラ」はすごく気持ちよく表現できました。苦手意識が克服されて、より力が抜けたからこそ表現できるものもあったと思います。
──バラードに対する苦手意識がなくなったきっかけは何だったんでしょうか?
なんだろう……? でも、ライブを経てのような気がします。
──ライブでのパフォーマンスが自信につながったと。
はい。ステージでバラードソングを披露すると、お客さんが私の心に寄り添って聴いてくださるので。わざわざ自分はこう歌わなきゃ、ああ歌わなきゃって意識しなくても、1つひとつ言葉を置いていくようなイメージでみんなに語りかければ伝わるんだなと思ってから、ライブでバラードを歌うのが好きになりました。「ショコラ」をライブで皆さんに聴いていただくときは、私が作り上げる温かな空気感を耳元で感じてもらえたらいいなと思います。
ピーナッツ!
──「ピーナッツ!」は小倉さんが2度目の作詞を手がけた曲です。初めて作詞を担当された「かけがえのない瞬間」についてお話をお伺いしたときに、作詞に手ごたえを感じたとおっしゃっていましたが、次のアルバムを作るときには作詞をしようと決めていたんですか?(参照:小倉唯「白く咲く花」インタビュー|変わらない信念を抱き、新たな世界へ)
おぼろげには思っていました。はっきりと決めてはいなかったんですけど、自分がいいと思う楽曲に出会えたらまたやってみようかなと。俊龍さんのこの曲は実際に「この曲だったら書けるかも!」とイメージが沸いて希望が見えた楽曲だったので、今回チャレンジさせていただきました。
──「かけがえのない瞬間」のしっとりとした雰囲気とはまたガラッと違った、勢いのある曲になりましたね。
前回はどちらかと言うと詩に近いような雰囲気だったので、今回はまた全然違う方向性であえてポップに、言葉遊びも交えて書いてみました。でも、ポップな要素はありつつ、実は芯のあることを歌っているような歌詞にしたいという思いがありましたね。
──“ピーナッツ”というアイデアは、どういう視点から生まれたものなんでしょうか?
ともかくたくさん曲を聴いて、サビの最初の3音に合うワードを探していったんです。まずそこにハマる言葉を決めて、それに付随する形で意味合いを肉付けしていこうと。
──そして肉付けした結果、「もう入りきらなくなったら 思いきって砕いちゃえ wonderful!」という、ものすごく思いきりのいい歌に。
そうなんです(笑)。まずテーマとしては、ライブに挑むときの自分の心境やワクワク感を入れ込みたいなという気持ちがありました。あとは自分が仕事をするうえでのスタンスだったり、柔軟性や対応力を常に上げていきたいという気持ちを反映したり。
──なるほど。
「ピーナッツ」という言葉自体はポップで響きがいいんですけど、実は中身がスカスカだから、あまりポジティブではない意味合いの言葉でもあって。アメリカで「ピーナッツ」って言うと、悪口に近いようなイメージがあるそうなんですよ。でも今回私はそれを逆手に取って、ピーナッツって空っぽだと思われがちだけど、そうじゃなくて「空っぽじゃなくて ぎゅっと詰め込んでいたい」とか、固いだけじゃなくて柔らかくなることもできるものだよって歌っています。あと、私がピーナッツだと捉えられるような歌詞なんですけど、聴いている人もみんなピーナッツなんじゃないかなという思いもあって。Dメロの「Not change 悩んでたって One cannot put back the clock」には、悩んでいても時間は巻き戻せないから今だけを見つめてがんばればいいんだよというみんなへのメッセージを書きました。そして最後の「唯一無二のピーナッツ!」という言葉には、自分の気持ちは自分にしかわからないから、世間的な見え方に惑わされなくていい、自分は自分だけのものだよという気持ちを込めましたね。
──作詞はスムーズでしたか?
締め切りを聞いてからすぐに提出して、修正もほとんどなく。第一稿がほぼこの歌詞の通りです。また自信につながっちゃいました(笑)。
──では次の作詞も見えてきそうですね。
作詞はぜひまたやりたいです。お客さんがこの曲をどう受け取ってくださるかはちょっとまだわからないですけど、いろいろと考察してもらえたらうれしいです。ライブではダンスの振り付けも自分でできたらいいなと思って、ちょこちょこ考えていますね。
Reflect
──アルバムのラストナンバー「Reflect」はゆっくりと未来に向かって進んでいくような、希望に満ちあふれた楽曲ですね。この曲からはどういった印象を受けましたか?
この曲からは学生時代に離れてしまった友人たちを連想しました。別々の道を歩んでいるけど、みんなそれぞれ同じ空の下でがんばっている。みんなで一緒にいたときの経験が今の自分につながっていて、そんなことを感じながらこれからも前に進んでいく。そんなメッセージ性の強い、美しい楽曲だなと思いました。高らかに歌い上げましたね。
──「高く高くもっと どこまでも」というフレーズでアルバムが終わるのはとてもいいですね。こういった楽曲でアルバムを締めくくりたいというイメージは、小倉さんの中にあったんですか?
そうですね。この曲を聴いたときに、人それぞれの世界を連想させるところがラストっぽいなって。このアルバムはコンセプトがはっきりとあって、聴いてくださった方を楽曲の世界観に引き連れていくような作品なんですけど、最後にはみんなの生活とこの曲を照らし合わせてもらえたらいいなと思います。みんなそれぞれ自分の道で前向きにがんばっていこうと思ってもらえるような、そんな希望が見えるようなこの締め方は自分の中でしっくりときました。
──このアルバムは小倉さんのさまざまな表現が詰まった集大成的な作品でありながら、「Reflect」からも感じられるように、次のステップに向かって進んでいくような作品なのかなと。
はい。このアルバムで今の自分の集大成を表現できたことにすごく手ごたえを感じていますし、今後作品を作り上げていくときにこのアルバムでチャレンジしたことは絶対に反映されると思います。ここから先も、ファンの皆さんに一緒に付いて来ていただけたらうれしいです。
──4月にはライブツアー「小倉唯 LIVE TOUR 2019『Step Apple』」がスタートします。7公演は過去最多ですよね。
そうなんですよ! ツアータイトルの通り、さらにステップアップしていくというイメージで構成するライブなので、自分の可能性や成長をお見せできるようなツアーにしたいです。ダンスが付くとまた少し違った楽曲の雰囲気を感じていただけると思うので、もっと艶やかさにも磨きをかけて世界観を表現していきたいですね。
- 小倉唯 LIVE TOUR 2019「Step Apple」
-
- 2019年4月6日(土)大阪府 オリックス劇場
- 2019年4月7日(日)滋賀県 滋賀県立芸術劇場 びわ湖ホール
- 2019年4月14日(日)愛知県 一宮市市民会館
- 2019年4月21日(日)新潟県 新潟テルサ
- 2019年4月28日(日)宮城県 仙台サンプラザホール
- 2019年5月3日(金・祝)千葉県 幕張イベントホール
- 2019年5月4日(土・祝)千葉県 幕張イベントホール