永遠少年
──昨年9月に行われた「KING SUPER LIVE 2018」で「永遠少年」のパフォーマンスを観させていただきましたが、東京ドームという大きな会場を一瞬で包み込んで会場を1つにしていくようなものすごいパワーをこの曲から感じました。
今までの楽曲の中でも、「永遠少年」にしか出せない雰囲気があるんですよ。温かくて、さわやかで……すごく不思議な魅力を持っている曲だと思っていて、ライブで披露するたびにそれが目に見えてわかってきます。「Raise」や「Baby Sweet Berry Love」のような強力な爆弾のようなパワーを持っている曲ではないんですけど、会場にいる人全員の心をつかむ力があるというか。
──「永遠少年」のインタビューでは「ライブを経てどういう曲に進化していくのかによって、ようやくこのシングルの意味合いや位置付けが見えてくる気がしています」とおっしゃっていました(参照:小倉唯「永遠少年」インタビュー|みんなとつながるための歌)。7月にリリースしてから少し時間が経ってみて、改めて「永遠少年」という曲は小倉さんの中でどういう楽曲になりましたか?
ここから先、まだまだ化けていくなと感じています。今はこの曲が持つパワーがどんどん大きくなっている過程であって。最近は自分がもっと大人になったときにこの歌を歌ったらどういう気持ちになるのかな、と思ったりもしますね。
──何年後かにこの曲を歌ったら、また違った景色が見えるんじゃないかと。
あと、「永遠少年」はお客さんのことを改めて大切に思える曲ですね。ライブでいろんな人の顔を見ながらこの曲を歌うと、みんなへの思いがどんどん濃くなっていく感覚があります。
──ライブでも会場を見渡しながら歌っているのが印象的でした。
みんなで一緒に作り上げたい曲なので、本当に会場の奥の隅のほうまで見ています。誰も置いていかないように、意識して歌っていますね。
君が好きです
──「君が好きです」はモータウン調のにぎやかな楽曲です。これまでの小倉さんの曲にはないようなテイストで、新鮮だったんじゃないでしょうか?
新鮮でした! でも、内容はスクールラブを描いたかわいくてポジティブなラブソングなので、まっすぐ歌えたらいいなと思っていました。テンポとピッチが難しい部分はあったんですけど、スキップしながらお散歩しているようなイメージでレコーディングしていきました。
──「やらなきゃわからないでしょ?」「とびだそう!」と、前に向かって突き進んでいくようなストレートな楽曲になっています。4年前の「Strawberry Jam」のインタビューでは、「考え込んでしまうタイプだけど、どこかでいつまでも考え込んでも仕方ないと思ってる自分がいる」とおっしゃっていましたが、小倉さんの中でそういった“どこかにいた自分”がどんどん前に出てきているのかなと(参照:小倉唯「Strawberry Jam」インタビュー|待望の1stアルバムを手に語る“イチゴのジャム”の作り方)。
確かに最近は、悩む前にとりあえずやっちゃおうという意識が強くなってきた気がします。前は考えて考えて答えを絞り出すことが多かったんですけど、今は「まずやってみて、結果はそれからでしょ」という考え方も大事だなって。この曲はそういった自分の気持ちとリンクする部分がありましたね。ラブソングなんですけど、普段生活するうえでも大事な気持ちを思い出させてくれる曲です。
──このラブソングについては具体的にどういったイメージがありましたか?
主人公はきっとアパートに住んでいるんだろうなって。
──1人暮らしで?
いや、家族とアパートに住んでいると思います。お兄ちゃんがいそう。よく自転車に乗っていて、髪型はショートカットかな。
──キャラクターを想像していくんですね。
はい。想像して、その女の子の気持ちに自分の芯の部分を加えて歌っているという感覚です。
──最後には「君が好きです」というセリフがありますが、このセリフもただ「好きです」と伝えているわけじゃなくて……。
そうなんです。セリフを言うというよりは、メロディに言葉を乗せているようなイメージで歌っています。この部分は告白しているようで、実は家で練習してるんじゃないかなって。そういった妄想力を掻き立てられた曲でした。
白く咲く花
──大学卒業のタイミングで発表された「白く咲く花」はより素の小倉さんに近く、曲調としてもチャレンジングな楽曲でした。「ホップ・ステップ・アップル」というこの挑戦的なアルバムも、「白く咲く花」の延長線上に生まれた作品かもしれませんね。
まさにそうだと思います。大学卒業のタイミングでこの曲を通して新しいステップへと踏み出したいと意思表示をさせていただいたときに、世界観が広がっていく感覚がありました。かつそれをライブでも表現できたことが自信につながっていって、このアルバムでもいろんな楽曲に挑戦できましたね。
──「白く咲く花」という小倉さんの新たな面が見られるような作品を、ファンの人が受け止めてくれたことも自信につながっていますか?
あの作品をみんなに受け入れてもらえなかったら、また違った世界観のアルバムになっていた可能性があります。ファンの方も私を信頼して付いてきてくれるんだなと感じましたし、そのあとに「永遠少年」で「さらにここから一歩進んだ先の世界に行こう」という気持ちを皆さんと確認し合えたからこそ、今回のアルバムでたくさんのチャレンジができました。本当にファンの皆さんのおかげだと思っています。