音楽ナタリー PowerPush - 小倉唯
待望の1stアルバムを手に語る“イチゴのジャム”の作り方
2012年のソロデビュー以来、声優として、石原夏織とのユニット・ゆいかおりの一員としてはもちろん、1人のアーティストとしても目覚ましい活躍を続けてきた小倉唯。このたび、そんな彼女の初のフルアルバム「Strawberry JAM」が発表される。
小倉によると今作は「これまでの小倉唯と今の小倉唯がギュッと詰め込まれた」1枚。そこで今回のインタビューでは「Strawberry JAM」をキーワードにソロボーカリスト・小倉唯の姿に肉薄。彼女の3年間と現在地を追った。
取材・文 / 成松哲
大きな経験と大きな声を詰め込む1stアルバム
──去年の夏のインタビューのとき、小倉さんは「そろそろ1stアルバムも……」なんてお話をしていました(参照:小倉唯「Tinkling Smile」インタビュー)。
そうですね。その頃から「アルバムを作りたいな」って思っていたし、「『Tinkling Smile』は4枚目のシングルになるわけだし、そろそろアルバムかな?」っていう予感みたいなものもありました(笑)。
──ただあくまで「予感」であって、夏の時点ではまだ「Strawberry JAM」を2015年3月にリリースするっていう具体的な話はなかった?
「アルバムを」っていうお話をいただいたのはもっとあとですね。歌を録り始めたのも12月の頭くらいからなので。
──実際「アルバムを」って話があったときの気持ちって?
もちろんうれしかったんですけど、予感はしていたのでビックリはしなかったですね(笑)。すぐに「じゃあ、どういうアルバムにしよう?」っていうことに思考が向かってました。
──以前、小倉さんはファンや周囲が期待しているものに応えることが自分の使命だと思っているし、それに応えられたときに一番の喜びを感じるとおっしゃってましたけど、今作はまさに“The 小倉唯”っていうアルバムになりましたね。
「どういうアルバムにしよう?」の答えというか、今回のアルバムでやりたかったことがまさにそれだったんです。ソロデビューのときは高校生……16歳かな? その16歳でデビューをして、今19歳だからもう3年間小倉唯として音楽活動をさせていただいているんですけど、その時間の中でしてきたいろんな経験や、私の活動を応援してきてくれた皆さんの声っていうのは、私にとってすごく大きなものだったので。その経験や声に支えられてきたこれまでの小倉唯っていうものをギュッと詰め込みつつ、今の小倉唯だからできることや振り幅もお見せできれば、いいアルバムになるんじゃないかなって思ってました。
小倉唯、イチゴを語る
──だからタイトルに「詰め込む」という意味の単語「JAM」が入った?
そうですそうです。
──じゃあ数ある“JAM”の中でもなぜ「Strawberry JAM」、つまりイチゴジャムだったんでしょう?
実は「『JAM』にしよう」っていうのはスタッフさんの提案なんですけど「『Strawberry』で」って言ったのは私で。まず響きがかわいかったのと、イチゴって甘くもあるけど酸っぱくもあるのがいいなと思って。それとパッと見かわいいんだけど、実はちっちゃいつぶつぶが付いてたりしますし……って、それはあんまり関係ないかもしれないけど(笑)。
──いや、面白い視点だと思います。確かにあのつぶつぶってちょっとエグく見えなくもないですから。
意外といろんな表情をもってるんですよね、イチゴって(笑)。なので「かわいらしいんだけど、実はそれだけじゃないし……でもやっぱりかわいらしいっていう意味で『Strawberry JAM』がいいと思います」っていうお話をさせてもらいました。
──ただこのアルバムって「3年間の活動をギュッと詰め込む」と言いながら既発の曲はシングルの表題曲4曲と……。
「PON de Fighting!」(1stシングル「Raise」のカップリング曲)の1曲だけですね。この新曲が多いことっていうのが「今の私の振り幅」なんです。これまでの小倉唯をギュッと詰め込んではいるんだけど、新しいCDを出す以上、これまでにはない私も見てもらいたかったので。
──話が行ったり来たりになってしまうんですけど、そうやって新しい側面を打ち出しつつも、やっぱりちゃんと“The 小倉唯”的な1枚にもなっていますよね。
それはきっと、これまでのシングルのとき以上にしっかり制作に参加しているからですね。曲のセレクトについても、いろんな作家さんからいただいたデモを聴きながら「この曲を私が歌ったらどうなるんだろう」「この曲のテンポをもうちょっと遅くしてみたら私らしく歌えるかもしれない」「キーを上げてみたらどうなるんだろう」っていう話し合いをホントに細かくさせてもらったから、新しい挑戦をたくさんしつつも私らしいアルバムになったんだと思います。
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- 1stアルバム「Strawberry JAM」 / 2015年3月25日発売 / キングレコード
- CD+Blu-ray / 3996円 / KIZC-276~7
- CD+DVD / 3996円 / KIZC-278~9
- 通常盤 [CD] / 3024円 / KICS-3174
CD収録曲
- FUN FUN MERRY JAM
[作詞:中原徹也 / 作曲:ARM(IOSYS) / 編曲:大久保薫] - Charming Do!
[作詞:磯谷佳江 / 作曲・編曲:奥井康介] - いつだってCall Me!
[作詞:松井五郎 / 作曲:板垣祐介 / 編曲:菊谷知樹] - A Lovely Tea Break
[作詞:大森祥子 / 作曲:CHI-MEY / 編曲:大久保友裕] - PON de Fighting!
[作詞:大森祥子 / 作曲・編曲:大久保薫] - Get over
[作詞:松井五郎 / 作曲:小野貴光 / 編曲:山口朗彦] - Raise(album ver.)
[作詞:只野菜摘 / 作曲:俊龍 / 編曲:藤田淳平(Elements Garden)] - シュガーハートエイク
[作詞:こだまさおり / 作曲:小野貴光 / 編曲:山崎寛子] - Tinkling Smile
[作詞:磯谷佳江 / 作曲:小野貴光 / 編曲:大久保薫] - Happy Strawberry
[作詞:山口朗彦、中原徹也 / 作曲・編曲:山口朗彦] - Baby Sweet Berry Love
[作詞:山崎寛子 / 作曲:俊龍 / 編曲:Sizuk] - Sing-a-ling-a-Harmony
[作詞:こだまさおり / 作曲:俊龍 / 編曲:大久保薫]
Blu-ray / DVD 収録内容
- Happy Strawberry(MUSIC VIDEO)
- Raise(MUSIC VIDEO)
- Baby Sweet Berry Love(MUSIC VIDEO)
- Charming Do!(MUSIC VIDEO)
- Tinkling Smile(MUSIC VIDEO)
- Making of Strawberry JAM
小倉唯(オグラユイ)
1995年群馬県生まれの声優、アーティスト。2009年に14歳で声優デビューし、2011年「神様のメモ帳」のアリス役、「ロウきゅーぶ!」の袴田ひなた役で大きな注目を集め、以来、毎シーズン放映のアニメの主要キャラを演じるように。また2010年に石原夏織と結成したユニット・ゆいかおりでメジャーデビューを果たし、2011年には「ロウきゅーぶ!」の出演声優ユニット・RO-KYU-BU!で歌った楽曲の数々がスマッシュヒットを記録するなど、声優業と並行して積極的に音楽活動も展開している。2012年にはシングル「Raise」でソロデビュー。2014年8月リリースのアニメ「ヤマノススメ セカンドシーズン」のエンディングテーマ「Tinkling Smile」まで、4枚のシングルを発表しており、2015年3月には1stフルアルバム「Strawberry JAM」をリリースする。