「私は今、何をすべきなのか」考える至福

──ご自身の楽曲がテーマソングに選ばれたアニメに“寄り添わなきゃ”というよりも、“寄り添いたい”んですか？

“たい”ですね、むしろ。

──自分の表現したいことよりも、アニメファンや小倉唯ファンの期待に応えることに仕事上の喜びを見出せる？

こういう言い方をするとちょっとヘンに聞こえるかもしれないんですけど、私、自分がやりたいことって今はあんまりなくて（笑）。

──へっ!? だってオールマイティな表現者になりたいのは、なんらかの目標があってのことなんじゃないんですか？

むしろ「私は今、何をすべきなのか」「今小倉唯がこれをやったら、皆さんはどう感じるんだろう？」っていうことを考えたり、それを実行に移したりしているときに一番私が私でいられるというか。そういう瞬間が一番私らしい瞬間だと思ってるんだと思います。オールマイティになりたいのも、そのときするべきことをちゃんとできる人になりたいからなんだと思いますし。

──18歳にして、ものすごく正しく社会人してますよね。自分の能力を社会でいかに作用させるかっていうことに喜びを見出せているわけだから。

でも今まで全然そういうことを意識したことはなくて。今、質問していただいて初めて気付きました（笑）。

──じゃあ社会人たり得ているのは、きちんと考え抜いた結果ではなく、ついうっかり？（笑）

はい。なっちゃってた感じです（笑）。

──ところで「Tinkling Smile」のレコーディングっていかがでした？

すごく歌いやすかったです。たぶん年齢的なものもあると思うんですけど、これまではちょっとせわしなかったというか、ゆったり歌うのってすごく苦手で。「Baby Sweet Berry Love」みたいにちょっと前のめりな曲のほうが歌いやすかったんですけど、ちょっと大人になれたのか（笑）、アップテンポなんだけど、メロディはけっこうゆったりとした符割の曲もようやく歌えるようになれた気はしています。あとこの曲が「ヤマノススメ」の「セカンドシーズン」のエンディングテーマだったからっていうのもあるのかなあ。

──「セカンドシーズン」だから歌いやすかった？

1期にも出演させていただいているので、キャラクター像とか舞台となっている秩父の街の情景とか、この作品の世界観をすでに知っていたので。そのイメージを思い浮かべて歌えたのも、よかったんだと思ってます。

ありったけの感謝を詰め込んだ「thx!!」

──カップリングは前山田健一さん作詞、CHI-MEYさん作曲の「thx!!」。個人的な話なんですけど、すごく好きな1曲です。

ありがとうございます（笑）。

──CHI-MEYさんのメロディもアレンジもすごくかわいいし、「もこもこ」「ふわふわ」「メルスィボクボク」「シェイシェイ」「ダンケーシェンシェン」と、とにかく言葉を重ねまくる前山田さんの詞も面白い。「Tinkling Smile」とはまた別種の魅力があるというか。

2曲とも全然違うジャンルの競技って感じですよね（笑）。確かに「thx!!」はCHI-MEYさんのデモを聴かせていただいたときから、自分をすごく生かせる曲だなって自分でも感じてはいました。ただそう感じつつも同時にものすごく技術が必要とされる曲だなとも思っていて……。

──Aメロはスキット的。ほとんどメロディラインが上下しないのに、Bメロとサビになったら突然ドラマチックに動き出す、かなりテクニカルな曲ですもんね。ただ小倉さんはこの曲を巧みに歌いこなしている。

それができたのは詞のおかげなんだと思います。私、誕生日が8月なんですけど、今回のシングルのリリースがその誕生日に近いっていうこともあって、生まれてきたことへの感謝の気持ちを言葉にしよう、っていうテーマをいただいたんです。それで事前アンケートというか、私が今、感謝したいことや人をルーズリーフに書き出して、それを前山田さんにお渡しして詞を書いていただいたので、詞ができあがってからはすごく曲に思い入れやすくなったし、レコーディングもすごく楽しかったですね。

泣きながらも、絶対に机に向かうタイプなんです

──今回の「Tinkling Smile」で小倉唯名義のシングルが4枚出揃いました。次は何をしましょう。例えば「そろそろアルバムを……」みたいな話もあるんじゃないのかな？なんて気もしますけど。

そうですね。アルバムも作ってみたいですし、ソロのライブもやってみたいです。

──ソロライブの経験はまだ？

バースデーライブを1回やっただけで「小倉唯ライブ」みたいなものはやったことがないです。ある程度曲も貯まってきたし、そろそろやりたいなとは思ってるんですけど、ただソロのライブってどういうものになるのか、想像も付かないので……。

──ゆいかおりやRO-KYU-BU!であれだけ場数を踏んでいても、イメージが湧かない？

やっぱりわからないものですね。歌も1人、MCも1人ってどういうものなんだろう？ ちゃんとできるのかな？って、どこかしらで思ってますし。自信はないです！

──あはははは（笑）。力強く「自信はないです！」って断言されても。

でもホントにないんですよ。ここまでのお話を読んだ方はもしかしたら私のことをすごく自信のあるタイプだと思うかもしれないんですけど、皆さんが考えている以上に自信はないですし、ガラスのハートだし、すぐに悲しい気持ちになっちゃうし……（笑）。

──でもライブはやりたいんですよね。

やりたいです！ どんなに自信がなくても、新しい挑戦はしたいし、新境地は見てみたいので。きっとワンマンライブもちゃんとできるようになれば、その先にまた新しいビジョンが見えてくるはずですし。弱音を吐きたくなることはもちろんいっぱいあるんだけど、でもそこから逃げることだけは絶対にしたくないんです。

──おおっ！

中学生や高校生の頃もそうだったし、このあいだの大学の前期試験のときもそうでしたから。「やだやだ、もう勉強したくない」って泣きながらも、絶対に机に向かってペンは握ってる。そういうタイプなんです（笑）。