音楽ナタリー PowerPush - 小倉唯
あらゆる可能性をモノにする“プリティモンスター”の誕生
みんなが私のコンプレックスを優しく包んでくれた
──話が行ったり来たりしちゃうんですけど、中学生の頃、ライブ活動をしていたのは、ゆいかおり名義で?
そうですね。
──そして声優デビューが2009年。中学2年生のときですよね。ということは、ゆいかおりとして活動する一方で、声優という新たなチャレンジもしている。これも「オールマイティにならなきゃ」という思いがあったから?
いや、その頃の私には声優として活動しようっていう考えは全然なかったですね。ずっと自分の声は変わってるんだって思ってましたから。
──ハスキーな声をなさってますよね。
それがコンプレックスだったんです。ちっちゃいときはオーディションを受けると「声がかすれてるね」「風邪引いてるの?」って言われたりしていましたし(笑)。だから自分の声って苦手だったんですけど、あるとき、周りのスタッフさんが「そのある意味変わった声を生かしてみたらいいんじゃない?」ってアニメの仕事を持ってきてくれて。それが声優デビューのきっかけなんです。
──ところがその2年後、2011年には「神様のメモ帳」や「ロウきゅーぶ!」で主役級の声をあてるまでの存在になった。実際にどちらの作品のキャラクターもハマり役、アタリ役だと思うんですけど、いつ頃、自分の声と上手に付き合えるようになりました?
急に何か発見があったわけじゃなくて、お仕事を重ねていく上でだんだん「これでいいんだ」ってわかってきた感じですね。ダンスみたいな身体表現が好きだったこともあって、声優のお仕事を始めたばかりの頃は、表情や仕草を使わずに、声だけで感情を表現することがすごく難しく感じられていて。しかも自分の声にはマイナスのイメージしかもっていなかったから、いろいろ迷ってたんです。「アニメを観た人たちもきっとヘンな声だなって思うんだろうな」とか。でも、いざいろんなキャラクターの声を担当させてもらうようになったら、ホントにたくさんの人たちから「あのお芝居が楽しかったよ」「感動したよ」「声が好き」って言っていただけるようになって。自分のコンプレックスを皆さんが受け入れてくれるどころか、優しく包み込んでくれているような気がして、すごく感動したんです。そういう体験が積み重なっていったことで「あっ、私の声もここでなら生かすことができるんだな」って前向きに取り組めるようになったんだと思います。
声優と歌の相乗効果
──そして声優デビューの翌年、2010年にゆいかおりがメジャーデビューします。ご自身の名前が冠されたCDをリリースするのは、このときが……。
初めてです。(石原)夏織ちゃんと出会って、ゆいかおりとして活動を始めた頃から2人でノートに「メジャーデビューする」みたいな目標を書いていたので、お話があったときはうれしかったんですけど、その一方ですごく不安でもありました。
──それはなぜ?
活動を始めた頃の話なんですけど、10人もお客さんが入れば「今日はいっぱい人が来たね」って感じの時期もあったので(笑)。そんな私たちがメジャーデビューっていうのは夢のようだったし、ちょっと信じられなかったんです。
──でも声優業とある意味同じというか。ゆいかおりは今に至るまで順調にリリースを重ねているし「Animelo Summer Live」のような大きなステージにもほとんど常連のように出演しています。
でも、そのときできることを精一杯やってはいたものの、今思うと、デビューした頃って全然まだまだだった気がしていて。それでも声優として活動を始めたことで、アニメをきっかけに注目してくださる方がすごく増えて、大きなステージにも呼んでいただけるようになったっていう感じなんです。そうやって皆さんに知ってもらえて、いろいろな経験をさせてもらえたことで私にも夏織ちゃんにも責任感が芽生えたし、2人ともレベルアップができたんだと思います。
──やっぱりちゃんと声優と音楽が相乗効果を生んでいる。“小倉唯ちゃん中学1年生”の見立てに間違いはなかった(笑)。
そうですね(笑)。実際、ゆいかおりのときだけじゃなくて、声優としての活動が歌にすごく反映されることが多いんですよ。歌の表現とお芝居の表現っていうのは当然全然違うんだけど、声のお仕事をすることで知った言葉に気持ちを乗せるテクニックを歌に生かせたりとか、逆にセリフとしてしゃべるとちょっと発音しにくい言葉でも歌うときにはスムーズに声を出せたりもして。その歌うときのノドの使い方をお芝居に生かせたりもしていますし。
──なるほど。そしてさらにゆいかおりとしてデビューの1年後、2011年にはアニメ「ロウきゅーぶ!」のユニットRO-KYU-BU!としてアニメのテーマソングやキャラクターソングをリリースしてヒットを記録しています。すでにゆいかおりとして活動していた人にとってキャラソンが売れることってどういうものでした?
また別の楽しさがありました。キャラソンを歌うときってすごくノリノリになれるんですよ。難しいことを考えずに、キャラクターのことだけを思い浮かべて歌えるので、すごくスムーズに歌えるし、楽しいんですよね。
──「キャラのことだけ思い浮かべられるから楽しい」とはいうものの、ソロ名義やゆいかおり名義のときには当然、他人のことなんか思い浮かべずに歌うわけですよね。
はい。
──でもキャラソンの場合は、声を出すのは小倉さんなのに、キャラクターを念頭に置くことになる。むしろ高度な作業のような気がするんですけど……。
だからなんて言えばいいかちょっと悩んじゃうんです(笑)。ただキャラソンって「このキャラの歌うことだから」って許される部分もあるので、ソロやユニットではまず歌えないような、ちょっと弾けた曲であっても「このキャラなら歌いそうだよな」っていうことで歌わせてもらえる。それも楽しいんですよね。
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- ニューシングル「Tinkling Smile」/ 2014年8月13日発売 / キングレコード
- 期間限定盤 [CD+DVD] 1728円 / KICM-91526
- 通常盤 [CD] 1188円 / KICM-1526
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CD収録曲
- Tinkling Smile(テレビアニメ「ヤマノススメ セカンドシーズン」エンディングテーマ)
- thx!!
- Tinkling Smile *off vocal ver.
- thx!! *off vocal ver.
期間限定盤DVD 収録内容
- Tinkling Smile(MUSIC VIDEO)
小倉唯(オグラユイ)
1995年群馬県生まれの声優、アーティスト。2009年に14歳で声優デビューし、2011年「神様のメモ帳」のアリス役、「ロウきゅーぶ!」の袴田ひなた役で大きな注目を集め、以来、毎シーズン放映のアニメの主要キャラを演じるように。また2010年に石原夏織と結成したユニット・ゆいかおりでメジャーデビューを果たし、2011年には「ロウきゅーぶ!」の出演声優ユニット・RO-KYU-BU!で歌った楽曲の数々がスマッシュヒットを記録するなど、声優業と並行して積極的に音楽活動も展開する。2012年にはシングル「Raise」でソロデビュー。そして2014年8月、アニメ「ヤマノススメ セカンドシーズン」のエンディングテーマとなる、4枚目のシングル「Tinkling Smile」を発表する。