ナタリー PowerPush - OGRE YOU ASSHOLE
「100年後」に込めた終末感と真の思い
整った環境下でアルバムを聴いてもらえた試聴会
──話は変わりますが、8月23日に東京・渋谷PLEASURE PLEASUREでアルバム「100年後」の試聴会イベントが行われました。このアイデアはどこから生まれたものなんですか?
レコード会社のほうからやってみたいって話が出て。僕は最初「ちょっと待てばCDが聴けるし、そんなにお客さんが来るのかな?」って心配してたんですけど、意外にたくさんの人が来てくれたみたいで。やっぱり今ってちゃんとしたスピーカーで音楽が聴ける環境ってなかなかないと思うし、だったらちゃんと整った環境下でアルバムを聴いてもらえるのは僕たちとしても本望ですし。MP3に圧縮して、パソコンのスピーカーやあのシャカシャカのイヤホンで聴かれるとやっぱり伝えたいことがちゃんと伝わらないと思ったので、試聴会を通じて本当はこういう音なんだってことをちゃんと聴かせてあげられるっていうのは僕らにとってもうれしいことですね。
──あれだけの大音量でCDを聴くことは、日常生活ではまずないことですもんね。それでですね、今回試聴会後に参加者の皆さんにアルバムを聴いた感想をアンケートという形でお願いしたんです(アンケート用紙を出戸に渡す)。
すごいですね、みんなしっかり書いてくれてる。
──そうなんです。で、ここからはアンケート結果やファンの皆さんからの感想、質問を軸にインタビューを進めていきたいと思います。まず最初に……アルバム8曲を聴いてもらって、一番気に入った曲を皆さんに挙げてもらったんですが、3曲目の「素敵な予感」がダントツの一番人気なんですよ。それこそ来場者のうち4分の1くらいの方が選んでくれて。
PVを作る曲とかラジオでの推し曲をどれにするかって話し合いで、最初は僕も「素敵な予感」を推したんですよ。でも「まあ2曲目(『夜の船』)じゃない?」ってことであの曲になったんですけど。確かに強い曲ですよね、「素敵な予感」は。
「バンドとしてこの先があるようには思えない」
──またアンケートの中には「アルバムを聴いて解散っていうキーワードを感じた」っていう感想もありました。
それは友達にも言われましたね(笑)。
──あ、そうなんですか。
友達は「これだけ完成度が高くて良いアルバムができると、バンドとしてこの先があるようには思えない」っていい意味で言ってくれたみたいで。
──終末感が漂う内容ということもあって、聴いた人は解散を思い浮かべたのかもしれないですね。また別の人になりますが、「例えば以前の『フォグランプ』の頃のような印象的なギターリフのある曲が好きだったんですけども、ああいった曲っていうのはもう今後作らないんでしょうか?」という質問もありました。
うーん……ひとつのリフで押し進める曲は、もう作らないってことはないですけど今のテーマの中では必要ないかなって思ってます。あと今までのリフの感じとかああいう曲調のものを今新曲としてやると、「homely」以前に戻ったと思われる危険性もあって。それに自分の中でも新しいことをやってないような感じがしちゃうんですよね。もちろんそういったリフ主体の曲をまたやることは悪いことだとは思わないけど、わざわざ過去を振り返ってその要素を持ってくることは今はやりたくないかな。
──リスナーが求めているものより、自分たちが表現したい音を追求していくと。
そうですね。自分たちが聴いて良いなって思えるものが作りたいんで。そして過去の作品を自分たちなりに批評だったり批判をしつつ、前へ進んでいかないといけない、どんどん変わっていかないといけないと思ってます。
今度のツアーでは過去の曲もやると思う
──続いてライブについての質問です。「homely」のツアーでは過去の曲を演奏しなかったので、そこを心配する声もアンケートの中に多数あったんですが。
今回は過去の曲もやると思いますよ。「homely」は本当にコンセプチュアルな作品だったので、それひとつだけを見せたいって気持ちがすごく強かったんです。でも今回のツアーでは「100年後」と「homely」の曲を混ぜつつ、その合間に以前の曲をやるんじゃないかな。
──ここ2作の曲が中心のライブにそれ以前の楽曲を組み込むと、過去の曲が浮いてしまうんじゃないかとは思いませんか?
ちぐはぐにならないように要所要所アレンジを変えて、違和感のない感じには仕上げると思います。ひとつのバンドとしてちゃんと成立するような……でもライブは本当に別物なので、CDの音源を混ぜるというよりはまた別のものを再構築していくほうが近いかな。
いろんなキーワードが何層にも重なった作品
──歌詞についての感想もありました。「抽象的な歌詞じゃないオウガを初めて聴いたけど、すごく温かくて優しいです」って。
わあ……実は全然優しくないです(笑)。
──あはははは(笑)。この人なんて「起きているのか、寝ているのかわからなくなる、すごく引力があるアルバムです」と書いてますし。
それは実際に寝てたんじゃないですかね(笑)。
──あ、実際に書いている人もいましたよ、「聴いているうちに引き込まれて、気が付いたら寝てました」って。
「正直……すみません。ここらへん寝てました」みたいな?
──1曲ごとに感想が書ける項目があったんですが、頭3曲くらいは感想をぎっしり書いてるけど、5曲目前後から空白になって、最後の曲だけまた感想が書いてあるという(笑)。
それは正直な方ですね(笑)。
──でも今回の「100年後」は本当に不思議な心地良さのあるアルバムだと思うので、波長が合って眠ってしまうんでしょうね。こうやって200人近い人が試聴会でアルバムを聴いた感想を寄せてくれましたが、出戸さんはどう思いますか?
さっきの人は最初に優しいって言ってたけど、僕はその皮を1枚めくるとその先には冷たさや冷酷さ、残酷さが出てくるアルバムだと思っていて。でももう1枚めくるともっと優しいものが出てくるかもしれない。そんなふうにいろんなキーワードが何層にも重なった作品が、この「100年後」なんだろうなって思います。
ニューアルバム「100年後」2012年9月19日発売 2500円VAP / VPCC-81747
収録曲
- これから
- 夜の船
- 素敵な予感
- 100年後
- すべて大丈夫
- 黒い窓
- 記憶に残らない
- 泡になって
OGRE YOU ASSHOLE(おうがゆーあすほーる)
出戸学(Vo,G)、馬渕啓(G)、勝浦隆(Dr)からなるギターロック / オルタナロックバンド。90年代末に長野で前身バンドを結成。2001年5月にアメリカのオルタナロックバンドMODEST MOUSEが松本公演を行った際に、エリック・ジュディがメンバーの腕に書いたイタズラ書きがきっかけとなり、バンド名をOGRE YOU ASSHOLEに。2005年に1stシングル「タニシ」、1stアルバム「OGRE YOU ASSHOLE」をリリースする。数々のフェス出演やライブツアーを経て、着実に知名度を高めていく。2009年にVAPへ移籍し、シングル「ピンホール」でメジャーデビュー。2011年夏に前任ベーシストが脱退してからはサポートメンバーを迎えてライブ活動を続けている。2012年9月にニューアルバム「100年後」をリリース。