ODDLORE「ONE BY ONE」特集|一歩ずつ歩んで自分らしい未来へ “心の隙間”寄せ合う6人の1stアルバム (2/2)

コンプレックスはその人を形作る1つのパーツ

──RIONさんは「他人の評価軸でしか生きられない」というコンプレックスを持っているそうですが、解消されたところはありますか?

RION いや、変わらないですね(笑)。でも、音楽界はエゴを織り交ぜてもいい業界なんだなと最近強く感じています。練習をいくらがんばってもライブで必ずしもいい評価がもらえるわけでもない。その場で生まれるテンションやエネルギーがどんなものであれ、“正解”となる日だってあります。だからこそ、自分の中で何が正解なのかがわからなくなって混乱したこともあったんですが、逆に言えば、どんな形であれ最終的に自分がいいと思えるものが人にもちゃんと伝わるのがベストの形なんじゃないかと思って、それを追求することが日々のモチベーションになっていきました。

──RIKITOさんは5つの国にルーツを持つ出自ゆえに、アイデンティティがないというコンプレックスを持っているそうですね。

RIKITO そうですね。黒人の血が入っていて見た目が周りとは違うことから、自然と「仲間外れにされたくない」とか「嫌われたくない」と思い続けて生きてきました。母親が僕に極真空手を習わせ、強くしてくれたこともあって、いじめにあったことはなかったんですが、常に自分のことより周りを気にするようになってしまって「自分が何をしたいかわからない」ということに気付いてもいませんでした。でもODDLOREに入って、自分でダンスの振付を考えたり、歌詞を書いたり、こうやってインタビューを受けていくうちに、「自分のアイデンティティがない」ということに気付いた。僕はスポーツもやっていたし、黒人の血が入っているから「ダンスと歌の経験はないけどできるんじゃないか」と期待していたところもあったんです。でもいざやってみたら全然できなくて、すごくヘコみました。徐々にできるようになっていく中で、「こういう歌い方やダンスが好きだな」ということを知って、「こういうふうになりたい」という気持ちも生まれていきました。まだ全然確立はできていませんが、少しずつ自我が出てきてると思います。

RIKITO

RIKITO

──KOYAさんは「自分が求められ、評価されることへの固執」がコンプレックスだそうですが、ODDLOREでの活動を通して何か変化は感じていますか?

KOYA 根本はあまり変わってないと思うんですよ。ただ最近、わがままだとは思うのですが「求められたいけど責任は負いたくない」という気持ちが生まれてきました(笑)。誰しも大なり小なりコンプレックスは持っているので、ODDLOREとしてはその人を形作る1つのパーツとして受け入れています。メンバーそれぞれがコンプレックスを全面に出すことでほかと違うグループになれるんじゃないかなと思います。

言いたくても言えなかったことを叫んでいる曲

──アルバムの終盤に入っている「Coming Dawn」は、コンプレックスをはねのけて未来に向かっていく思いを歌う曲になっていますが、この曲についてはどんな印象を持ちましたか?

RYUICHIRO 自分たちが今まで言いたくても言えなかったことを叫んでいる曲だと思いました。

──「己で敷くレール もう迷いはないぜ」という歌詞もありますし。

RYUICHIRO そうですね。普段は人の目を気にして言葉に出せないようなことが表現されていて、この6人の曲だなって思います。

RYUICHIRO

RYUICHIRO

──YUIさんが先ほどODDLOREに入る決め手と言っていた、多数が歩むほうではないルートを選択した話にも通じる歌詞だと思いましたが、いかがでしょう?

YUI 僕は正直「迷いがない」とは言いきれないんですよね。年齢を重ねて経験値が増えて、いろいろな物事の輪郭が鮮明になっていく中で、10代の頃には考えなくてもよかったことを考えるようになりました。そうすると、日に日に迷いが大きくなっていく。今後もずっとそうなんだと思います。だから僕は迷ったままいろんなことをやると思いますが、KOYAみたいに「それも自分を形成する1つのパーツ」だと言ってくれる人もいる。それに、僕みたいに迷ってる人間を見て、「じゃあ私も迷ってていいのかな」と思ってもらえたらいいなとも思います。

YUI

YUI

「ONE BY ONE」は終わりでもあり始まりのような感覚に

──これまで自分たちと向き合った曲を発表してきたODDLOREですが、アルバムのラストに収録されている「ONE BY ONE」は他者へのメッセージソングになっていると思いました。そういう曲を歌えるようになった自分たちに対して、どんなことを感じますか?

YUI 自分たちにベクトルが向いている曲を歌うことによって、おのおのが自分を知ることができたと思うんです。だから「自分のことを把握したうえでほかの人に対して言えること」が1つのテーマとなっている「ONE BY ONE」という曲に向き合えたんだと思います。

RION 「ONE BY ONE」はめっちゃ好きな曲ですね。レコーディングでは泣きそうになりました。今話に出ていたように、聴き手に対する歌詞に聞こえますが、同時に自分を安心させてあげられる歌詞にもなっていると思うんです。例えば、自分が歌っている「見せかけの仮面を一度脱ぎ捨てて 顔を合わせて笑ってみて」という歌詞は、僕のコンプレックスのことを指していると思ったのですごく刺さりました。ライブでは、「自分で納得できる歌が歌えれば聴いてくれる人にも刺さるんじゃないか」という気持ちで歌っています。

JOSH 僕も好きな曲ですね。例えば、デビュー曲の「Hazed Reality」と「Lucid Dream」、あと「Embers」とか「Coming Dawn」はマイナスの感情もプラスの感情もあってすごく忙しい。“醤油とんこつラーメン”みたいな感じ(笑)。それはそれですごく好きなんですけど、「ONE BY ONE」はすごく透き通った味の魚介系ラーメンみたいな。

JOSH

JOSH

YUI 魚介系ラーメンのほうが濃い場合もあるよ?

KOYA まあ、ラーメンは一旦置いといて(笑)。

JOSH とにかく(笑)、「ONE BY ONE」はスッと聴ける楽曲だと思います。そういう点ではYUIの曲「ORTUS」に近いイメージもあります。「ONE BY ONE」の前半でKOYAが歌っている「Your life isn't as bad as you think it is」という歌詞は「あなたの人生はあなたが思ってるほど悪いもんじゃないよ」という意味ですが、プラス思考の人はそのまま受け取ってもらえるだろうし、ネガティブ思考の人には落ち着いたトーンで問いかけられているような印象があるんじゃないかなと思います。この曲のMVは、すごくさわやかな気持ちになれる仕上がりになっていて、たとえ落ち込んでいるときでも気分を上げることができるような気がしました。

KOYA 僕は「ONE BY ONE」のMVを観たときに、約1年半で11曲を発表した怒涛の日々を思い出しました。映画のラストシーンを観ているような感覚に陥ったというか。終わりでもあり始まりのような感覚にもなって。これからもがんばっていくことは当たり前なんですが、1つの区切りとして昔の自分を置いておくことも必要なのかなと思いました。9月に初のワンマンをやりますが、そこからは今までとは違うODDLOREを見せられたらいいなと思っています。

KOYA

KOYA

「自分自身をもっとさらけ出していいんだよ」というメッセージを伝えたい

──その9月9日の東京・WWW Xでの初ワンマンはどんなライブにしたいですか?

RYUICHIRO 「ONE BY ONE」に「一歩ずつでもいいからさ 僕と歩み始めてみてよ」という歌詞がありますが、前に進むことでカッコいい背中を見せるアーティストさんが多い中で、僕たちは弱さを見せることで皆さんと一緒に一歩ずつ歩んでいけるグループだと思っています。今まで一緒に歩んで来てくれたファンの方たちやスタッフさん、家族、いろんな方たちに僕たちの成長を見せられる時間にしたいですね。あと、僕たちはよくも悪くもアルバムに入っている11曲しか持ち曲がないので、お客さんはある程度セットリストをわかったうえでライブを見ると思うんです。そこでどんな衝撃を与えられるかということを意識して準備していきたいです。最初で最後の初ワンマンなので、今の僕らにできることを注ぎ込みたいと思っています。

RION アルバムの世界を一番体験できる場にしたいと思ってます。どこまで深い没入感を与えられるか、がんばりたいですね。RYUちゃんが言った「いかに衝撃を与えるか」ということにも通じると思うんですが、演奏する曲がわかっている状況で、演出や自分たちの表現込みで、「自分自身をもっとさらけ出していいんだよ」というメッセージを伝えたい。「僕たちはそのままで最高なんだよ」と言ってもらえるようになりたいという気持ちを詰めて、全力で自分の感情を出すので、思いっ切り乗っかってほしいですね。暗い曲では心が痛くなるぐらいに沈んでほしいし、テンションが上がる曲では、「今日は最良の日だ」と思えるように周りの目を気にせずノッてほしい。曲に込められた感情と来てくれる人の感情をどこまでリンクさせられるかっていうことを意識しながら今準備をしています。

RION

RION

「ONE BY ONE」参加クリエイターコメント

弥之助(AFRO PARKER)
「Embers」作詞担当

弥之助(AFRO PARKER)

「Embers」の作詞ポイント、注目ポイント

曲名にある「Ember」とは残り火、燃えさしを表す言葉です。燻っている状態を写し取るというより、芯に熱を持った静かなエネルギーを込めたつもりです。
氷の中に囚われていた「Hazed Reality」との対比も併せてお楽しみください。

ODDLOREへのメッセージ

パーソナルな部分と真っ直ぐに向き合いながら表現をするというのは恐ろしくもあり、それだけに強く、尊いものと思います。違った個性を携えて共に進む皆さんに、僕自身力を頂いています。リリースおめでとうございます。

Pecori(ODD Foot Works)
「Coming Dawn」作詞担当

Pecori(ODD Foot Works)

「Coming Dawn」の作詞ポイント、注目ポイント

6人×16小節のマイクリレーなので、1人ひとりのパーソナリティを資料で頂いて、それぞれのコンセプトイメージも踏襲して投影していきました。
過去曲を参考に、それぞれに合いそうなフローで個性を出していく作業が提供ならではで、けっこう楽しかったです。

ODDLOREへのメッセージ

16小節分メンバー1人ひとりと向き合ったので、それなりに彼らのことを知れた気になっていますし、自分のグループも“ODD”なので、なんとなく他人事じゃないというか、ぜひ邁進して頂きたいと思います。

ODDLORE

ODDLORE

ODDLOREライブ情報

ODDLORE Original Live “ONE BY ONE” at WWW X

  • 2023年9月9日(土)東京都 WWW X

プロフィール

ODDLORE(オッドロア)

特撮やももいろクローバーZといったアーティストが所属するEVIL LINE RECORDSと、音楽原作キャラクターラッププロジェクト「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-」や超人的シェアハウスストーリー「カリスマ」を開発・運営する株式会社Dazedが立ち上げたボーイズグループプロジェクト。メンバーはそれぞれに異なるコンプレックスを抱えたKOYA、RION、RYUICHIRO、RIKITO、JOSH、YUIの6人で、リスナー1人ひとりの心に寄り添い、つながることができる新感覚のボーイズグループとして活動している。マネジメントは学芸大青春が所属する株式会社VOYZ ENTERTAINMENTが担当。2022年2月18日に1stシングル「Hazed Reality」、翌週25日に2ndシングル「Lucid Dream」を配信リリース。2023年8月にアルバム「ONE BY ONE」を発表した。