聴いてくれる人に何かを残せないと意味がない

──普段から皆さんいろんな話をしてると思うんですが、バンドを続けていくにあたって、MATSUMURAさんに訊きたいことってありますか？

MATSUMURA　それは僕のほうが訊きたいですよ（笑）。

ryo　そうですね……。今もバンドは楽しいですか？

MATSUMURA　楽しいということで言えば、長くやってると違う楽しさが出てくるよね、やっぱり。今回のoddのアルバムもそうだけど、最初の頃はその時期ならではの衝撃や鋭さがあると思うんですよ。「よし、やってやるぞ」っていう。そういう時期ってメンバーだけのコミュニティだったり、自分だけの世界を突き詰めていく作業なんですよね。それはそれで楽しいし大事なことなんだけど、そこで音源を作ったとしても、誰かに聴いてもらったり、共有できないと面白くないんだよね。

──そこで楽しさの質が変わってくる、と。

MATSUMURA　うん、俺らもそうだったんですよ。最初は客なんか気にしてないというか、ただ「俺らの曲を聴け！」っていう自意識過剰なところがあって。でも大人になってくると「なんのためにやるんだ？」ってことを考えるし、それはやっぱりお客さんと共有することじゃないかなって。

ryo　はい。

MATSUMURA　あとレコーディングに対する考え方も変わってくるよね。最初は自分たちの作品をカタチにすることが楽しくてしょうがなかったけど、今は「なんとかこれをクリアしてお客さんに届けなきゃ」っていう重さもあって。そうやってがんばったごほうびにツアーがあるって感じかな。

──oddはまさに“作品をカタチにするのが楽しい”っていう時期なのかも。

ryo　感動の連続ですよね、ホントに。及川さんに録ってもらったのもうれしかったし。スタジオの中で音が重なっていって、1曲できるたびに感動するんです。自分たちにしかできないことをやろうっていう気持ちでここまで来たけど、でも確かに作品を聴いてくれて、ライブを観てくれる人がいないと成り立たないし、そこはもっともっと考えていきたいですね。1500円とか2000円を払ってライブに来てくれる人に対して、何かを残せないと意味がないので。

──逆にMATSUMURAさんのほうから、oddに何か注文を付けるとしたら？

MATSUMURA　いや、そんなのはないですね。上から見てるわけじゃないし。「歌メロいいな、歌うめえな」ってホントに思うし。最近はちょっとライブを観てないんだけど……いつも遠いですよね、ライブの場所が。注文を付けるとしたら、もっと下北でやってくんねえかなってくらい（笑）。

ツアーは普通に旅行するよりも楽しいと思う

──では最後に、両バンドの今後の展開について聞かせてください。まずLAST ALLIANCEは年明けの1月25日にシングルコレクションアルバム（「Complete Single Collection 『c.s.c 20022011』」をリリースしますね。

MATSUMURA　「ベスト盤じゃねえぞ」って言ってるんですけど（笑）。今までにシングルを結構出してるんですけど、例えば4曲入ってたら（リード曲以外の）3曲はアルバムにも入らないことが多いし、ライブでもなかなかやれないんですよ。でも僕らとしては全部同じ熱量で作ってるし、このタイミングでシングルコレクションっていう形で出すのがベストかな、と。インディーズのときのシングルは流通の関係でなかなか手に入らなかったりするし。

ryo　LAST ALLIANCEはもうすぐ10年なんですね。

MATSUMURA　来年で10年。気付いたら、っていう感じだけどね。

tetsu　俺らは4年目だから……。

ryo　2.5倍だ。

──まだまだこれからですね。oddはどうですか？ 「qualia」の次の展開も楽しみですが。

ryo　実はもうビジョンが見えてるんですよ。横も縦も奥行きも広げていきたいし、自分の歌が生きるメロディを念頭において新しい曲を作っていきたいと思っていて。でも目の前に40本以上のツアーがあるから、まずはそれをしっかり回りたいですね。バンドとしてひと皮もふた皮も剥けないと意味がないし、それと並行して、次回作の曲作りもしていきたいです。

tetsu　1stアルバムをリリースしたあとのツアーだし「行けるところは全部行こう」って話してたんです。43カ所まわるんですけど、音楽をちゃんと届けたいし、僕らが音楽をやってるところを観てもらいたいですね。

──過去最長のツアーですよね。

masahiro　そうですね。みんなで作った音源を持っていろんな場所にいけるのがとにかく楽しみで。普通に旅行するよりも楽しいと思う……。

MATSUMURA　初々しいなあ（笑）。でも「行けるところは全部行きたい」っていうのはいいよね。「あそこは人が入らないから行っても意味ない」っていうドライな考え方もあるけど、40本以上回ればバンドは絶対に変わると思うし。初日と最終日では全然違うと思うよ。

ryo　そうですよね。

MATSUMURA　あと、友達もいっぱいできると思うし。そういう横のパイプがすごく大事なんだよね、特にパンク系は。音楽性が好きっていうより、人間性で好きになってつながりができたりするし。

ryo　今24歳なんですけど、辞めちゃうバンドも多い中で、最近やっと各地でがんばってるバンドとつながりができてきて。それもすごくうれしいんですよね。

──24歳でここまで高い音楽性を実現できてるのもすごいと思います。

ryo　MATSUMURAさんには「おじさんっぽい」って言われてますけど。

MATSUMURA　若さがないんだよね（笑）。よくわかんないけど無駄にダイエットとかするし。（アルバムの収録曲「24/7」の）PV観てビックリしたよ。

ryo　あのときからまた4kgくらい増えてますけどね。

MATSUMURA　撮影のとき痩せてたのは、それはモテたいからってこと？

ryo　いや、あの、将来結婚したときとかに結婚式で（PVを）流されるかもしれないじゃないですか……。

MATSUMURA　なるほど。でも、ありのままを映しとくのもいいと思うよ（笑）。